「時のK-City」ではメインボーカルに抜てき「最近フミヤさんも歌っているかも」

 また第38位に、'86年のアルバム『FLOWER』に収録の「時のK-City」がランクイン。本作は、作詞:藤井郁弥×作曲:武内享の、故郷を思った泣かせるバラードだが、メインボーカルを作者ではない鶴久が担当してるのが珍しい。

フミヤさんから、“俺が歌うと、ちょっと計算高く聞こえるから、お前が歌うのがちょうどいい”って言われて自分が歌った曲が何曲かあるんですよ。素朴さを出すために僕が選ばれたのかもしれませんね。この曲は、享くんが作った享くんらしからぬメロディー(笑)も、久留米のことを歌ったフミヤさんの歌詞も素晴らしいです。

 ちなみに第28位の『24時間のキッス』(アルバム『もっと!チェッカーズ』収録)のほうは、僕がライブで歌って盛り上がる曲をと、売野先生と芹澤先生が作ってくださったんです。最初のアルバムで僕がソロで歌った『HE ME TWO(禁じられた二人)』はあまりに意味深だったから、次は素直に歌える曲を作ろうとなったんじゃないかと」

 他にも、第47位の「Gipsy Dance」は、シングル候補では? と思えるほどスリリングなナンバー。実際にアルバム『SCREW』から、鶴久が作曲した「Gipsy Dance」「Rolling my Stone」「Jim&Janeの伝説」が候補になっていたようだ(結果的に鶴久も推していた「Jim&Janeの伝説」がシングルに)。

 それにしても、シングル売り上げは最大ヒットの「ジュリアに傷心」(約70万枚)と最小ヒットの「今夜の涙は最高」)約14万枚)が5倍の開き程度だが、このストリーミングサービスでの同じ最上位の「ジュリア~」と最下位の「今夜の~」を比べると、両者の開きは100倍以上になるという事実に驚かされる。

「シングルだからって全部聴いてもらえるわけじゃないんですね、サブスクは……。でも、シングルで自分の曲が選ばれたときは、いつも売れるかどうか怖かったですね。だって、チェッカーズにはそれまで大ヒット曲もいっぱいあるわけじゃないですか。それをずっと聴いてきたファンの方々の期待を超える必要があるし、売上を落とすということは、それ以降、あまり聴かれなくなっちゃうという可能性があるから……。だから、長く歌われる曲になるのかどうかって大事ですよね

 その一方で、Spotifyで10万回以上も再生されているアルバム曲が20曲を超えているのは、とても誇らしいことだろう。これについて鶴久は、

こうやってアルバムの曲まで聴いてくれているのは、フミヤさんがシングルだけじゃなくアルバムの曲も自分のライブで歌い継いでくれているからだと思いますね。ときどきファンの方からも、Twitterで連絡が来ますから。……ということは、フミヤさん本人が歌っていて気持ちいい曲になっているかどうかが大事で、それがファンの方たちに伝わっているんでしょうね! だから、『時のK-City』が、アルバム曲なのにこれだけ伸びているということは、フミヤさんも歌っているんじゃないかな? MCで “マサハルに歌わせないほうがよかった”とか言っていたら面白いですね(笑)

 鶴久が今でも各メンバーのことをリスペクトしていることが会話の節々から伝わってくるのが、なんだか微笑ましい。各メンバーからは“クロベエ(徳永善也)がいないので('04年に死去)再結成はない”とコメントが出されているが、楽曲自体は、こうしてメンバーが互いに切磋琢磨して生んできたという絆の証(あかし)でもあり、メンバー間のリスペクトがある限り、こちらもずっと楽しんで聴き続けることができるからだ。

 最終回となる次回は、今年解禁となった鶴久政治のソロ楽曲や、近年STU48に提供してヒット作となった「花は誰のもの?」について語ってもらう。

(取材・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)


【PROFILE】
鶴久政治(つるく・まさはる) ◎1964年3月31日、福岡県生まれ。'83年9月21日、 チェッカーズ「ギザギザハートの子守唄」でデビュー。サイドボーカル・メロディメーカーとして「夜明けのブレス」「Room」「ミセス マーメイド」をはじめとする数々のヒット曲を手がける。'92年12月31日、NHK紅白歌合戦への出演を最後にチェッカーズ解散。解散後もライブ、CD制作、作詞、作曲、プロデュース、役者等、幅広く活動。'22年、STU48に楽曲提供した「花は誰のもの?」は売上44万枚を超えるヒットを記録。'23年4月、ソロ名義でリリースした作品及びデュエット企画で発表した全81曲のサブスクでの配信を開始した。

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