舞ちゃんの青春が帰ってきた!
最終回まで残り2週間となった連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)に、福原遥さん演じるヒロイン・舞が大学時代に所属していた人力飛行機サークル「なにわバードマン」の先輩たちが再登場。昔と変わらず空への憧れを追い続ける彼らの姿にお茶の間が沸いています。
多くの視聴者をワクワクさせた「なにわバードマン編」。そこには人力飛行機に青春をかける個性豊かで魅力的な仲間たちがいました。
部長として有能すぎる、鶴田先輩!
まずはサークルの代表を務める3回生の鶴田先輩(足立英)です。人力飛行機の翼に心奪われた舞に「この翼の美しさがわかるんやろ。飛行機、一緒に作ろ!」と声をかけてくれたのが彼でした。この一言がなければ、舞の空への憧れや夢が具現化されることはなかったかもしれません。
それほどまでに重大な役をやってのけた鶴田先輩は、物腰こそ柔らかいけれど、内には非常に熱いものを秘めている人。なにわバードマンが人力飛行機の飛距離を競う「イカロスコンテスト」に書類落ちしたときも、思わず愚痴をこぼしてしまった部員を「悔しいのはみんな一緒や。だけどいちばん悔しいんはパイロットの由良(吉谷彩子)ちゃうか」となだめつつ、次は女性パイロットの記録飛行を目指そうとみんなを鼓舞しました。部長として有能すぎる。
そんな鶴田先輩に恋した視聴者も多いのでは? かくいう私もその一人。あんなに優しくされたら、惚れてまうやろー! でも、鶴田先輩が思いを寄せてるのは2回生の由良先輩。彼女もまた、「いや、そしたら鶴田先輩への恋は叶(かな)わないな」と思わせるほどに魅力的でした。
ストイックで懐も深い、由良先輩
サークルを見学に来た舞にいきなり怒鳴った由良先輩への第一印象は、もしかしたらあまりよくなかったかもしれません。でも、それは舞が翼に見惚れて思わず手を伸ばしてしまったから。その翼は、パイロットである自分の体格に合わせて設計された人力飛行機「スワン号」に欠かせないものであり、部員みんなが一生懸命作ってくれたもの。だから由良先輩はつい声を荒げてしまっただけで本当は誰よりも部員思いの優しい先輩なんです。
何よりも、強い覚悟でみんなの思いを背負い、日々過酷なトレーニングと減量に挑むストイックな姿勢がカッコよかった! その姿をずっと見ていたからこそ、舞はテスト飛行でケガをした由良先輩の代わりにパイロットになりたいと思えたのでしょう。普通ならそこで「新入生に自分の代わりが務まるはずない!」と反発してもおかしくないはずなのに、スワン号を作った仲間の思いを知っている舞なら記録を狙えると、その思いを託した由良先輩……カッコよすぎます。
スワン号で空を飛んだことをきっかけに、舞が旅客機のパイロットになるため、航空学校を受験したいと言い出したときも由良先輩はその背中を押してくれました。実は由良先輩、自身もパイロットになりたいという夢を抱きながらも、158センチ以上という航空学校の身長制限を前に受験を諦めた過去があります。努力だけではどうにもならなかった壁を超えていく後輩……きっと悔しさもあったでしょう。だけど、舞の身長を聞いて「ほな大丈夫やな」と安心した顔で答えられる懐の深さもまた多くの人を感動させました。
そんな由良先輩が、のちに身長制限が緩いアメリカのアリゾナ州でパイロットとして働いていることが明らかに。鶴田先輩との仲はあれからどうなったのでしょうか。結ばれたかどうかはわかりませんが、由良先輩がセスナ機でグランドキャニオンを飛んでいるとどこかで聞いた鶴田先輩が「よかったなあ」とあの優しい顔で微笑(ほほえ)んでいる姿が目に浮かびます。
刈谷先輩×玉本先輩、ライバルゆえの信頼関係
そして、今回再登場となったのが3回生の刈谷先輩(高杉真宙)と玉本先輩(細川岳)です。刈谷先輩はスワン号の設計、玉本先輩はプロペラ作りを担当していました。現在は2人で会社を立ち上げ、人を乗せて空を飛ぶ大きなドローン=空飛ぶクルマの開発に挑んでいます。
“なにわの天才”と呼ばれる刈谷先輩は設計に関して一切妥協できない性格。また、「最高に仕上がった飛行機と最高に仕上がった由良が未来で待ち合わせしとる」なんてカッコいい台詞をさらっと言ってのけるロマンチストな一面も持ち合わせています。
そんな刈谷先輩が仕事のパートナーに選んだのは玉本先輩でした。2人は昔からぶつかることが多かったので意外に思われた方も多いかもしれません。だけど、実は刈谷先輩の性格をいちばん知り尽くしているのは玉本先輩のように思えるのです。
学生時代、舞がスワン号のパイロットを務めることに反対し、サークルを一時離れていた刈谷先輩。代わりに玉本先輩が舞の体格に合わせスワン号の設計を変えようとして、刈谷先輩が怒ったことがあります。そのとき、玉本先輩が今回みたいに設計担当が急にいなくなっても、部員が困らないように1年のときから設計の勉強をしてきたことが明らかになりました。
「お前から見たら素人やろうけどな」と悔しさをにじませながらも、最後は「確実に記録狙うんやったらお前の設計でないとあかん」とその役目を託した玉本先輩。誰よりも刈谷先輩のすごさを理解している彼こそ、パートナーとしてふさわしい! 同志でありライバルでもある2人の、まるで少年漫画みたいな熱いやりとりが私は好きです。
魅力的すぎるなにわバードマンたち!
他にも、いつもは寡黙なのに「スワン号が飛ぶところを見たい」という熱い思いを舞に語ってくれた“永遠の3回生”こと空さん(新名基浩)、のちに舞が企画したオープンファクトリーに准教授として協力してくれた渥美先輩(松尾鯉太郎)、ひょうきんな仕草が注目された西浦先輩(永沼伊久也)、舞をサークルの見学に誘ってくれた爽やかな佐伯先輩(トラウデン都仁)、舞の同期である初々しい新入生の藤谷くん(山形匠)と日下部くん(森田大鼓)。
彼らの空への強い憧れ、そしてものづくりに対する情熱は、現在の舞を形づくったといえます。その原点に今立ち帰ろうとしている舞。空飛ぶクルマの有人飛行が成功するとき、その操縦席に座るのは舞かもしれません。最後に、舞がみんなの想いを乗せて空を飛ぶ姿が見たい!『舞いあがれ!』の最終回に期待が高まります。
(文・苫とり子/編集・FM中西)