「2杯目用に」「寝る前にも」で生まれたミニ缶の“なるほど!”な利用法
このような経緯で開発されたミニ缶だったが、需要が思わぬ方向へと広がっていった。
「ハーフ&ハーフでのミニ缶需要ですね。ビールと黒ビールを1対1で混ぜて作るこの飲み方では、350mlのレギュラー缶2缶では多すぎる。250mlのミニ缶ならば、計500mlとロング缶と同じ量になるんです」(岡村さん)
500mlならば市販のグラスも豊富だ。なるほど、納得。そんなところに目をつけるとは、呑んべえたちは、実に目ざとい。
ちなみに現在、アサヒビールでは、主力商品の「スーパードライ」での135ml・250ml両サイズでのミニ缶を皮切りに、今年2月にはまろやかな味わいで人気爆発中の「アサヒ生ビール(通称マルエフ)」でも250ml缶を発売。「アサヒ生ビール黒生」も、期間限定で250ml缶を発売した。
「ミニ缶の売上容量構成比はビール全体のわずか0.6%程度」(岡村さん)と低いものの、発売後40年にもわたって愛され続けている。ミニ缶が買える場所は主にスーパーで、次にお酒のディスカウントストアやドラッグストアだという。
ビアカクテル用としても新境地を切り開きつつ、ミニ缶はメーカー想定外の需要も秘めた商品のようである。
アサヒビールでは、「アサヒ生ビール(通称マルエフ)」で「ワンサード」の楽しみ方も提案している。
「ワンサードとは2つの飲み物を2:1の割り合いで混ぜたもののこと。『アサヒ生ビール』を2と『アサヒ生ビール黒生』を1のワンサードなら、『アサヒ生ビール』のまろやかなのどごしを楽しみつつ、黒ビールらしい香ばしさもほのかに味わえます。黒ビール特有の風味を抑えた、より飲みやすいほうがお好きな方には、ハーフ&ハーフよりもおすすめですよ」(岡村さん)
おいしく飲むなら温度は4~6℃。グラスはよく洗って自然乾燥
ミニ缶はもちろん、ビールをおいしく飲みたいのなら、一にも二にも温度が肝心と岡村さん。「なんといってもよく冷やすこと。弊社としての推奨温度は夏場は4~6℃、冬場は6~8℃。そしてビールは鮮度が大事なので、製造の日付がなるべく新しいうちに飲んでいただくのが理想です」(岡村さん)
グラスを冷やす・冷やさないかは好みだが、よく洗って自然乾燥させることを心がけたい。
「グラスに目に見えない汚れやホコリがあると、気泡ができてしまうんですね。見た目もよくないし、ビールの味を損ねます。ですからグラスはふきんで拭かないほうがいい。細かな繊維などをつけないためです」(岡村さん)
クリーミーな泡を立てるには、ほどよい位置から衝撃を加えずに注ぐことが大切だとか。
「乱暴に入れすぎるとカニ泡のような粗いものになってしまいます。そもそも泡とは、冷えているほうが粒は小さくなるものなので、クリーミーな泡をお楽しみになりたいのなら、よく冷やしておくことです」(岡村さん)
「ビールは泡が命」のビール好きな人ならば、缶のフタを開けるときめ細かい泡が立ち上がる仕組みで大ヒット中の「スーパードライ生ジョッキ缶」がおすすめと岡村さん。
では、よくやりがちな、「しまった! ビール冷やすの忘れちゃった!」という緊急事態には?
「早く冷やしたいときには、缶ごと氷水に浸し、くるくると回してください。こうすると中のビールが対流して、効率的に冷やせます。また、キッチンペーパーを濡らして缶に巻き、冷蔵庫に入れてもいいでしょう。気化熱の原理で早く冷えます」(岡村さん)
ビールがいちばんおいしい季節はこれから! この10月には酒税法が改正され、ビールは350ml缶で6・65円ほどの値下がりの予定と、呑んべえたちが飲む理由に事欠かない。コロナ禍も一区切りしたことだし、おおいに飲んで、食べて、この夏はぜひとも盛り上がりましょう!
(取材・文/千羽ひとみ)
《PROFILE》
岡村知明(おかむら・ともあき)さん
アサヒビール株式会社 マーケティング本部 ビールマーケティング部担当副部長 ブランドマネージャー。量販店担当営業を経たのち、2008年よりビールのマーケティングを担当。リサーチ担当を務めたあと、「スタイルフリー」や「ザ・リッチ」のマーケティング担当を経て、「スーパードライ」のブランドマネージャーに。