デビュー当時の思い出は? カップリングは圧倒的に『僕らのゆくえ』推し!

 Spotify第13位には、デビュー曲「恥ずかしすぎて」がランクイン。デビュー曲は、各種プレイリストでも1曲目に設定されることが多いのか、どのアイドルもシングル売り上げよりも高い順位になることが多いが、南野の場合もこれに同じ。彼女の作品の中では数少ない作曲:都倉俊一、編曲:大村雅朗という顔ぶれだが、作風のほうも'70年代風の歌謡曲に派手なシンセサイザー音が多い演奏で、その後の“ナンノワールド”からすると、異色のデビュー作となっている。

「『恥ずかしすぎて』は、当時の私には歌いこなせていない感じもしますね……。これは当時の事務所の立ち上げに都倉先生が関わっておられて、その大勢の候補生の写真の中から、先生が私に曲を書いてみたい、と関心を持ってくださったんです。私としては、“『スター誕生!』の審査員の方に書いていただけるんだ!”って感激しましたし、2年前に再会できたときも、本当にうれしかったです

『週刊少年マガジン』では、巻頭36ぺージの特集を組むほどの力の入れようだった南野のデビューを飾った本作は、オリコン最高57位となった。本人的にはどういう思いだったのだろうか。

「(100位内に入ったことで)“やった、やった! 活字に載った!”って、私は喜んでいたのですが、周りはどよーんとしていましたね(笑)。でも、ちょうどデビューの翌日に“聖輝(松田聖子・神田正輝)”の結婚式。ソニーのどの部署の方もそちらに駆り出されていたくらい忙しくて、準備期間も少なくバタバタのデビューでしたが、そんな中では健闘したほうだと思います」

 '85年はソロアイドルだけでも、斉藤由貴、本田美奈子、芳本美代子、志村香、松本典子がデビュー曲からオリコンTOP30入りを果たし、南野の翌月にはすでにドラマで大人気だった中山美穂、翌々月にガンダム主題歌で有名な森口博子もTOP20入り。女性アイドルが次々とブレイクしかけていたので、雑誌先行型の南野は、やや不利だったのかもしれない。

 そんな中でも、ドラマ『スケバン刑事II』で注目される前から、いち早く南野を激推ししていたのが当時PL学園の高校生だった清原和博で、多くのメディアでの一問一答で“好きなアイドル=南野陽子”と答えていた。筆者の周囲でも、清原の発言で、“南野陽子って、誰?”と関心を持つ人が多かった。

「当時、高校野球といえば(桑田真澄・清原和博の)“KKコンビ”でしたから、さまざまなスポーツ新聞社の方から問い合わせがありました。私は、高校野球がよくわからずお会いしませんでしたが、デビューからだいぶたってから、お礼を言う機会がありましたね。最初は、マガジン出身ということで男の子のファンが多かったのですが、『話しかけたかった』くらいから、共感してくれる女の子のファンが増えたかもしれません。そのあたりからコンサート会場でも、女の子の顔が見えるとうれしくって、男の子そっちのけで見ていましたから(笑)」

 ちなみに南野は、シングルのカップリング曲を網羅した『ゴールデン☆アイドル』が2023年9月現在、サブスクでは配信されていないため、オリジナル・アルバムや『ゴールデン☆アイドル』以外の企画盤に未収録のカップリング曲は、サブスクでは聴けない状態となっている。カップリングの中でいちばん好きな曲を尋ねてみると、

圧倒的に『僕らのゆくえ』(63位)ですね! 『フィルムの向こう側』のB面です。『フィルム~』は、ASKAさんが私の本を読んで、インタビューもしたうえで書いてくださった曲で、これはこれでとても好きなんです。だから、『僕らのゆくえ』は次のシングルまでとっておいてよ! とも思ったのですが、カップリングを準備していないというので、ここに収録されました。私の中では、当時いちばん歌いたいテーマをモチーフに作っていただいたのが『僕らのゆくえ』だったので、A面にしたかったですね。作詞をしてくださった平出よしかつさんは、『思いのままに』(第29位)も含め、素敵な曲が多いんです。私は、シングルもアルバムもカップリングも分け隔てなく大切に歌ってきたので、いつかみなさんに聴いていただける機会があればいいなと思います

「どの曲も本当に大切。今でも聴いていただけるのがうれしい」と笑顔で語る南野。今後も彼女の楽曲は多くの人々に愛されていくことだろう 撮影/矢島泰輔

 この'89年ごろの南野は、そっと若い世代の背中を押すようなさりげないメッセージソングが気に入っていたようで、そのあたりのこだわりも、バブルを受けて強いサウンドやキーワードが踊り出ていた時代とは一線を画しているだからこそ今聴くと、当時以上に心に浸透するような楽曲が多いかもしれない。

 最終回となる次回は、アルバム収録曲や近年の活動についてもたっぷりと語ってもらう予定だ。

(取材・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)


【PROFILE】
南野陽子(みなみの・ようこ) ◎1967年生まれ、兵庫県出身。愛称は「ナンノ」。1985年、CBS ソニーより「恥ずかしすぎて」で誕生日デビューし、ドラマ『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』でブレイク。“アイドル四天王”のひとりとして圧倒的な人気を誇る。現在は歌手活動のほか俳優業にも精を出し、2023年には映画『ネメシス 黄金螺旋の謎』や舞台『泣いたらあかん』などに出演。他にも2022年に京都府舞鶴市でお米作りを始め、2023年には日本カンボジア友好関係70周年親善大使に任命されるなど、多方面で活躍の場を広げている。

南野陽子のSpotifyアーティストページも要チェック! ※クリックすると画像と同じページにジャンプします

〜最新シングル「明日への虹」Spotifyほか各種音楽サービスで配信中〜
2023年から日本カンボジア友好関係70周年親善大使を務める南野陽子が、カンボジアへの思いを込めて歌った1曲!

〜CD『南野陽子SUPER HIT』主要高速道路サービスエリアにて販売中〜
ヒットシングル17曲を収録! 定価2096円(税込)

〜レギュラー番組『そこに山があるから』放送中〜
毎週水曜22:30~22:54、BS朝日にて

〜新番組『仮面ライダーガッチャード』一ノ瀬珠美役で出演〜
9月3日スタート! 毎週日曜9:00〜9:30、テレビ朝日系にて
 

◎南野陽子 公式HP→https://www.southern-field.net/
◎南野陽子 公式Facebook→https://www.facebook.com/nannoclub.three/?locale=ja_JP
◎南野陽子 公式Instagram→https://www.instagram.com/yokominamino__/