人気恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン』(Amazonプライム)をみなさんは見たことがありますか? ハイスペックで文武両道な条件を満たした男性(または女性)を、複数人の異性が奪い合うというルール。2017年から配信が開始されてから今もなお、多くの視聴者を虜(とりこ)にしています。
ですが、こんなに完璧なバチェラーは本当に存在するのでしょうか。もちろん存在するには存在しているのでしょうけれど、結婚したくてたまらないハイスペックな男性なんて本当に婚活市場にいるのかなぁと。
現在の婚活市場は、30代前半の男性の“2人に1人”は独身で、女性も20代後半は65.8%(2人に1人以上)、30代前半は38.5%(3人に1人以上)が独身という状況だそうです。
※参考:IBJ「結婚」に関するデータから読み解く、結婚相談所ビジネスの成長性
果たして、この中にバチェラーのような最高級クラスの男性もいるのか? この疑問を解決するべく、結婚相談所・ミューコネクト株式会社の代表取締役社長、横井睦智さんにお話を聞いてみました。
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バチェラーは結婚相談所にいるけど
──早速ですが、結婚相談所にバチェラーのような人って、本当にいるのでしょうか?
「僕の感覚では、スペックがめちゃくちゃいい人って、いるにはいるんですよ。ルックスもよくて、いい大学を出ていて、高収入で、って。ただそういう人には、決定的な何かが足りていない」
──その何かっていうのは……。
「女の子への気遣いが全然できないことが多いですね。デートをしていても先に歩いて行っちゃったりとか、自分のことしかしゃべらなかったりとか」
──なるほど! (本物の)バチェラーはそんなことしませんものね。
「うちの男性登録者にも、顔面偏差値のめちゃくちゃ高いハイスペックな方がいたんです。プロフィールを出した途端、案の定申し込みが殺到しました。ただ、その子も気遣いがイマイチで成婚できなくて」
──バチェラーみたいな人って、登録者の中でだいたい何パーセントくらいの割合でいらっしゃるのでしょうか。
「1〜2割くらいですかね」
意外と多い、バチェラーはマザコン気質
──ちなみに、どういった条件を求める人が多いのでしょう?
「“お母さんが理想”という方が多いですね。でも、マザコンと思われたくないという気持ちがあるみたいで、最初は言わないんです。でも後々、カウンセリングの中で聞いてくと“母親がタイプ”っていう人は多い」
──たしかバチェラーでも「将来は両親のような夫婦になりたい!」って言っていた人が多かったかも……。
「ハイスペックな方は、やっぱり両親もデキる方が多いから、どうしても照らし合わせてしまう部分があるみたいです。しかも、みなさんだいたい小学校から私立の学校に通っていたり、けっこういい大学を出ていたりしますから。それなりに教育にお金をかけられる家庭環境みたいで」
──成婚率は一般の方と比べて低いんですか。
「低いですね。自分がモテるということを知ってるので、知っているが故にすごく細かいこだわりを持ってる人が多い」
駄々をこねるハイスペ男性「写真と実物が違うからイヤだ」
──どんな細かいこだわりが?
「例えば、相手の顔のあの表情がイヤだとか、言葉の節々が気になるとか。髪型が〜とか、口癖が〜とか。とある30代男性の場合は、本人と会ったら写真と違うからイヤだと言っていて。
見た目じゃなく、性格で相手のことを理解していこうよと“じゃあ、あなたはどうなんですか?”と、尋ねました。すると、“僕は写真のとおりに映っているから問題ない”って言うんですよね」
──相手に対して求めるレベルが高いんですかね。
「だいたいこういう人って、ひとつイヤなところが見つかると、もうすべてがイヤになっちゃうんですよ。“坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”じゃないですけど。わがまま言い放題」
──そういった方には、どういったアドバイスをされることが多いですか。
「“笑顔と思いやりがあれば、どんな人でも結婚ができる”って、僕は言っているんです。
ハイスペックな方は、みんな最初のとっつきはめちゃくちゃいいんですけど、やっぱり交際してからうまくいかないので、思いやりが足りないのかもしれません」
──思いやり。横井さんが思うに、具体的にどんな行動をすればうまくいくと思いますか?
