「人の心を殺した」ことを知ったことが三島を変えた

 実際、三島はかつての不倫相手の妻から訴えられていた。最近ふたたび携帯に連絡が来たが、会ってはいない。三島にとってその不倫は、あくまでも3年前に終わった過去の出来事にすぎなかった。「なぜいまごろ?」そんな本音がよぎったはずだ。

 第8話、三島に損害賠償を請求する内容証明を送ってきた、かつての不倫相手である岩井の妻・鞠子(佐藤めぐみ)が、陽一の喫茶店に三島を訪ねてきた。そこで、三島は初めて鞠子の苦しみをはっきりと感じることになる。

「この3年間、空を見てキレイだと思ったことはありますか? お腹が痛くなるくらい笑ったり、声を荒げるほど腹を立てたことは? セックスはしました? 私は一度もありません」と話した鞠子は、さらに続けた。

「私の心は、3年前に死にました」と。自分の行為がひとりの人の心を殺した。そのことを三島がはっきりと知った瞬間だった。

三島には真のイイ女になる可能性が。メインの4人はさらにドロドロに

 ようやく三島は、自分自身を客観的に見られるようになる。「私、どっかでずっと言い訳してたんです。不倫したのは男のせいとか。不倫のループから抜け出せないせいとか。だから幸せになれない自分がかわいそうとか思っちゃったりして」と。

 そして鞠子への損害賠償を全額払うことを決意。それで鞠子の心が生き返るわけではないが、三島にできる精いっぱいの誠意だ。さらにカフェを辞めることに。

 最後に陽一の淹(い)れた1杯のコーヒーを味わうと、すっきりとした顔でカフェを後にした。間違いを犯したかもしれないが、これから真のイイ女として進んでくれそうな後ろ姿を、三島は見せてくれた。

 しかしメインの2組4人のほうは、さらに大変な展開に。セックスレスに悩み、それぞれに、心も身体も愛されることを望んでいたはずのみちと誠だったが、互いに夫の陽一、妻の楓に誘われるも、望んでいたはずの行為を拒んでしまった。

 それは、みちと誠の心に、夫や妻ではない相手がいるから? そして陽一と楓は、今まで自分がしてきたことが返ってきたことで、初めて相手が感じてきたつらさを実感する。

 第9話の予告編では、誠がみちの手を取り走り出す姿が! すでに放送回は終盤だが、さらなる迷宮に入り込んでいる『あなたがしてくれなくても』。

 単なる不倫モノではなく、それぞれの“思い”と、そこから生まれる“すれ違い”や、だからこそ求めたい“つながり”を見つめている本作。見る側も語り合いたくなる思いがますます尽きない。

(文/望月ふみ、編集/本間美帆)