理解ある竹雄は働く女子にとってお守りのような存在
酒の仕込みが終わり、宴会が開かれていた。席を抜け出した綾、追いかける竹雄。綾は「みんなが笑っている」と幸せを語る。同時に、こんな楽しい宴会は「きっとこれが(最後になる)」と言いかける。竹雄が「先のことはわかりませんろう」と止める。祖母が亡くなる日を見すえ、綾はこう言う。
「今度こそ、この身ひとつで立たんといかん。この身をさらして、みんなを守らんといかん。おばあちゃんがそうしてきてくれたように」
そこから竹雄は、“論”を進めた。自分は東京で万太郎との主従関係を解消して相棒になった。綾のことも、もう「主人(あるじ)」とは思わない。そう説明したうえで、あなたは植物が好きすぎる万太郎の姉で、酒が好きすぎる槙野綾だ、自分は槙野きょうだいを好きすぎる井上竹雄で、あなたのことが好きな男だ。そう語る。“身分差”は「好き」という気持ちのブレーキになる。それを解消することが双方に必要で、よく練られた作戦というか脚本で、「ほんじゃき、あなたを1人っきりにはせん」と決め台詞が続く。
綾は泣きそうになりながら、東京にはもっと可愛らしい人がいただろうにと強がってみせる。そこからの竹雄が最高だった。何を言うのだ、あなたはすごい女性なのだ、この峰屋を背負うと自分から決めた人だ。だから、まだ起こっていないことでめそめそするな。そう言った後の台詞がこれだ。
「心配せんでも、あなたは泣いても悔やんでも、空が晴れたら立ち上がるがじゃ。大奥様も万太郎も、あなたじゃき託せるがじゃ」
これは泣くでしょ。仕事の厳しさと楽しさを理解したから、祖母の偉大さをより実感した綾。その代わりを自分はできるのか。その不安がわかるからこそ、竹雄は「あなたは決断力と胆力がある優秀な人だ」と言ったのだ。不安なときに、自分の「強み」を整理してくれる。竹雄は、すべての働く女性に必要なお守りみたいな人だと思う。