2023年4月にスタートし、好評のTBSラジオ『こねくと』(月曜〜木曜午後1時)のメインパーソナリティを務める電線愛好家・俳優・文筆家の石山蓮華さん。前回の記事では番組の生放送に密着し、楽しい舞台裏をお伝えしましたが、放送終了後、あらためて蓮華さんにインタビューを行いました。
ラジオはTBSしか聴いていなかった
──本日の放送の感想は?
「(曜日パートナーの)でか美ちゃんとは、よく会ってる友達みたいに感じていて、オープニングトークは安心しすぎてしゃべらなくなりそうになったので、来週はもっとしゃべろうかなと。同世代で同性なので、ファミレスでずっとしゃべってる気持ちになりますね」
──番組がスタートして1週間たちましたが。
「1週間たったなりの慣れ方をしているなと。初週はもっと緊張していた部分が、1週たって同じことをすると、あまりビクビクせずにできるようになった部分が増えた気がします」
──具体的には?
「時報までにうまく(コーナーを)まとめるというのが、初週は全然できなかったんですが、でか美ちゃんが協力してうまくまとめてくれたのがとても心強かったです。ゆくゆくは時計を見ずに、感覚でできたらいいですね」
──あらためて、曜日パートナーさんの印象を教えてください。
「月曜の菅(良太郎)さんは本当に優しくて、どっしりと構えていてくださってます。私が(プライベートで同居している)パートナーについて話したときに、“あっ、石山さんがうっかり言っちゃったのかな”と察して、友達ですね、と言い換えてくれたり。その後、“隠さずに話そうと思っているんです”と言ったら、そこを尊重してトークに乗せてくださいました。週の初めってどうしても『よし、頑張らなきゃ』という感じがあるんですけど、菅さんと一緒だと、穏やかに“いい風”を楽しんでいける気がします。
火曜のでか美ちゃんはとにかく機転が利く方。町山智浩さんを相手にしても、ツッコむべきポイントでは嫌味なく愛を持って『ジジイ』と言える。この絶妙なバランス感覚を持つ人ってなかなかいないと思います。でか美ちゃんがパートナーで本当によかったです。
水曜の東京03の飯塚(悟志)さんは面白くて、温かい方です。(コントでは)ツッコミ役の方なので最初はビビっていたんですが、初週からすごく楽しくて、ケラケラ笑っている間に終わっちゃいました。初週の放送前には、シャケのおにぎりを食べていたのをジェーン・スーさんにイジられるという可愛らしさも持つ先輩ですね。
木曜の土屋礼央さんは、もともと(出演していた)ラジオをずっと聴いていたこともあって、勝手に『よく知っている人』という印象。ラジオリスナーって話し手との気持ちの距離感が近くなる気がするので、ついつい『近所の礼央さん』みたいな感じでお話しできます。礼央さんには“ツッコまれてこそ生きるよさ”があると思うので、ラジオの大先輩ですが、これからは私からもツッコめるような関係性を築けたらいいなと」
──聴いていたラジオ番組を放送前にいくつか挙げてくださいましたが、やっぱりTBSが多かった?
「(きっぱりと)逆にTBSしか聴いてなかったですね」
──TBSラジオならではの魅力ってありますか?
「そうですね……やっぱりあったかいというか、私にとっては安心して聴けるんですよね。話し手の感覚だったりとか、リスナーとパーソナリティとスタッフ、みんながひとつのクルーになって、ラジオを楽しんでいるのが番組の中から聴こえる気がして好きです。
ラジオを聴くことが習慣になっていて、家事をするときなどに“このコーナーが始まったら次は洗濯しようかな”みたいな感じで、生活になじんでいます。耳で聴きながら1日を伴走してくれるメディアだと思いますね」
パーソナリティに選ばれた理由は「ヒマそうだったからかな」
──そんな大好きなTBSラジオの昼の顔に抜擢されました。
「本当にすごくビックリして……信じられなかったです。TBSさんから詳細を聞かされずに呼ばれて。何かの番組のコーナーで打ち合わせがあるのかな? とか、新企画オーディションの面談かな? と思っていたら、まず『たまむすび』が(2023年)3月で終わると聞かされ、リスナーだったのでショックを受けて。
続けて“4月からの新番組を石山さんに”と言われて、“えっ?”となって。そこから選定理由をいろいろ伺ったんですが、頭が真っ白になってしまって覚えてないんです。ぜひぜひやりたいと思いつつ、ボーッとしてましたね」
──なぜ自分が選ばれたと思いますか?
