「花粉症ですか?」と聞くと、「風邪(かぜ)です」と言われ、「風邪ですか?」と聞くと「花粉症です」と、この2択を結構な確率で外すつぶやきです。
急に来る花粉症、ティッシュを鼻につめて外に出るよね〜
そしてかく言う僕も花粉症です。自分は一生、花粉症とは縁がないと思っていたのに、40歳を過ぎてからのデビュー。そこからは毎年春の風物詩。ただ急に来るんだよね。ニュースとかで花粉症の季節がやってきた的なことは聞いていて、自分にはまだ来ないなー、もしかして今年は花粉症にならないかなと思っていたら、突然くしゃみと鼻水が出て、今日からか! ってね。急に来る。そういうやついるよね、「いや、近くまで来たから今から行っていい?」って、すでに家の前にいるやつ。急に来るなよ。千疋屋の『銀座プリン詰合せ』を手に持っていたら許すけど。逆にうれしいけど。それをもらうまで手元を見ないふりするの大変だけど。
箱ティッシュもすぐなくなるね。昔は1箱200枚入ってたけど、160枚になり、今は1枚の幅が狭くなっているような。トイレットペーパーも幅が狭くなってるもんね。セットしたときの両脇の隙間が前より大きいよね。メーカーによるけどねって、これを言っとかないとな。涙ぐましい努力をしている企業のティッシュを、僕は鼻に詰め、その上からマスクをして外に出ます。人と会って、ティッシュを鼻に詰めてるの忘れてマスクを外したとき、たいていビックリされるけど、鼻に詰めてる人見ないよね? 僕だけ? こんなに花粉症の人いるのに?
“いいティッシュ”を人の家でたくさん取る人、なんなのかね〜
薬で対応しているのかな。薬を飲むとくしゃみや鼻水は止まるって言うけど、異物が身体から出ようとしているのを無理やり止めるって、逆に身体に悪そうで、僕は一切、薬は飲まないという変わり者タイプ。その代わり大変よ。みんながよく言う、目ん玉だけ外して洗いたいくらい痒(かゆ)いし、ずっと鼻かんでる。よーし出し切ってやるぞ、と勢いよく鼻をかんだら、思ったより鼻水が出なくて期待外れってときもあるしね。『鼻セレブ』1枚、もったいないなってね。高いじゃない。でも昔の便所紙みたいな固い紙だと鼻の周りの肌が荒れちゃうんだよね。手鼻ってわけにもいかないしね。
あれだよね、家以外の場所で、1枚つかんだティッシュが、柔らかくていいやつだとテンション上がるよね。あのー、人の家のティッシュだからって、何枚も取る人ってなんなの? 飲み物をちょっとこぼしただけで、人の家の箱ティッシュから、花咲か爺さん並みに振舞うじゃん。自分の家ではシャンプーは2回プッシュなのに、人の家では5回プッシュするタイプの人間だね。
緊張すると、なぜだか鼻水ってピタッと止まるよね〜
でね、こんだけ花粉症に悩まされてる僕なんだけど、緊張からかな、舞台でお客さんの前に立つとピタッと止まるの。不思議。ある意味、特異体質。花粉さんも空気読んで、そこまでやっちゃ悪いよって思ってんだろうね。そういうときは出てこない。これってすごくない? ほかの人が言ってるの聞いたことないけどね。僕しか言ってない。ナレーションの仕事なんて、鼻水だらだらで今日はしゃべれないと思いきや、ブースの中に入るとピタッと止まってしゃべれる。
みんな緊張すればいいんじゃないかな。大事な会議でしゃべらなくちゃならないとき、緊張で鼻の通り、よくなってない? 学校で今日の日付が自分の出席番号だったと気づいたとき、絶対に指されるという緊張。それから、久々の歯医者さんでの待ち時間、緊張して鼻水止まってない? 駅とかに置かれた自由に弾いていいピアノを弾くとき。ATMで10万円おろして外に出るとき。電車にやばいヤツが入ってきたとき。ゲームやっててラスボス登場。オロナミンCのキャップを引っ張る瞬間。探偵会社で浮気調査結果の封筒の裏の紐をくるくるして開けるとき。カラオケで歌っていてラップの部分が近づいてきたとき。緊張する場面は違えど、誰でも花粉症を止めれる機会はあると思うんだよね。
「つぶやきシロー現象」が世間をにぎわせちゃうかもね〜
本屋さんに入るとトイレに行きたくなるという現象。医学的に解明されてなく、新聞の投稿欄に掲載され、青木まりこさんという方が書いたということで、この現象を「青木まりこ現象」というのは有名な話だよね。だから緊張すると花粉症がおさまることを誰も言ってないし解明されてないなら、僕が新聞に投稿して「つぶやきシロー現象」として後世に名を残す可能性もあるよね。先にこのフムフムニュースに載るから、大元はここだね。タイトルも「つぶやきシロー現象とは?」でお願いします。
2人目じゃない? 日本人の名前が付く現象。クイズ番組の問題とかにされるのかな~。「あるタレントが、フムフムニュースの連載コラムに書いたことがきっかけで、人が緊張状態にあると、花粉症の症状が出なくなる現象を、そのタレントの名前にちなんで、なんというでしょう?」クイズ王なら「あるタレントが、フムフム・・・」ここでピンポーン! って早押ししてくるな。
この現象名ばかり広がって、若い子なんか街頭インタビューで「『つぶやきシロー現象』のつぶやきシローって、この人なの!」とか・・・あれ、鼻の調子がいい。花粉症が止まった。緊張してるんだ! 自分の名前の付いた現象が世に知れわたることに緊張して、つぶやきシロー現象になってる。ホントだよ! ホントに鼻水止まってる。つまり今までは緊張感を持って、このコラムを書いてなかったってことだ。少なくても今回、書き始めは鼻水が止まらなかった。身体が反応して初めてわかった。認めたくないし言いたくないけど言いました。それでもこの「つぶやきシロー現象」を証明したかったんだよね。僕の勘違いかもしれないけど、本気で思うところから始まるからね。こりゃ~すごいことになるぞ! という緊張から、こんなこと言っちゃって、フムフムニュースに「ちゃんと緊張感を持って書いてください!」って怒られるんじゃないかという緊張へ。つぶやきシロー現象は続く。
イラストのタイトルは「本末転倒」です。くしゃみをしたあとに使うためのティッシュを、くしゃみを出すために、わざわざこよりにしなくても。今の時期ならいくらでもくしゃみは出るし、もったいない。しかも『鼻セレブ』で。
(文・絵/つぶやきシロー)
【PROFILE】
つぶやきシロー ◎1971年3月10日、栃木県生まれ。お笑いタレントや俳優として活動するかたわら、2011年からは小説も執筆。2021年には、著書『私はいったい、何と闘っているのか』(小学館刊)が安田顕主演で映画化された。2022年4月、新著『こんな人いるよねぇ~──本を読んでつぶやいた』(自由国民社刊)を上梓。また、2009年から公式Twitterでほぼ毎日「あるあるネタ」をつぶやき続けて大人気に。フォロワー数は103万人を超える。(2023年3月現在)
公式Twitter→@shiro_tsubuyaki