「植物大好き」だけを脱して立派な人格者へ

 藤丸は「そっか、これが俺の特性なのか」とホッとしたように言っていた。「競争、上等!」の東大植物学教室についていけず離れようとしていたところを、「あなたはあなたのままで、あなたに合った道を探せばいい」と言ってもらったのだ。万太郎、大人の階段をすっごい勢いでのぼっている。『らんまん』もあと2か月余り、日本を代表する植物学者になってもらわなければならないわけで、「植物大好き」だけの万太郎は脱して、人格識見ともに立派な万太郎になってもらわねばという意図は大いにわかる

 わかりつつ、少し驚いたのが万太郎の発想。すごく昨今のマーケティング的だった。休学しながらどうするかというと、「人のおらんところ」を探す。つまり「ブルーオーシャンのすすめ」なのだ。同席していた長屋のゆう(山谷花純)が途中で、「それって、最初の人になれってこと?」と質問していた。思い出したのが、「ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」だった。万太郎だけに「世界に一つだけの花」なのか?

『らんまん』で長屋の住人・宇佐美ゆうを演じる山谷花純 撮影/北村史成

 名曲に楯突くつもりはないのだが、ナンバーワンになるのと同じくらいオンリーワンになるのも大変だと思う。藤丸は休学して万太郎の植物採集に同行することにし、田邊に「ただ槙野万太郎を観察しようと思う」と報告する。田邊は「驚くほどくだらん」と言っていた。「オンリーワン」を変なプレッシャーにすることなく、藤丸にはくだらない道をゆっくり歩いてほしい。