例えば、初めてやることや、ちょっと大きなチャレンジをするようなとき。
「なんだか大変そうだな」とか「えっ? いったい何から手をつけたらいいの?」って思うこと、ありませんか?
そういう気持ちがあると、始めるのが面倒になって、つい先延ばしにしてしまうものです。
自分のことならそれでもよいのですが、これが会社の仕事だと、どうしても納期内にやらなければなりません。
今回は、そんなときに有効な「チャンクダウン」という考え方について。
デカルトやヘンリー・フォードも勧める方法
チャンクダウンの「チャンク(chunk)」とは、「大きな塊(かたまり)」を意味する英単語です。ですから「チャンクダウン」とは、「大きな塊を細かくする」ということになります。
ここでいう「塊」とは、つまり「やるべき仕事」のこと。「チャンクダウン」は、「仕事の細分化」をあらわす言葉なのです。
どんなに面倒で複雑な仕事でも、段取りやステップに分けて細かくしてしまえば、ひとつひとつは小さな仕事になります。
フランスの哲学者・数学者であるデカルトの言葉です。
「難問は分割せよ」
アメリカでかつて自動車王と呼ばれた事業家、ヘンリー・フォードもこう言っています。
「小さな仕事に分けてしまえば、何事もとくに難しいことはない」
どうやらその昔から、やっかいな仕事を片づけたいとき、この「チャンクダウン(細分化)」は、常套(じょうとう)手段だったようです。
「最初にやるべきこと」を見つけることができる
チャンクダウンの手順は簡単です。
○書き出した「やるべきこと」をながめ、優先順位を考えて、手をつける順番を決める
○「最初にやる」と決めたことから着手して、順番に片づけていく
チャンクダウンすることのメリットは、ひとつひとつの「やるべきこと」が小さくなっているため、手をつけやすいこと。最初にすべての「やるべきこと」を書き出すことで、抜け漏れを防ぐことができること。
しかし、何よりもよいのは、最初に手をつけるべきことが何かがわかることではないでしょうか。
例えば、「たくさんのお客様を招くパーティーイベント」の責任者を任されたとして、やるべきことを、(おおまかにですが)チャンクダウンしてみましょう。
まず、頭に浮かぶ「やるべきこと」を書き出します。
○絶対に外せないVIPの招待客をリストアップする
○日程を決める
○招待状を用意する
○社内の役員が参加できる日程を確認する
○VIPの招待者に参加していただける日を確認する
○当日のプログラムを作成する
次に、手をつける順番を考えます。
一見、「会場を確保する」が最初にやるべきことのように思えますが、まず開催日を決めないと会場を探せません。そして開催日を決めるためには、自分の会社の役員と、VIP招待者が参加できる日を把握する必要があります。
そういうことを考えて、以下のように優先順位を決めます。
2 絶対に外せないVIPの招待客をリストアップする
3 VIPの招待者に参加していただける日を確認する
4 日程を決める
5 会場を確保する
6 当日のプログラムを作成する
7 招待状を用意する
まず、社内の役員たちの日程を秘書に確認して、全員が参加できる開催日の候補を決め、次にVIP招待者の秘書に連絡して、参加が可能な日程を確認します。
社内外の「外せない人たち」が参加できる日がわかったら、その「○月○日」を全員に告知して、あとから予定を入れてしまわないように仮押さえします。
チャンクダウンしたことで、この「開催日、○月○日」を決めることが、1秒でも早く片づけなくてはならない仕事だとわかります。
この順番を間違えてしまうと、会場を確保してから、役員に「バカもん! その日は海外出張だ!」と怒られたり、絶対に外せないVIP招待者に予定が入っていて、日程を変えなくてはならなくなったりします。
印刷に時間がかかる招待状も、すでにVIP招待者の日程は抑えていますし、プログラムの内容によって中身が変わるかもしれませんので、最後でよいとわかるわけです。
このように、チャンクダウンすることは、「手順間違い」によるトラブル発生や、やり直しを回避することにもつながるわけですね。
やっかいな「大きな塊」のような仕事に立ち向かうときは、ぜひ、チャンクダウンしてから一歩を踏み出してください。
(文/西沢泰生)