元号が平成に変わってすぐに生まれた世代は、社会人になって早々「ゆとり世代」という言葉でくくられ、“そんなこと言われたって”……と、自分たちではどうにもできないこの呼び名に、なんとも言えない気持ちを味わった人も少なくはないはず。
そんな中、自身も平成初期生まれで、なんとリスナーは75万人! 人気ポッドキャスト番組『ゆとりは笑ってバズりたい』のポッドキャスター・ゆとりフリーターさんが、自身が遭遇したさまざまなタイプの“しんどい人間関係”を紹介しつつ、対処法を面白おかしく提案する『平成初期生まれは人間関係がしんどい』(ワニブックス)を上梓しました。
今回は本書から、「あるある~」と言いたくなるような共感エピソードとともに、そんな“しんどい人”に出会ったときのクスッと笑える対応策を、一部抜粋して紹介します。
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図々しいお願いをしてくる友情デストロイヤー
突然ですが、クリエイターの皆さん、友達から、「ちょっと作ってよ(絵描いてよ)」
と軽めにお願いされて困ったことはないだろうか?
その制作が、自分の生活を支える仕事になっている場合は特に。
こちらの仕事に理解ある友人であれば問題なく進むかもしれないし、心を許した親友であれば、無償で受ける・断る、どちらの返答をしても今後の関係に支障をきたすことはあまりないだろう。
しかし、親友と呼べるほどではない、しかしただの知り合いと言うには関係性がありすぎる、そんな人から〝今まで個人に仕事の依頼をしたことが無さそう〟な感じで頼まれたら……受けるのも、断るのもちょっと、腰が重くなるのではないだろうか。
お祝いごとトラップ
この「友達からの厄介なお願い」は、あるシチュエーションでよく起こる。
というのも、最近私の周りではいわゆる結婚ラッシュが到来中だ。ここまで言えば、ピンと来るクリエイターも多いとは思うが、そう、結婚式にまつわる「友情依頼」について悩まされる事例をよく聞くようになった。
まず紹介するのは、依頼を受けた側のとあるイラストレーターの友人(以下仮名:絵美ちゃん)の話だ。
前提として、絵美ちゃんはイラストの仕事を本業とし、プロとして働いている。あるとき、友人のそのまた友人であるアイちゃん(仮名)から結婚報告と共に「結婚式用にウェルカムボードを描いてほしい」と頼まれたそうだ。
二人で遊ぶことは無かったけど同じグループで仲良くしていたという関係性。絵美ちゃんは無償で依頼を引き受け、本業の合間を縫って新郎新婦のイラストを描いたそうだ。本業の合間を縫っての作業。ましてやA2サイズのキャンバスに手描きで仕上げるのはかなりヘビーだったと語っている。
しかし結婚式当日、絵美ちゃんは風邪にかかってしまい、やむなく欠席することになった。残念な気持ちもあるが、発送したウェルカムボードで喜んでもらえれば良いなという思いで、報告を楽しみに待つことにしたそうだ。
そんな思いとは裏腹に、結婚式当日はおろか、それ以降も、アイちゃんからは「届いたよ」の連絡すら一切なかった……。
その上、後日、出席した共通の友人には「うっそ! あれ絵美が描いたやつだったの!?」と驚かれる始末だったという。
絵美ちゃんは言う、「せめて、お礼の一言くらいくれ!」
思うに、この事例の場合、絵美ちゃんにとっては、お金の報酬が無いことよりも、気持ちの報酬が得られなかったことへの不満が大きかったのではないだろうか。
お礼の一言ももらえなかったことで、気にしていなかった「無償でやったこと」がより引っかかるようになったと感じる。
もし私だったら、「ウェルカムボードどうだった? (にっこり)」とありがとうの恐喝をしてしまいそうだ。
「仕事と私、どっちが大事なの!!」friendver.
