牛鍋を囲むいつもの万太郎と思いきや……

 という硬めの話はここまで。最後に万太郎観察記を。その1=万太郎、牛鍋を食べず。その2=万太郎、紫外線ケア不足が顔に。

 まずは、その1。万太郎が東大を去る日、植物学教室に佑一郎(中村蒼)がやってきた。来年度から工科大学の教授になるという。歩き、語らう2人。進む道は違っても、ともに「一学者として生きる」ことを確認し合う。その後ろには飲食店が並び、「牛肉」という看板もある。東京に出てきてすぐ竹雄(志尊淳)と食べて以来、波多野(前原滉)や藤丸(前原瑞樹)ら友と会えば牛鍋をつつくのが万太郎だった。これは絶対牛鍋だな、と思いきや、そのまま別れる。好物を封じたのは万太郎の成長か、それとも嗜好(しこう)の変化か。

『らんまん』で万太郎の幼なじみ・広瀬佑一郎を演じる中村蒼 撮影/高梨俊浩

 その2は、万太郎の見た目年齢の話だ。演じる神木さんは30歳なのに、万太郎の年齢(震災発生時、60代)とのギャップを感じさせない。その老けっぷりの秘訣(?)は、アップになるとわかる。シミだ。寿恵子にも多少あるが、万太郎のほうがはっきりと数多く描かれている。植物採集に出かける万太郎はいつも帽子をかぶっているが、やはりそれだけでは紫外線対策はおぼつかない。現代人への教訓なのかもしれない。


《執筆者プロフィール》
矢部万紀子(やべ・まきこ)/コラムニスト。1961年、三重県生まれ。1983年、朝日新聞社入社。アエラ編集長代理、書籍部長などを務め、2011年退社。シニア女性誌「ハルメク」編集長を経て2017年よりフリー。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』など