なんでも「くまモンが『プロレスリング・ノア』の開催する熊本大会に現れるらしい」というウワサを聞いて、2022年10月半ば、取るものもとりあえず熊本へ。
火の国くまもとマスクって、いったい何者なの!?
会場である熊本城ホールに到着すると、ロビーで何やらにぎやかな声が。
ぎ、ぎょぎょ、これは誰?
光り輝く山吹色に真っ赤な炎が燃えたマスクと衣装。まん丸の目玉がこちらを見ている。呆然としたあと思わず吹き出すと、いきなりの「シャイニングウィザード!!」を仕掛けられた。え、それってノア所属の武藤敬司選手の開発技・・・。今日、武藤選手は来ていないはずだけど・・・。
「火の国くまもとマスクだモン・・・じゃなくて、くまー! よろしくお願いしますだくま☆」
くまモンの友人とささやかれている、くまもとマスクだったのだ。
そこへ、ノアの吉岡世起選手が登場。くまもとマスクが駆け寄っていく。
熊本出身の吉岡選手は、地震や水害に見舞われた熊本を応援したいという思いから、くまモンに協力を要請、くまモンは快諾したという。
9月からノアの大会会場に募金箱を置き、くまモンとのコラボグッズ(缶バッジ、タオル)を発売してきた。今回の熊本大会ではセレモニーもおこなわれた。
必殺技を次々と! 筋肉を強化するには・・・?
それにしても、くまもとマスクはどこから来たのか。これもウワサなのだが、くまモンの活動拠点である「くまモンスクエア」の地下に、極秘のプロレスラー養成施設があるとか。くまもとマスクは、くまモンの到着が遅れると連絡を受けて、ひそかに地下施設を抜け出してきたらしい。
そもそも、くまもとマスクは過酷な鍛錬の末に、どんな攻撃にも耐えうる究極のボディとテクニックを身につけた、初代くまモンランドヘビー級チャンピオンなのだそう。
さっそく、その技術を披露してくれた。
「ヒップアタッくま!」
「火の国ラリアート」
「モン絶武者返し」
そしてなぜかスキを見ては繰り出す、「シャイニングウィザード!!」
吉岡選手とはすぐに意気投合したようで、さらに技術を磨きたいと技の伝授を懇願していた。
「すごいよ」「うまい」「そうそう、そんな感じ」
「マシンガンヘッドバット」を丁寧に教えた吉岡選手、ほめ上手である。くまもとマスクも必死についていく。
さらにくまもとマスクは、吉岡選手の筋肉をなでなでしながら、羨望と敬意のまなざしを向けて質問。
「どうやって訓練すれば、こういう筋肉ができあがるのかモン? じゃなくて、できあがるくま?」
「うーん、とにかく毎日、栄養のあるものをたくさん食べて、一生懸命トレーニングを重ねるしかないかなあ」
「どのくらいでこういう筋肉になれるくま?」
「3年・・・かな」
くまもとマスク、ばったり倒れた。だが直後に立ち上がり、「やってやるくまー!」と雄叫びを上げた。
火の国くまもとマスク、大活躍! 初プロレスの感想は?
試合開催前に、熊本応援企画セレモニーがおこなわれた。どうやらくまモンは、まだ会場に到着していない様子。音楽にのって華麗に登場したのは、またもやくまもとマスクだ。
リングに上がると、吉岡世起選手、小峠篤司選手、YO-HEY選手、アレハンドロ選手が迎えてくれた。そこでも技を見せつけまくるくまもとマスク。吉岡選手から熊本県側に無事に募金箱が手渡され、「これからも熊本を盛り上げていきましょう」という言葉に、力強く「任せろくま」と胸を叩いた。
その後、なぜかくまもとマスクと選手たちは、くまモンの持ち歌「カモン! くまモン!」を踊り出す。選手たち、よほど練習を重ねてきたのか非常に上手だ。これには会場からも大歓声が上がった。
火の国くまもとマスクは、物販コーナーにも姿を見せた。
缶バッジとタオルを売っているコーナーでは行き交うお客さんを呼び込んだりしていたが、突然、イスを持ち上げて荒ぶっていた。正義の心を身につけたはずのくまもとマスクに、いったい何があったのか。
「くまモンが遅れているから怒っている」
というウワサが乱れ飛んだが、真実はわからない。だがその後、くまもとマスクは振り上げた椅子を丁寧に元に戻していた。ヒール役に憧れてはいるが、徹しきれないというところなのだろうか。
当のくまモンは、吉岡選手が登場するメインカードには間に合い、花束を贈呈。そして勝負は吉岡選手率いるチームが勝利した。
くまもとマスクに当日の感想を聞いてみた。
「楽しかったくま。これからもくまモンが遅れるときは、いつでもどこでも行きマスク」
だが、この日以降、くまもとマスクを見た者は誰もいない。地下室に閉じ込められて出られずにいるらしい、いや、さらに強くなるために訓練を重ねているということだ、などさまざまな情報が飛び交っているが、詳細を知る人物はいないという。
(取材・文/亀山早苗)