『結婚できない男』第1シリーズ
桑野がいつまでも独身であれと願う
現在、第2シリーズまで放送されている『結婚できない男』(関西テレビ、フジテレビ系列・2006年)。建築家の桑野信介(阿部寛)は金も仕事もあるはずなのに、偏屈ぶりが際立って、未婚のまま40代を迎えた。そんな彼の生活ぶりや、人間関係をコミカルに描くドラマだ。
何度見ても面白い。ひたすら単独行動を楽しみ、なんなら流しそうめんも一人で開催する。女性の前ではつい、つい、余分な一言を言って関係性をこじらせる。そんな桑野を日本屈指の俳優となった、阿部ちゃんが大まじめに演じているのだから、笑いはさらに増量する。
……はて? 2006年の第1シリーズ放送当時はどこか他人事のように見ていた本作。2019年の第2シリーズ『まだ結婚できない男』のときは、見事に私も40代を迎えて「結婚できない女」のレッテルを貼られるようになった。もちろん、デリケートなご時世なので本人へ直接「いい人いないの?」と聞かれることはだいぶ減った。家族を含めた関係各所、もうあきらめの境地へ入ったということだろう。と、同時に第2シリーズの桑野に対する共感度が上がっている。これは成長なのか、窮地なのか。そんなことを考えるのも面倒なので、とりあえずサブスクで『結婚できない男』第1シリーズを見返して笑おうと思う。さ、みなさま、ご一緒に。
FOD、PrimeVideo、Huluにて配信中。
(文/小林久乃)
《PROFILE》
小林久乃(こばやし・ひさの)
エッセイ、コラム、企画、編集、ライター、プロモーション業など。出版社勤務後に独立、現在は数多くのインターネットサイトや男性誌などでコラム連載しながら、単行本、書籍を数多く制作。自他ともに認める鋭く、常に斜め30度から見つめる観察力で、狙った獲物は逃がさず仕事につなげてきた。30代の怒涛の婚活模様を綴った『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ)を上梓後、『45センチの距離感』(WAVE出版)、『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社)と著作増量中。静岡県浜松市出身