人生は、偶然の積み重ね

 2人の恩人のおかげで、2回大きくブレイクしたデビュー本。

 今度は、それを読んでくださった、かんき出版社の編集者さんから本の執筆のオファーがあり、デビュー本から1年後に、2冊目の本『大切なことに気づかせてくれる33の物語と90の名言』(かんき出版・のちに文庫版をPHP研究所から出版)を出すことができました。

 この2冊目のヒットが、それ以降の本の執筆依頼への引き金になったのです。

 別の出版社さんからも次々とオファーが入り、翌年には会社勤めをしながら5冊を出版。その後も、毎年執筆依頼が入り続け、デビュー本から5年後の2017年夏、会社を辞めて執筆活動に専念することになり、現在に至ります。

 こうして振り返ると、私がいま50万部超の著者になれたのは、奇跡のような出来事の連鎖によるものでした。

〇仕事に満足していた会社が解散し、転職して仕事が変わったのをきっかけに、フリーランスを意識するようになった。

〇本の企画を、出版社(アスコム社)の編集者さんが気に入ってくれた。

〇デビュー本が、発売日にテレビで紹介され、辛口のテリー伊藤さんが絶賛してくれた。

〇大谷翔平選手が私のデビュー本を日ハムのキャンプに持参してくれて、偶然にそれを知った新聞記者が大きな記事にしてくれた。

〇デビュー本を偶然に読んでくれた、かんき出版の編集者さんから2冊目のオファーがあった。

 もし、このうちのどれかひとつでも欠けていたら、いまの自分はなかったはずです。

 改めて思うのは、すべての始まりは、長年勤めた会社が解散してしまったことでした。それが、まったく別の人生へのきっかけになり、2人の大恩人との奇跡的な関わりによって、うまく波に乗ることができたのです。

 どこかの本で、こんな言葉を読んだことがあります。

「何か新しいことを始めるには、古い何かを捨てなければならない」

 私の場合は、自ら捨てたわけではありません。しかし、仕事に満足していた会社が解散し「なくなった」ことで、「作家になる」という「新しいこと」につながったのです。

 長い人生の間には、例えば真剣に打ち込んできた仕事とか、人生で「大切にしていた何か」を突然に失って、心にぽっかりと穴が開いてしまうことがあると思います。

 しかし、がっかりすることはありません。それは、次の「新しい何か」が入る余裕が生まれたということです。

 私はこれまでの経験から、“人生は偶然の積み重ねでしかない”と思っています。だったら、たとえ何があっても「よいほうに解釈した者勝ち」だと思うのですが、いかがでしょう?

 蛇足ではありますが、私はいま、本の執筆のかたわら「いつかは本を出したいと考えている人」に向けたセミナーを不定期で開催しています。

 それは、ひとりでも多くの方に、私が体験した「本を出すことの醍醐味」を知ってもらいたいと思っているからなのです。

(文/西沢泰生、編集/本間美帆)


【PROFILE】 西沢泰生(にしざわ・やすお) 2012年、会社員時代に『壁を越えられないときに教えてくれる一流の人のすごい考え方』(アスコム)で作家デビュー。現在は作家として独立。主な著書『夜、眠る前に読むと心が「ほっ」とする50の物語』(三笠書房)『コーヒーと楽しむ 心が「ホッと」温まる50の物語』(PHP文庫)他。趣味のクイズでは「アタック25」優勝、「第10回アメリカ横断ウルトラクイズ」準優勝など。