想像してみてください。自分がもし、学校の先生だとしたら……。

 いくら教科書があるとはいえ、黒板の前に立って月曜日から金曜日まで毎日のように、生徒に授業を行わなくてはなりません。ホームルームの準備だって必要です。それに加えて、テストの作成や採点、学校行事の運営、生徒の生活指導、クラブ活動の顧問、各種の面談など……実にさまざまな仕事があります。

 最近はさらに、新型コロナ対策の一環で教室や教材の消毒作業、オンライン授業の準備などの仕事も増えたといいます。これって、生徒たちを相手に毎日セミナー(講演会?)を開きながら、まったく違う仕事を複数同時にこなしているようなもの。

 まじめに取り組む先生ほど、仕事に追われて精神的にまいってしまい、燃え尽き症候群などに陥って、メンタルをやられてしまうのだといいます。

 今回は、そんな忙しい“先生の仕事”をこなしながら、教員向けの本を20冊以上も執筆されている高校教師・栗田正行さんに学ぶ、仕事で燃え尽きてしまわないための「うまい仕事の効率化術」の話です。

ちょっとした工夫でできる仕事の“自動化”

 会社に勤めていると「どうしてこんなことまでやらされるの?」という、いわゆる“雑務”がたくさんあります。栗田先生によると、それは学校の先生も同じで、ただでさえ多忙なうえに、雑務が重なり心の負担になることがあるのだそうです。

 例えば、あるとき栗田先生は「コピー機や印刷機などの紙がなくなったときに補充する係」に任命されたことがありました。

 自分の仕事が忙しいときに限って、ほかの先生が「だいぶ前に紙がなくなっていましたよ」「早く補充してください」などと言ってきて、最初はそれが大きなストレスになったそうです。

 そこで栗田先生は、補充用紙の最後の箱の上に、こんなメッセージを置くようにしました。

「【○○用紙補充依頼シート】このシートを栗田の机の上に置いてください」

 残りの用紙が最後のひと箱になったら、自分に自動的に情報が届くように、細工をしたというわけです。

 ほかにも、アンケートや調査用紙を回収しなければならない役割になったときは、提出物を入れるトレイの横に名簿を置いておき、提出した人は自分の名前にチェックをつけてもらうようにしたそうです。こうすれば、誰がまだ提出していないかが、自動的にすぐわかります。

「後から始める」ことで得られる利点とは?

 仕事は前倒しで進めると、納期に追われることがなくなりストレスになりません。 もちろんそれが基本なのですが、栗田先生は「仕事によっては、後から始めることにも利点がある」とおっしゃっています。

 例えば、学級通信を書く仕事のときは、例年の同時期の学級通信をコピーしたフォーマットを生かして、それを最新の内容に書き変えるそうです。こうすることで書く時間が短縮され、内容を充実させることのほうに時間を割くことができます。

 また、テストの採点では、ほかの先生が始めてから少したった後に、作業を開始すると言います。理由は、ほかの先生の採点を見れば“模範解答のミスや誤答のバリエーションがわかるので、効率的に採点ができる”から。

 これらは、“すでにやっている人の仕事”を生かすという効率術ですね。

 もうひとつ。効率化の方法。

 栗田先生は個人面談を行う際、事前に生徒たちに面談シートを記入してもらうそうです。そして当日の面談では、自分の思い込みから質問をしないように、こちらから話題を振るのではなく、生徒に先に話してもらうようにしているのだとか。

 こうすることで、準備も当日の進行も、無駄な時間を省くことができるのです。

 いかがでしょうか。

「自分でチェックしなくても、自動的に情報が入ってくるようにする」

「先にやっている人の仕事を参考にして効率化を図る」

「思い込みに走らず、相手の考えを先に把握する」

 など、どれも仕事に生かせる「効率化の方法」ではないでしょうか。ぜひ、仕事に応用していただければ幸いです。

(参考:『なぜか仕事がうまくいく! ストレスフリーな教師の「超」習慣術!』栗田正行著/学陽書房)

(文/西沢泰生)