萩田光雄の曲は“古くならない”。「呼び捨てにしないで」や「雪の花片」も推し曲
全アルバムの中でいちばんのお気に入りを尋ねたところ、
「うーん、'86年の『ヴァージナル』も好きですが、それ以上に'88年の『SNOWFLAKES』ですね。シングルを入れないコンセプト・アルバムで、作詞の康珍化さんが、7つのストーリーをテーマにした童話の世界をモチーフにしてくださっています。それに、萩田光雄(当時:光男)さんの音の選び方や、冬の澄んだ空気感も好きなんです。特に、萩田さんが“UNCLESNOW”として歌ってくださっている1曲目の『七つのスノーフレイク』が大好きですね。これから物語が始まっていくんだというワクワクを感じられる、オープニングにふさわしいナンバーなんですよ。こんな丁寧なアルバム、他のアーティストの方でもなかなか作れないんじゃないかな」
南野の音楽を支えてきた萩田とは、今も音楽的な交流が続いているという。
「最近やった『To Love Again』『To Love Again II』というライブは、私のセルフ・プロデュースでしたが、曲順を指定して、全体のアレンジと音楽監督を萩田さんにしてもらいました。萩田さんの楽曲は時代を感じさせないし、古くならないですよね」
そして、ランキング表の中から、他にももっと聴いてもらいたい曲を尋ねてみると、
「私は、そもそも嫌いな歌は歌わない、という大前提があるので、どれも大好きですね。第32位の『ダブル・ゲーム』もタイトルがちょっと惜しい感じですが(笑)、ムード歌謡風でいい歌ですし。第51位の『呼び捨てにしないで』は当時、自分の中でとても気になった曲で、よく歌っていましたね~!」
「呼び捨てにしないで」は、昔の恋人に呼び止められ、胸の鼓動が高まって押し迫る様子を、南野のあどけない歌声とストリングス演奏をふんだんに使ったクラシカルなアレンジで表現した、まさに萩田光雄の真骨頂と言えるような楽曲だ。また、第44位には、山口百恵のカバー「冬の色」がランクインしている。
「当時のディレクターさんが百恵さんのトリビュートアルバムを担当されていたんですが、他のみなさんがすでにカバーしているものは、活動後期の阿木燿子さん×宇崎竜童さんの楽曲が多かったので、私はあえてそれ以外の『冬の色』と『赤い絆』を希望。それで最終的に『冬の色』を選びました。そして萩田さんには、“女の子が冬の道をひたすら歩いているような音にしてください”とお願いしたら、ビバルディのような荘厳な音がごそっと入っていて驚きました。
萩田さんのアレンジは、『雪の花片(はな)』(第33位)もスケール感があって大好きです。萩田さんが編曲だけでなく作曲もしてくださっている作品が多いのは、曲の内容を相談しているうちに、自分でメロディーも作ってくださるケースがあったからでしょうね。この『雪の花片』は田原俊彦さんの曲でおなじみの宮下智さん作曲ですが、萩田さんの手によって、トシちゃんとはまた違う魅力を出していただけました」