企業ごとのCMから見えてくる、各社の戦略

──インターネットがユーザーの活動範囲になる中で、テレビ広告の効果は昔に比べてどうなっているのでしょう?

かつて全体の7割を占めていたテレビ広告費をネット広告費が追い抜き、テレビCMを流すだけで安泰という時代ではないですね。ただ、検索せずともユーザーに情報を届けることができるという意味では、認知を上げる最初の起爆剤としての力はかなり大きい。テレビですべて完結させるのではなく、あくまで認知媒体として使うのであれば、まだまだ優位性は高いです」

──記事前半で聞いていたローカルCMの魅力である“ツッコミどころが多いこと”は、かなり理にかなった手法と言えますね。

「そのとおりです。ローカルCMはインパクトも強く、社長や従業員が出演したりと会社の色や真剣さも見えますよね」

──前編で、ローカルに比べて全国CMの場合、審査基準も厳しく広報担当の方も慎重になるという話がありました。ただ、日清のCM(日清焼そばU.F.O.・カップヌードルなど)などを見るとかなりぶっ飛んだCMもありますが、それは会社の自由度が高いことが理由でしょうか?

CMを出すたびに話題になる日清焼そばU.F.O. のCM『そろ谷U.F.O.食べたやろ 篇』※ 日清食品グループ公式チャンネルより

「それもありますが、日清さんに限らず商材ごとに押し出す部分が違うので、そこにはしっかりとした戦略があります。

 例えばミツカン・味ぽんのCMは味ぽんそのものではなく、お鍋などの料理がおいしく見えるCMを流しています。ぽん酢・めんつゆ・鍋つゆの市場シェアNo.1のミツカンであれば、商材のことを説明するよりも“今日はお鍋が食べたいな”と思ってもらうほうが、結果的に購買につながるんです。“商品ではなくベネフィット(※)を届ける”CMを愚直に続けているのが、業界リーダーとしてのミツカンの戦略です」

※ベネフィット:商品から得られる恩恵やプラスの効果のこと