「“どれだけ彼女を姫として扱うか”ってことが、大事だと思います。ほとんどの女性は自分を姫としてくれる人が欲しいんじゃないかなって。“こんなに愛されたこと、いままでない…..!”くらいの。
“この人と結婚したら、一生こういう風に大切にしてくれそうだ”と思ってもらえるように、最善を尽くす。会社のグチも聞いてあげて、なんでも“大丈夫だよ、大丈夫だよ”って言ってあげる」
スペックが高くなくても気遣いができれば逆玉の輿も!?
──例えば、逆のパターンで非ハイスペックのほうが成婚が早いっていうのは?
「昔いました。学歴も高くないし容姿も普通だけど、女の子に対してすごく気遣い上手な方がいたんですよ。成婚もかなり早かった。
逆に、そういう方は高学歴でお金を持っている女の子から愛されることが多いんですよ。この人めちゃくちゃ気を遣える! 私に持ってないものを持ってる! って」
──そういうパターンもあるんですね。やっぱりスペックじゃなくて大事なのは思いやりや気遣いですね。
「本当にそうなんです。普段の生活でも言えることで、例えば、上司とラーメンを食べていて、水がなかったら入れてあげるとか。ドアの向こう側に人がいたら“どうぞ”と、ひと言かけて開けてあげるとか。容姿が優れていなくても、学歴がなくても、気遣いができる人は多くの人にモテますよ」
──ちなみに、バチェラーに愛されるためには、どうしたらいいかアドバイスを教えてください!
「具体的にはバチェラーはお嬢様系が好みなんです。バチェラーと結婚したいなら、ぼくは銀座のクラブで修行すべきだと考えています」
──どうして銀座のクラブなんですか?
「高級クラブに訪れるお客様が、バチェラークラスの、いわゆる家柄のいいお金持ちの人が多いからです。クラブで働く女性は、夢や野望を持っている方が多く、(事業資金や留学費用を稼ぐ、女優・声優希望など)そのための自分磨きを怠らない。
経営者からノウハウなどを聞き出し、自分のものにします。会話ひとつにしても、相手のことを考えて話ができるんですね」
──なるほど。たしかに会話術なども含め、学べることが多そうです。
「中には、会話の勉強をするために働くMARCH(※)や国立大卒も多いのです。バチェラーを射止めるなら、“経営者やお金持ちがどのように振る舞うのかを研究するのがいちばん”です」
※首都圏の難関私立大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学の通称。
いないと思っていたバチェラーは実在していましたね。
でも、やはり現実は全然スマートじゃなかったり、相手に対しての要求が非常に多かったりと、マイナス要素が多かったです。
補足ですが、上記に当てはまらないバチェラーも、ごくまれにはいらっしゃるそうで。その場合、どこか抜けてる天然体質で、けれども憎めない。周りから愛されるタイプの男性なんだとか。いわゆる“母性本能をくすぐる”タイプです。
そういう方は、申し込まれたら選り好みせず、選んでもらったらすぐに受け入れて、相手としっかり向き合うそう。
やはり、成婚がすぐに成立しない人は、申し込まれたら申し込まれた分だけ、「もっといい人がいるかも!?」となかなか決められないそうですよ。
でもそれは、バチェラー問わず、どんな人にも言えることですよね……。
(取材・文/桃沢もちこ、編集/本間美帆)
【PROFILE】
横井 睦智(よこい・むつとも) ◎1971年生まれ、岐阜県出身。オタク専門婚活戦略コンサルタント。2012年、日本で初めてオタク・腐女子に特化した結婚相談所・ミューコネクト株式会社を起業。年間相談件数800件以上、入会から11か月以内での成婚率80%の実績を上げる。2016年から2018年にかけて、所属団体にて3年連続で成婚率最優秀の成績を残し、2018年は全国で第3位にランクイン。現在は東京・大阪・名古屋を中心に活動。取材や講演などさまざまなメディアに露出する。著書には『オタク婚活はじめます』(すばる舎)、『ガチオタが1年で結婚できたわけ』(デザインエッグ社)がある。