歴史は物語に、物語は史実に、そしてマンガへと昇華されていく
――なんだか、前半でお話しいただいた『仮名手本忠臣蔵』と同じような展開ですね。
「現代まで語り継がれてきた『徐福伝説』は、その過程でたくさん変化を遂げてきたと思いますし、さらに小説や映画などで取り上げられることによって、さらにアップデートされていったのではないかなと。そういった脈々と受け継がれ、再生産されてきた「徐福伝説」が『地獄楽』のテーマとして取り込まれているのだと思います」
――私たちが史実と思っていたものの多くは、実は歴史を物語化したものだった。そしてその物語は幾度となく再生産されてきた……。歴史モノを見ているとつい史実との違いを指摘しがちですが、そもそも私たちが本当だと思っている史実ってなんなのだろうと考えさせられますね。
「日本は古代から現代に至るまで、歴史を物語として楽しんでしまう創作大国だった……これこそが日本の面白さだと思うんです。史実か創作物なのか、その境界線は曖昧(あいまい)だけれど、互いに影響し合いながら昇華されたものの最高峰がマンガだと思うんです。だから日本のマンガって世界に誇れるくらいおもしろいし、『地獄楽』のような作品が生まれるのではないかなと」
(取材・文/ちゃんめい、編集/FM中西)
【PROFILE】
セバスチャン高木 1970年生まれ。テレビの制作会社を経て小学館入社。「日本文化の入り口マガジン」をキャッチフレーズにした雑誌『和樂』と「和樂web」で編集長を務める。著者に『日本文化 POP&ROCK』(笠間書院)