最近、ラブストーリーの“邪道”を攻めている作品が、むしろ“王道”になっている気がしませんか?
いわゆる“当て馬”と呼ばれるポジションの男の子や、ヒロインの恋路をはばむ悪女(たいていは毛先をクルクル巻いている)が登場しなかったり、「結ばれるの確定!」と思われたふたりが、最終的に別れを選んだり、という作品が増えてきています。
そんな中、久しぶりに『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系/以下『花晴れ』)を見返してみたんですよ。そしたら、“王道”っぷりがまぶしくてまぶしくて……。当時は何の違和感もなく見ていたはずなのに、令和のいま改めて見ると「なんか、落ち着く」って。
なんだろう、安心して見られるんですよね。そこで今回の連載では、TVerで繰り返し配信され(現在も絶賛配信中)、5年以上たってもなお、ランキング1位に入る『花晴れ』の魅力、徹底的に解剖していきたいと思います!
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『花男』から『花晴れ』へ。時代の変化にマッチしたキャラクター
『花晴れ』は、『花より男子』の続編であり、F4卒業から2年後の英徳学園を舞台にした物語。どちらも神尾葉子さんが描いたお話なのに、ヒーローである道明寺司(松本潤)と神楽木晴(平野紫耀)のキャラが全然違うのが面白いですよね。
“リーダー格で無敵に見えるのに、実はちょっと抜けている”というところは似ているけれど、晴はどちらかというと気弱。道明寺が守ってもらいたくなるタイプだとしたら、晴は守ってあげたくなる男の子なんです。しかも、ケンカも強くない(道明寺は強かったですよね)!
演じる平野紫耀さんのキュルッとした子犬系の瞳も相まって、余計に可愛さが強調されていました。
『花晴れ』は王道の少女マンガだけど、ヒロインがドSイケメンとくっつかないところは今っぽいなって。でも、晴は時折“オスみ”を出してくるからずるいんですよ(涙)。
音の婚約者・馳天馬(中川大志)に、「好きな女の言ってること信じなくてどうするんだよ!」ってガチギレしたり、晴はとにかく欲しい言葉をくれる人だった。
晴と天馬くん、どっちといたほうが幸せ? 考察も楽しい!
いわゆる“当て馬”と呼ばれるキャラに惚れがちな私。
ドラマ『オー! マイ・ボス! 恋は別冊で』(TBS系)ではもちろん中沢涼太(間宮祥太朗)、『彼女はキレイだった』(カンテレ・フジテレビ系)も樋口拓也(赤楚衛二)、映画『溺れるナイフ』(2016年)では大友勝利(重岡大毅)……と、ずっとヒロインに選ばれないほうを推してきました。
なので、もちろん『花晴れ』も天馬くん一択! と思っていた。ただ、第9話を見たとき、ちょっと揺らいでしまったんですよね。
第9話、江戸川音(杉咲花)はいろいろあって晴と天馬くんに「ひとりにして」と言いました。天馬くんは、「うん、わかった」とすんなり帰っていったけれど、晴は「泣いてる女をひとりになんかできるかよ」と寄り添ってくれた。
晴の“勝ち”が確定したのは、この瞬間だったと思うんです。面倒くさいかもしれないけれど、「ひとりにして」は“ひとりになりたくない”の意味だったりする。それに気づいた晴、さすがすぎません?
ただ、“音はどっちといたほうが幸せになれるのか問題”についての結論はまだ出ていない……。当時の私は、「天馬くんのほうがどんなときも冷静だから、天馬くん!」と思っていたけれど、今は晴のまっすぐさがまぶしく見えたりして。
年齢を重ねて見返すと、また違った解釈が出てくるので面白いです。みなさんは、どっち派ですか? ご意見をお聞かせください〜!
(文/菜本かな、編集/本間美帆)