第59位の「ホワイト・ガール」は当時の心情とリンクした「心から大好きな曲」 

さらに、ランキング表全体から、酒井自身が気になる曲について語ってもらった。

(オリコン最高4位の)『HAPPY AGAIN』がSpotifyでは35位なのに、(オリコン最高34位の)『渚のピテカントロプス』がほぼ同レベルの37位に入ってるのはうれしいですね。この曲は、“ピーピー”とか“イ・デ・デ”とか言っていますが、全体的に面白い音になっていて、オシャレに遊ばせていただいた感じです。

 あと、第59位の『ホワイト・ガール』は、エンキョーさんのセルフカバー・バージョン(アルバム『ホッチキス』収録)もぜひ聴いていただきたいです。よくお話ししていることなんですが、初めてエンキョーさんにこの曲の歌詞をいただいたときに、“のりピーちゃんのことを考えて書いた”とおっしゃってくれたんです。それで、最初のフレーズを読んでみたら、すぐに涙があふれてきて……。当時の私は、ちょうど頑張りすぎちゃっていたんでしょうね。《君はいつも元気でいいねとよく言われる》から始まる歌詞に、“そうじゃないときもあるのに……”って、私の気持ちを代弁してくれたことがすごくうれしかったですね。心から大好きな曲です!!

大きな花の帽子にまぶしい笑顔が印象的な「ホワイト・ガール」のジャケット写真
「渚のピテカントロプス」のジャケット写真はなんだか幻想的

アルバム『Premium Best』の選曲は、酒井法子の“マニアック精神”が炸裂!

 こうして上位の楽曲のヒット理由を的確に語れる酒井だが、自身の30周年ベスト『NORIKO BOX』や、今年発売された『Premium Best』に本人が選んで収録されたシングル以外の楽曲が、とてもユニークになっている。なにしろ、ライブのド定番だった「DON'T STOP GENKI」と「アクティブ・ハート」、そして機会あるたびに本人が名曲と語る「ホワイト・ガール」以外の大半の楽曲は、総再生回数が2000回を下回るほど(これは人気曲の多い酒井法子の全楽曲の中で、最下位から数えたほうが早いほどマイナー)。相当な隠れ名曲ばかりを選んでいるのだ。

「アハハハ(大爆笑)!  私ってたぶんマニアックで、そういうのが好きな人には“わかるー!”って共感してもらえる一方で、そうじゃない人は“えっ、何が(いいの)?”とスルーされてしまう曲が多いのかも。

 この『終わらない物語を』(アルバム『10 SONGS』収録、'23年7月上旬時点で約1200回再生)も、エンキョーさんの曲で本当に大好き。破矢ジンタさんに書いていただいた『やあね II』は、名曲ぞろいのアルバム『マジカル・モンタージュ・カムパニー』の収録で、すべて各アーティストさんの個性が詰まった濃厚な作品なので、私は大好物なんです!」

 そんな酒井の熱弁を聞いていた現在の担当ディレクターから補足が。「『Premium Best』は当初、CD2枚組で考えていたのですが、新曲も含め、より攻めた楽曲も追加したCD3枚組にしたんです。酒井法子自身が考えたプレイリストのように楽しんでいただけたら」とのことだ。

ぜひ『Premium Best』を通して酒井法子の趣味嗜好を存分に味わってほしい 撮影/矢島泰輔

 実際、『Premium Best』のCDに収録された作品はすべて各種ストリーミングサービスで聴くことができるので、酒井お気に入りの“マニアックな楽曲”もまとめて聴いてもらえる絶好の機会と言えるだろう。

光の当たる曲は放っておいてもひとり歩きしてくれて、それはそれは頼もしい限りなのです。その子たちに加えて、多くのクリエイターが私のために一生懸命作ってくださった、つい埋もれがちな楽曲も通して聴いてもらえたらうれしいです。マニアックな曲は、レコーディングのときから楽しくて仕方ないんですよ! パッケージのほうには、私も覚えていないほどのお宝映像があるのと、ギリシャで撮影したボーナス映像もあり、これもとてもきれいなので、ぜひ観てください!」

 限定盤には、雑誌や写真集に掲載された懐かしい写真が満載の116Pフォトブックも封入されている。

「亡くなられた武藤義カメラマンの奥様が、“どうぞ使ってください”と言ってくださいまして、武藤さんのお宝写真から選びました。ファンの方々にとっても、“なんとなく見たことはあるけれど、このカメラアングルは初めて”というカットが多いと思います」

お宝写真が満載のフォトブックも必見! 撮影/矢島泰輔