フリーランスでも会社員でも、「よい仕事の依頼が絶えない人」と、なぜか「仕事の依頼が、あまり来ない人」がいます。
この違いはどこから来るのでしょう? もちろん、本人の“仕事の質”によるところが大きいと思いますが、実はそれだけではないのです。
今回は、「飲食店の店員への対応」でわかる、「よい仕事の依頼が絶えない一流の人」の違いについての話。
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飲食店の店員への態度に、その人の本質が出る
私の知人で、会社を経営し、本を何冊も書かれている若手起業家の方がこんなことをおっしゃっていました。
「その人の本質というのは、例えば飲食店で店員さんにどんな態度をとり、どんな言葉をかけるかとか、そういうささいなところに表れます。上から目線で店員を見下すような言葉遣いをするような人は、底が知れています」
そういう態度の人、確かにいます。そして、そんな人に限って、会社ではあまり仕事ができないことが多い。周りの社員からも、ちょっと距離を置かれていたりします。
では逆に、誰が見ても一流だと思える、よい仕事が次々と舞い込むような人は、飲食店でどんな態度をとっているのでしょう。
その社長さんは、こんなことをおっしゃっていました。
「私は、レストランなどで食事をするときに、店員の人たちが、“あのテーブルに、また行きたいな”と思ってもらえるようなお客になりたいと思っています」
自分の取引先やお客様だけでなく、食事で初めて立ち寄っただけのお店の店員に対しても、サービス精神を発揮して、“楽しんでもらおう”と思うのだとか。
例えば、居酒屋に入店した際、店員から「何名様ですか?」と聞かれたときに、指を2本立てて元気よく「3名です!」。これだけで、大概の店員さんは笑ってくれると言います。
オーダーのときに、注文を迷ってなかなか決めない人がいたら、「なんかすみません。コイツ、メニューを全部覚えようとしてるみたいで」。これもウケたそうです。
そんな、その場で思いついた冗談を言うだけで、雰囲気が和んで、店員が「あのテーブルのお客さん、面白い」と思ってもらえる。
その社長さんによれば、プライベートであっても常に、そんな“相手を楽しませるオーラ”を身にまとっていることが、ビジネスでも自然と「よい仕事の依頼」を運んできてくれるのだとか。
去り際のたったひと言で、店員の態度が激変
「店員を笑わせるなんて、ハードルが高い」そう思ったあなた。大丈夫です。笑わせるまでしなくても、店員に「あのテーブルに行きたい」と思ってもらうのは簡単なんです。
例えば、水を運んできてくれたときやテーブルを拭いてくれたとき、料理を持ってきてくれたとき、水を注いでくれたとき……。
そんなタイミングで、次のひと言を口にする。
「ありがとう」
そのたった5文字の言葉に神が宿る。これだけで十分なのです。
なぜなら、店員に対して「ありがとう」と言う人はほとんどいないから。多くの人が、お店で店員がしてくれるサービスは“当たり前”だと思っていて、お礼なんて言いません。それどころか、サービスが少し遅れるだけで激怒するお客までいます。
店員からしても、「ありがとう」なんて言われることはめったにないので、それだけで好感を持ってくれます。
言われてみれば、これまでの私の経験でも、料理を運んできた店員に「ありがとう」って言っているのは、一流の人たちばかりだったように思います。
少し前にも、あるカリスマ講師の方と食事をご一緒する機会がありました。決して高いお店ではなく、昼は定食屋、夜には居酒屋に変わるようなお店です。
若い店員がマニュアルどおりの接客をしていて、決して悪い接客ではありませんでしたが、笑顔もなく、私は店員に対してちょっと不愛想な印象を持っていました。
ところが、食事を終えて会計をするとき、その講師の方がレジの店員に、こう声をかけたのです。
「とてもおいしかったです。ありがとうございました」
その言葉を聞いた、それまで不愛想な顔をしていた店員。思わず笑顔になり、ひと言。
「ありがとうございます! またいらしてください!」
ああ、これか……。
これが、仕事の依頼が絶えない人の違いなんだな……。そう思わせてくれる、ひと言でした。
(文/西沢泰生、編集/本間美帆)
【PROFILE】
西沢泰生(にしざわ・やすお) 2012年、会社員時代に『壁を越えられないときに教えてくれる一流の人のすごい考え方』(アスコム)で作家デビュー。現在は作家として独立。主な著書『夜、眠る前に読むと心が「ほっ」とする50の物語』(三笠書房)『コーヒーと楽しむ 心が「ホッと」温まる50の物語』(PHP文庫)他。趣味のクイズでは「アタック25」優勝、「第10回アメリカ横断ウルトラクイズ」準優勝など。