そして、'88年の「秋からも、そばにいて」のほうは、ヨーロッパの宮殿を想起させるような荘厳なアレンジで、さらに“ナンノワールド”が確立したと言えよう。

「ゴージャスなイントロを聴いて、そのイメージで衣装の発注をかけたんです。でも、その後できあがった歌詞を見たら、高原のコテージを舞台とした学生のラブソングだったので、スケール感が少し違っていました(笑)。とてもいい歌詞なんだけど、豪華なドレスと合っていなくてちょっと気恥ずかしかったかも、と後から思いましたね」

衣装や振付には中森明菜の影響大、『パンドラの恋人』は著名人ファンも多い

 南野の衣装へのこだわりは、ある先輩アーティストの影響が大きいと語る。

「デビュー前、(松田)聖子さんと(中森)明菜さんが2大アイドルだった時代に、私は明菜さん派で、衣装や振りを新曲ごとにチェックしていたんです。来生たかおさん(作曲)のデビュー曲『スローモーション』から大好きでしたし、振りは特に『十戒(1984)』に魅せられていました。自分がデビューしてからも歌番組でご一緒できるたびに、こだわりの衣装や振付を、見ていないふりをしながらコッソリ凝視していて(笑)。だから私が楽曲ごとに衣装を考えるようになったのは、間違いなく明菜さんの影響ですね。それと、当時の楽屋はアコーディオンカーテンだけで仕切られていたので、隣から漏れ聞こえてくる声から学んだことも多いですよ(笑)」

 続くSpotify第9位は「パンドラの恋人」。中森明菜ファンならお気づきだろうが、

「『パンドラの恋人』の振付は、明菜さんをよく担当されていた方にお願いしたので、なんとなく雰囲気が似ているのかもしれませんね。これはノンタイアップですが、藤井隆さんとか、“パンドラ推し”のアイドルファンの方も多いんですよ。『接近』と『パンドラの恋人』が作られたのは、セカンド・シングルくらいの時期。『パンドラ~』は、もともと冬の歌だったのを発売のタイミングを考えて、夏向けに変えたんです」

南野陽子と中森明菜のことが大好きな編集スタッフは、衣装と『パンドラの恋人』のエピソードに感激! 撮影/矢島泰輔

本田美奈子.を「本当にリスペクト」、転入試験では“まさかの行動”にビックリ

 そして、仲のよかったアイドルを尋ねてみると、本田美奈子.とのエピソードについて語ってくれた。

「当時はあまりに時間がなかったのと、自分の一匹狼的な性質もあり、例えば、おニャン子クラブは同期だけど他校の人、という感じで、その輪に入れなかったですね。美奈子は仲がよかったのですが、仕事で一緒になるのはグリコのコマーシャルくらいだったような……。彼女とは、同じ高校に一緒のタイミングで転入しました。転入試験のときに美奈子が隣の席だったのですが、ふと横を見ると、彼女は机に突っ伏せて寝ていたの​! 試験の後も、“今日で会えるの最後だと思うけど、バイバーイ!”って言われて別れたのに、3学期が始まったら同じクラスにいました。そのときからチャーミングで、すぐに仲良くなれた!

 同じ時期に転校したことで、いろいろと話しやすかったし、性格的にもウマが合ったり、自分なりの正義感を持っている部分が似ていたりしましたね。彼女は決して“誰かに何か言われるから○○するのをやめよう”というのではなく、自分が思ったら信念を貫き通すタイプで、本当にリスペクトしてきました。“水着なんて恥ずかしい~”なんて言いながらおへそ出して歌っていて、でも、そこで腰をくねらせてプロフェッショナルに徹しているし、“美奈子よくわかんな~い”なんて言っていても、歌になるとパワフルなパフォーマンスを披露するんです。だから、テレビから彼女の歌が聴こえてくるたびに、手を止めてじっと見ていましたね」

本田美奈子.との、互いを認め合い、尊敬し合える関係性がとても素敵 撮影/矢島泰輔