次に紹介するのは、依頼をした側となる結婚式を控えたとある友人(以下仮名:しずこちゃん)の話だ。式の準備で大変そうな様子がうかがえるしずこちゃんは、おもむろにあるエピソードを語りだした。
それは、しずこちゃんが親族や友人各所に結婚を報告して回っている中で、結婚式用のムービーの制作をある友人(以下仮名:ジャイ美)にお願いした話だ。
しずこちゃん「お願いしたら突然、納期は? って言われたんだよね。挙式は半年後だよ~って答えたら、それならスケジュール的に難しいから申し訳ないけど他の人を当たってくれる? って断られてさ!」
私はスケジュール的に難しいのであれば仕方がないと感じたのだが、「ひどくない!?」と言わんばかりの勢いに圧倒され「お、おう」としか答えられなかった。
しずこちゃんにとっては「半年もあれば作れるに決まっている」と思っていたからこそ、第一に『断られた』という事実があまりにもショックだったのだと思う。それに加え、納期・スケジュールなど業務上で使うワードが友達から出たことで、仕事と友情を天秤にかけているように感じ、相手を冷たいと思ったのかもしれない。
そう、まるで往年の恋愛問答、「仕事と私、どっちが大事なの?」が友達間で起こってしまったのだ。
確かに、さっきまで和気あいあいとしていた友達が、仕事が絡んだ途端に態度が一変すると誰だってビックリすることだろう。
「友達だから良いじゃんVS 仕事は仕事」それぞれの気持ち
以上のことを踏まえ、それぞれの立場から見た感覚を私なりに解釈してみた。
友達だから良いじゃん派:「得意そうだしやってもらっちゃお。このぐらいなら2日もあればできるよね?」
仕事は仕事派:「いやいや、構想練って確認してもらって……と考えると2週間はかかるよ。そんな簡単なことみたいに言わないでよ」
……お分かりになるだろうか。
労力への認識のズレが起こっている。
知らないから仕方がないのかもしれない。しかし、聞き方や態度一つでお互いの認識のズレを修正することはできるのではないだろうか。
要件だけでお願いするのではなく、「これってどのくらい時間がかかる?」といった相談の形にしたり、反対に「これだから素人は……」という呆れた態度ではなく、「結構時間かかっちゃうけど大丈夫?」と自分のキャパシティを伝えることが大事だ。公平な話し合いができる関係を築くことが、ズレを修正していくには必要なことと言える。
もう一つ覚えておいてほしい心構えとして、友情依頼を「家(うち)来て遊ぶ?」と誘われたようなものだと認識すること。
依頼(プロジェクト)という名の「お家に入るかどうか」の判断をするのはクリエイター側だ。絵美ちゃんの話にたとえるなら、遊びには行ったが体調を崩して帰ったとすると、その後「大丈夫? 今日はありがとう!」と一言メッセージがあれば何か変わっていたかもしれない。
しずこちゃんの場合では、相手のスケジュールに合わせてもっと前もって連絡していればスケジュールが合ったかもしれない。
反対に、郷に入っては郷に従えという言葉があるように、クリエイターは家に入ったら
(依頼を受けたら)相手の家のルールには従うようにするべきなのではとも思うのだ。「客人にお茶を出すのは常識である」と思ったとしても、強いることはできない。
もうこれはマナーの領域なのである。
それに、人に何かお願いされるということはそもそもステキなことのはず。今では私も、ポッドキャストやイラスト制作などのお仕事を個人でいただくようになり、それをとても実感している。
特に、お金の報酬だけでなく「ありがとうございます」や「こういうところが素晴らしい」とさらに言葉を添えてくれた方と出会ったときは感銘を受けたほどだ。思いやりに満ちたさりげない言葉や所作の一つ一つがとても嬉しく、また頑張ろうという活力となる。
そんな風に、お互いが気持ちの良い依頼生活を! と願っている。
最後に……、攻略のヒケツ
ヒケツ①:制作にかかる時間やそれに伴う精神的カロリーなどを説明する。お願いするときの態度、引き受けるときの覚悟、双方が気をつけよう。
ヒケツ②:制作に取り掛かる前に十分な目的のすり合わせをしよう。
(編集/本間美帆)
【PROFILE】
ゆとりフリーター ◎1995年生まれ。高校卒業後、飲食や販売など接客業を中心に、住み込み農家からスポーツクラブ、バーテンダー、トイレ掃除などアルバイトを転々とした経歴を持つ。2016年、実家の押し入れから音声配信活動を開始。現在は、音声配信・制作を中心にイラスト制作、コラム執筆など、ポッドキャストに留まらないゆとり”クリエイター”として活動中。JAPAN PODCAST AWARDS 2020ベストパーソナリティ賞ノミネート。Twitter→@yutori_radio_、Instagram→@yutori_radio_