里見浩太朗と共演した時代劇が転機に

──そんなアイドル時代を経て、やがて俳優活動が多くなっていきましたよね。

 このままアイドルってどうなんだろう? と考え始めたのが21歳のころです。そこで、俳優に専念しようと個人事務所へと移籍。アイドルの実績があったのですぐに大きな役をいただいたのですが、それが苦労の始まりでした。だってお芝居の基礎ができてないんですから。セリフをしっかり覚えないといけないし、集団で過ごす時間は長いし、1人で現場に行かないといけないし(苦笑)。一つひとつ勉強しながら役をこなしていくのが精いっぱいでした。

 転機は、里見浩太朗さんが主演を務める大晦日の年末時代劇スペシャルに出演したことです。あまりにも時代劇のお芝居ができなくて、監督に怒られて怒られて……。あるとき、次のシーンでうまくできなかったら東京へ帰すと言われたんですね。赤穂浪士四十七士・矢頭右衛門七の役で、母親の死を直感して山道を走りながら母のもとへ向かう、泣かせる場面。僕は東京へ帰されちゃいけないと泣きそうな思いで必死に走ったんです。それが功を奏したのでしょうか。監督から「すごくよかった、泣けたよ」と褒められて難を逃れました。

 その翌年に、白虎隊をモチーフにした時代劇の隊長役をいただき、やっと役者として腰を据(す)えて生きようという決心が生まれました。

新田純一さん 撮影/有馬貴子