「頑張った先の景色が見たい」

──ここからは舞台以外のこともお聞きしたいと思います。中村さんは高校から大学まで、チアリーディング部に所属されていらっしゃいましたが、今でも大切にされている「チア・スピリット」があれば教えてください。

 当時の先生によく言われたのは「軸をぶらすな」ということでした。チアリーディングは人の上に人が乗るので、下の人がグラグラすると上にいる人が落ちてしまうし、それに引きずられると、全部がグダグダになってしまうんです。それは自分が芸能活動を志した時にも通じるものがあって、「自分がやると決めたからには、軸をぶらさずに進もう」と思いました。でも、その決意もいろいろなことで揺れ動くことがあるので、いかに自分をぶらさずにいられるかと戦うのが大変なこともありました。

──仕事が大変だったり忙しくなったりすると、自分の中の決意が揺らいだり、当時の気持ちを忘れそうになる時もありますよね。

 チアリーディングも、あんなに練習が大変できつかったのに、辞めたいと思ったことはなかったです。仕事でも、過密なスケジュールでほとんどお休みがないような時でも、充実していて楽しいなと感じます。適度に休みがあれば、心と身体のバランスは保てる気がします。

──頑張れる原動力になっているものは何でしょう?

 チアリーディングは、大体3か月練習をして大会の本番は2分半の演技なんですけど、頑張った先の景色を見るのが本当に楽しかったんですよ。ドラマも撮影期間は大体3か月、今回の舞台は1か月くらいしか準備期間はないですけど、そこを乗り越えて頑張った先の景色はきっとまた違うと思うし、それが見たいです。

中村アンさん 撮影/樋口涼

──最初は不安もあったそうですが、そこを「エイ!」と一歩踏み出せたのは、どんな思いからだったのでしょうか。

 普段は私も新しいことや難しいことに飛び込むときにすごく悩んだり、逃げそうになったりもします。当初は今回の舞台出演を躊躇していましたが、脚本・演出の粟島(瑞丸)さんとお会いし、思いの丈をお話しできたことで、不安な気持ちが薄らぎ、せっかくいただいたチャンスなので、「挑戦してみよう!」と思いました。

 人生に1度しかない初舞台をこのタイミングでお声がけいただけたことはすごく光栄でした。舞台にはいつか出演したいと思っていたのですが、自分の心の準備がまだできていなかったので、「タイミングって急に来るんだな」ということを実感しました。でも「今この作品をやらなかったらきっと後悔する」と思い、思い切って飛び込んで、成長できたらいいなと思います。

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 後編では、落ち込んだときの中村さんの心と身体の整え方についてや、実は〇〇女子だった?という「意外なイチメン」など、「フムフム」なことから「へ~!」と思うことまで、たくさんお話をお聞きします!

(取材・文/根津香菜子、編集/福アニー、撮影/樋口涼、ヘアメイク/渡嘉敷愛子、スタイリスト/小原優子)

【Profile】
●中村アン(なかむら・あん)
1987年9月17日生まれ、東京都出身。主な出演作は、ドラマ『グランメゾン東京』(19年)、『DCU』(22年)、『NICE FLIGHT!』(22年)や映画『名も無き世界のエンドロール』(21年)、『マスカレードナイト』(21年)など多くの話題作に出演し、22年の『DCU~手錠を持ったダイバー~』では第4回アジアコンテンツアワードの助演女優賞にノミネートされるなど、その演技力が日本国外からも評価されている。

【Information】
●演劇集団Z-Lion『笑ってもいい家』
脚本・演出:粟島瑞丸
出演:中村アン、中山麻聖、染谷俊之、森めぐみ(演劇集団キャラメルボックス)、中村哲人、斉藤誠人(ロビンフット)、下尾みう(AKB48)、飯塚理恵(劇団TEAM-ODAC)、久保田悠来、高橋光臣
公演日:2023年7月1日(土)から9日(日)まで
会場:六本木俳優座劇場

公式HP:https://napposunited.com/warattemoiiie/