料亭の仲居として大活躍する寿恵子

 というわけで、今週もまた心弾んだのは、「巳佐登」だった。戦争特需でにぎわう店を仕切るみえ(宮澤エマ)も凛々(りり)しいが、寿恵子(浜辺美波)の躍進がめざましい。『八犬伝』を講談調で語って座をもたせ、ご祝儀をもらいまくる。深夜に人力車で帰り、車夫に「お世話さま」と声をかけて降りる姿がすっかり板についている。

 そしてもう1人、なにげにカッコいい女性がいた。それは長屋の差配・りん(安藤玉恵)。洗濯物を干しながら“老後”を語り、「まあ、あたしゃ、最後は家主と暮らすけどさ」と突然告白する。えー、そうだったのかー、りんさんってもしかして事実婚? 自然と口元が緩む。カッコいい彼女らに、心が浮き立つ。時空を超えて、今と重ねる。それが朝ドラ、男子校よりこっちでしょう。

『らんまん』で長屋の差配・江口りんを演じる安藤玉恵 撮影/佐藤靖彦

 ところで22週の最後、万太郎は「人間の欲望に踏みにじられる前に、すべての植物の名前を明らかにして図鑑に永久に刻む」と宣言していた。最終回までのミッションを、今っぽい理屈込みで改めて視聴者に提示した。が、正直なところ、成否はどちらでもよい。それより私が興味津々なのは、寿恵子の商売だ。

 渋谷に家を買い、待合茶屋を開かないかとみえ夫妻に持ちかけられている。万太郎は必ず大成するという寿恵子に、「だったらあんたも、一緒に駆け上がってみなさいよ」と、みえ。すごく今っぽい提案だ。一方、寿恵子の妊娠も描かれた。出産かビジネスか。両方選ぶことを絶賛期待中だ。


《執筆者プロフィール》
矢部万紀子(やべ・まきこ)/コラムニスト。1961年、三重県生まれ。1983年、朝日新聞社入社。アエラ編集長代理、書籍部長などを務め、2011年退社。シニア女性誌「ハルメク」編集長を経て2017年よりフリー。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』など。