コミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」が誕生したのは2011年。現在、国内のアクティブユーザー数は約8900万人と、ビジネスから地域活動など多用途に使われるコミュニケーションツールに発展している。
「家族や友人だけでなく仕事関係など、幅広い間柄の人とのやりとりに使うように。便利になった反面、LINEはもはやプライベートなツールではないという感覚を持ったほうがよいと思います。この10年でマナーも大きく変化しているので、時代に合った使い方を知らないと、“イタい人”と疎まれる可能性が」
そう指摘するのは、ITジャーナリストでSNSの活用方法に詳しい鈴木朋子さん。
返信しにくい長文は相手を困らせる
自分では気づかないうちに、時代遅れなLINE使いをしている人はご用心。
(1)10行以上の長文、(2)1つの吹き出しに用件が複数、(3)文末に必ず絵文字をつけているという人は、ガラケー時代のメール文化を引きずっている証拠。
「40代より上の世代は、メール感覚でLINEを使いがち。1つの吹き出しの文字数が多い傾向があります。文末を絵文字でにぎやかにするのもガラケー世代の特徴。同世代間ならそれほど違和感なくやりとりできますが、職場や地域、学校関連など幅広い世代とやりとりするときは、メール的になっていないか気にかけて」(鈴木さん、以下同)
デジタルネイティブの若者たちは、チャット感覚でワンセンテンスごとに短文で送信。1文1用件だから、相手が読みやすく返信しやすいのがメリットだ。
「とはいえ、ガラケー世代が同世代間で急に“短文連打”をすると相手にとって逆に迷惑になる可能性もあるので、無理にまねはしないこと」
今すぐやめよう! NGマナー
そのほかにも、知らないと恥ずかしいNGマナーを鈴木さんに教えてもらった。
【1】仕事関係の人には深夜や休日に送る
LINEはメールよりライブ感が高いうえ、仕事のメールとなれば、生活時間外や休みの日でも気を使って返信する人が多い。“返信はいつでもいいよ”のつもりでもダメ。
「メッセージの送信は朝8時から夜9時までが無難。それ以外の時間は、“朝早くにごめんね”や“夜分にすみません”と、ひと言添えるのがよいと思います。休日に職場の相手に送るのもマナー違反と心得て」
【2】ダラダラとやりとりを続ける
“またね”や“ありがとう”といったスタンプが送られてきたら、“やりとりを終わらせたいのかな”と察して、スタンプを返して終了するのが大人のたしなみ。
【3】黙ってメッセージを取り消す
相手には取り消された事実だけが伝わるので、「何が書いてあったの?」と不快な気持ちに。「誤字があったから」など、消した理由を伝えること。
【4】個人的なトークをスクショして第三者に送る
たわいのない内容でも、トーク画面を勝手にほかの人に見せるのはトラブルのもと。無断で第三者に見せてプライバシーを侵害した場合、不法行為となることも。理由があって情報共有したい場合は、事前に確認を。
【5】急に大量の写真や動画を送りつける
写真や動画を送る場合は、相手に通信料がかかることを考慮して、Wi-Fiに接続できる在宅時間帯に送るのが親切だ。
【6】アイコンに芸能人の顔写真を使う
プライベート以外でLINEを使う場合は、ユーザー名は誰が見ても認識しやすく、アイコンに芸能人の写真などは使わないのが賢明。いくら個人的な利用でも、“肖像権について頓着がない”、“非常識な人”というレッテルを貼られてしまう。ビジネスの場面では信用問題にも。
“LINEは軽率”は時代遅れの認識に
一方、以前は“失礼?”と思うような行動が許容されつつある流れも。
「最近は、連絡ツールとしての地位が向上しているので、公的な連絡にLINEを使うこと自体が失礼だという感覚は薄れつつあります。普段から頻繁にLINEでやりとりをしている相手であれば、謝罪やお礼を伝える手段として利用しても問題ありません」
相手によっては、スタンプ1つで返事をすることも失礼ではないが、相手との距離感が微妙なときは、“OKです”、“了解しました”といった、丁寧語のスタンプがベター。使い勝手がよいので1つ用意しておくと便利だ。
すぐ返せないときは“未読スルー”が基本
また、未読・既読のマナーにも変化が。
「以前ほど“スルー”に抵抗がなくなってきています。“既読スルー”を冷たいと感じる人は減っていますが、それでも一定数はいますから、即レスできないときは未読にしておいたほうが無難。既読後は“今返信できないので、後で返信します”と一文送っておくと失礼がないです」
職場や地域活動などの複数人が参加するグループでLINEを使用する場合は、会話が円滑に流れるような振る舞いを心がけて。
特定の人にあてたメッセージだと表示する“メンション”や“リプライ”、コメントに反応できる“リアクション”といった機能(後述)を使いこなせると便利。
「1つの議題に対して、グループの全員が“OKです”と返信すると、スマホがLINEの通知で鳴りっぱなしになる煩わしさがあるので、最初から“OKのときは返信不要”などとルールを作っておくとスムーズですよ」
よかれと思ってなんでも丁寧に反応することが、逆にLINE上では迷惑になることもあるのだ。
便利機能をスマートに使う
「メンション」で誰へのメッセージか明瞭に
グループで特定の相手を指定して、「@(ユーザー名)」の形で会話を投げかけるメンション。
「指定された相手に通知されるので、質問に気づいてもらえない、ということを回避。ユーザー名に敬称は不要ですが、丁寧にしたい人はつけてもOK」
「リプライ」で逸れた話を軌道修正する
質問に対して返信をする前にどんどんトークが進んでしまったら、回答を送りたいメッセージをリプライ機能で引用して返信を。
「何に対しての返答かひと目でわかり、トーク履歴を延々とスクロールする必要もなくなります」
「リアクション」で会話をスムーズに
メッセージや画像に感情表現を表したアイコンで反応できる機能。「会話の流れを止めることなく、“いいね!”の感覚で特定のメッセージに反応できます。特にグループでの会話のときに便利ですね」
◇
LINEは気軽に使えるツールだからこそ、慎重さを欠いてしまいがち。“これが正解”というルールが曖昧(あいまい)なため、知らずに相手に負担をかけてしまう場合も。
「LINEのやりとりでいちばん嫌がられるのは、“空気が読めない”タイプ。対面のコミュニケーションと同じで、相手との関係性や年代も考慮してやりとりするのが、大人のLINE賢者です」
(取材・文/河端直子)
《PROFILE》
鈴木朋子 ◎ITジャーナリスト。スマホ、SNSなど身近なITに関する情報をメディアで発信。子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」としても活動する。著書に『小学生からのネットのルール』(主婦の友社)ほか