筒美京平とのタッグは特に燃える! 本田美奈子の楽曲の売上では悔しい思いも

 その岡田有希子が大ファンだったという河合奈保子も、売野雅勇の作詞曲が多い女性歌手だ。河合奈保子では、自己最大ヒットでイメージチェンジのキッカケとなった「エスカレーション」が第25位なのは順当として、次に高順位なのが第60位の「唇のプライバシー」というのは、当時のセールス状況からするとやや意外かもしれない。ただし、Aメロ、Bメロ、サビ、大サビ前と、フックだらけのメロディーや 、《初めてだけど 初めてじゃない》が登場するサビをはじめ、コピーライター出身という売野が本領発揮したような歌詞は、リアルタイム世代よりも、今の若い世代に支持されそうな濃厚な作品だ。(ちなみに、海外比率は現状1割以下で、この高順位は、国内人気によるもの)。

「どちらも筒美京平先生が作曲だけれど、とにかく筒美先生と組んだときは、いつも以上に頑張っちゃうんだよ。だから『唇のプライバシー』がそんなに上位というのは、相当にうれしいなあ。ちなみに、『UNバランス』も『唇のプライバシー』も詞先(詞を先に作ってからそこに曲を乗せていく)。最後に書いたシングル『刹那の夏』は曲先、そのカップリングの『プールサイドが切れるまで』は詞先というふうに、毎回京平先生とは、詞先と曲先を1曲ずつ書くというやり方にしていたんだ」

 このように、アイドルがシフトチェンジする際に起用されることの多い売野だが、'85年にデビューした本田美奈子についてはデビューからシングル3作を手がけており、ここでは第47位にデビュー作「殺意のバカンス」(作曲:筒美京平)がランクインしている。

「これねぇ、『1986年のマリリン』(作詞:秋元康/作曲:筒美京平)が大ヒットする前年に書いてたでしょ。あんなに歌がうまくて、周りからも期待されていたのに、この曲はそこまで売れなかったのがつらくて。だから『マリリン』が出たときは、“そうか、こういうやり方があったのか……。”とショックだったんだ。それを先日、秋元康さんと対談をしたときに言ったら、“そのときは、マリリン・モンロー生誕100年だったので(ヒットは)たまたまですよ”って謙遜していたけどね。でもこうやってみると、当時、力みすぎて意外と売れなかった作品が、今になってこれだけ再生されているということがわかって、めちゃくちゃありがたいね!

「意外な曲が上位にランクインしていて感激だよ!」と満面の笑み 撮影/伊藤和幸

コモリタミノルを大絶賛、安室奈美恵には初期に書いた「お宝音源」があった!

 他にも、デビューから手がけていたSUPER MONKEY'Sのデビュー作「ミスターU.S.A.」が第32位と大健闘だ(オリジナルは未配信、'16年のベストに収録された安室奈美恵名義の再録音)。

『ミスター U.S.A.』は、いい歌詞が書けたと思ったね。なにしろ、曲先でコモリタミノルさんが作っていたものが抜群によくて、“この人は天才だな”と思ったくらい。最初のタイトルは『サーフサイドU.S.A.』だったんだけど、タイトルを変えてほしいと言われて、ちょっとマッチョなタイトルに変わって意外だったなあ(笑)。

 当時の安室ちゃんは14歳くらいで、レコーディングのスタジオの廊下で見かけたんだけど、バンビのように可愛くて大好きだったよ。安室ちゃんも、ユーロビートになった途端に大ブレイクしたけれど、その前に僕が中西圭三さんと組んでダンスナンバーを2曲作ったんだ。次のシングル用にとレコーディングまでしたのに、リリースする機会を失ったお宝音源があるはずだよ