子どものころから見えない世界が「視えていた」

──主人公のスサノオくんは天真爛漫でワンパクな小学生です。ロビンやすおさん(以下、ロビンさん)ご自身はどのような少年だったのですか。

めっちゃ元気でした。外で遊ぶのが大好き。飛んだり跳ねたりケガをしそうな危険な遊びばかりやっていました。片や、家の中で絵を描いたり工作をしたりするのも好きでね。外で遊ぶときも家にいるときも、常に100%の力で挑む子どもでした

──スサノオくんは神界や霊界など見えない世界が「視えてしまう」能力を持つ小学生です。ロビンさんは少年時代、そういった経験はありましたか。

「思い起こすとよくありましたね。幼稚園児のころ、園内で男の子と話をしていたら、先生から“一人で何をしているの?”と言われたり、お昼寝の時間に魂が別の部屋まで飛んでいったり。ただそれが普通だったので、不思議だとは感じませんでした

ロビンやすおさん自身も幼少期から見えない世界が「視えていた」という 撮影/吉村智樹

──現在はいかがですか。今もお視えになりますか。

視えますよ。むしろ35歳を超えてから、いっそう感覚が鋭敏になり、視える日が増えました。もう“視えるのが日常”という感じ。目が覚めたら部屋の隅にいた紫色の小さなヒトガタが走って逃げていったり、灰色の雲に包まれた女性の腕が迫ってきたり、きれいな光が飛んでいたり。そんなのはしょっちゅうです

──しょっちゅうなんですか。

「しょっちゅうです。上賀茂神社に賀茂競馬(かもくらべうま)という神事があり、馬が競走するんです。その馬たちを発射台にして龍が二段ロケットのように北へ向かって飛んでゆくのも見ました。後で調べたら、龍が進む方向には水を司る龍神・高龗神(たかおかみのかみ)を祀(まつ)っている貴船神社があったんです。『あ、そうか』と感じましたね

──ロビンさんにとってそれは「あ、そうか」くらいのよくある経験なのですね。

視えない世界を大切にすると、神さん(※ロビンさんは神に親しみを込めて“神さん”と呼ぶ)が助けてくれます。漫画のストーリーを考えていたら、“こうしたほうがええんとちゃうか”と頭の中でアドバイスをくださったり、心霊スポットへ取材に行こうとすると“そんなところへ行ったらあかん”と叱ってくださったり。迫力がある龍の描き方がわからなくて困っていたとき、たまたまテレビをつけたら、水墨画の巨匠・曾我蕭白(そがしょうはく)が描いた龍の屏風絵がどーんと映し出された日もありました。神さんが“手本にしろ”と見せてくださったのでしょう。こんなの偶然のわけがないですから

見開きで描かれる大迫力の龍。「神さん」のナイスパスのおかげで描けたのかもしれない (c)Robin Yasuo

校舎の3階から飛び降りるほどエネルギーがあふれていた

──第2巻では、スサノオくんが、見えない世界が「視えてしまう」ためにクラスで疎外感を覚えるシーンが出てきます。ロビンさんは「変わった子だ」と言われた経験はありましたか。

「小学校5年生くらいから、『あれ? 自分は他の子と違うんかな?』と感じるようになりました。国語の時間、教科書を朗読するとき、書いてある文章ではなく頭に浮かんだ言葉を勝手に読んでしまうんです。クラスメイトは『やれやれ、また始まった』って感じだったし、先生からは毎度、机と椅子ごと廊下に放り出されました。そんなのが2日に1回はありました。小学校では浮いた存在でしたが、時代が大らかだったのか、いやだと思ったことはなかったです

スサノオくんには幽霊など向こう側の世界が「視える」 (c)Robin Yasuo
しかし、その特殊な能力のためクラスメイトからは「ヤバいヤツ」と認識されている (c)Robin Yasuo
幽霊の姿が視えてしまうため疎外されるが、次第に同じく「視える」同志たちと出会ってゆく (c)Robin Yasuo

──学生時代はどのように過ごされたのですか。

「何事にも全力で立ち向かう性格は変わらなかったです。高校時代は美術部だったけれど、学校で一番に足が速かった。体育と美術だけは学校で一番じゃなきゃイヤだったんです。身体能力が高く、京都精華大学(芸術表現の総合大学)に進学してからも、校舎の3階から飛び降りていましたから(笑)。エネルギーがあふれ出て止まらなかったんです

幼少期から元気いっぱい。危険な遊びを好むわんぱくぶりは大学進学後も止まらなかった 撮影/吉村智樹