「なんでですかね……ヒマそうだったからかな(笑)。なんかイイ感じにピンと来たんでしょうね。“石山さんなら大丈夫だと思いました”と言っていただいてうれしかったし、夢かと思いました。家でもずっとTBSラジオを聴いていたので、耳になじんでいる“流れ”に包まれて働けるというのもすごくうれしかったです」
──番組に向けて、新しく始めたことはありますか?
「(もともと聴いていた)月~金の番組をより聴くために小型ラジオを買いました。体力をつけようと通っていたジムも、(TBSがある)赤坂から通いやすい場所に変えました。今はまだお風呂とサウナしか使ってませんけど(笑)。
あとはツイッターのエゴサ(エゴサーチ)をやめました。でか美ちゃんやプロインタビュアーの吉田豪さん、舞台でご一緒した三四郎の相田(周二)さんたちに、“自分の名前に《ちゃん》とか《さん》がついていると、あんまり悪いことは書かれてないから、どうしても気になるならそうやってフィルタリングして調べるといいかも”とアドバイスをもらいました。活躍する人が3人も同じことを言うのなら間違いないぞと思います」
──特定の分野に長けた専門家の方をゲストに呼んでお話を聞くなど、アカデミックなコーナーが多い印象を受けました。
「私が電線愛好家ということにちなんで、『愛好家同盟』というコーナーを水曜に作っていただきました。私の友人でもあるマニアの方をお呼びすることもありますが、マニア同士って、自分の愛好する対象について話すときもあれば、特に話さなかったりするときもあるので、新鮮にいろいろ聞ける機会になるかなと思います」
──電線に絡めたコーナー企画をやりたいとかはあります?
「電線について積極的に触れていきたいというのはあるんですけど、電線のことを話すと時間を忘れるので、たぶん2時間半の放送が電線の話題で終わっちゃう気がして。だから今はまだ封じてます」
──以前にお話を聞いた際に、「電線のアンソロジー本を作りたい」と語られていましたが、番組開始をきっかけにその夢は広がりました?
「サブリミナル的に電線のよさを広めていけたらなと。礼央さんには電線のよさを理解していただいたんですが基本的に“無電柱”派なので、それをゆっくりゆっくりひっくり返していきたいです」
生活に伴走する番組を届けられるパーソナリティに
──目標やお手本にしているパーソナリティはいますか?
「真似しようとしてもできない人が多くて……赤江珠緒さんやスーさん、宇多丸さんとか、ずっと聴いていた番組のパーソナリティの方から学べることもたくさんあるので、これからもTBSラジオを聴いて、どんどんよいところを学んでいきたいです」
──ラジオ生放送の醍醐味は何だと思いますか?
「毎日決まった時間で決まった場所に、必ずパーソナリティ本人がマイクの前でしゃべることかなと。毎日の天気や社会情勢、体調や環境の変化とかいろいろある中で、今日もマイクの前で話してくれるのは、リスナーとして勇気づけられるところがあります。
理想としては、生活に伴走する番組をお届けできるパーソナリティになりたい。私も、できるだけ体調に気をつけて、リスナーのために他愛もない話をしていければ」
──最後に、「こねくと」の魅力や今後の抱負を。
「“番組の立ち上げから聴ける”というのが魅力ですかね。リスナーさんもパーソナリティもほぼ初対面の状態からスタートしたので、その関係性や雰囲気がどんなカルチャーに育っていくのかとか、変化や成長を一緒に楽しんでいきたい。
誰かの『教えて!』と誰かの『知ってる?』をつなげるというのが番組コンセプトなので、リスナーさんとパーソナリティとの距離を、LINEのオープンチャットやメールも使い、のんびりとポジティブにつなげていきたいです。
番組イベントもやりたいですね。場所を変えてリスナーさんのお顔を見ながら公開収録とか、月曜コーナーの『菅、コーヒー買ってきて!』で私が探してもらった本(『パティの宇宙日記』)の読み聞かせ会とか(笑)。リスナーさんとフランクに会える間柄でいられたらいいですね」
大役のプレッシャーを感じさせないノリのよさ
生放送を見学して印象的だったのは、蓮華さんがとにかくノリのいい方だなということ。トーク中の笑顔はもちろんのこと、驚いたときも手を広げて大きくのけぞれば、でか美ちゃんが「こねくちょん」テーマ「寝床、どこ?」に引っかけて振った、お笑いコンビのジョイマンのラップネタを真似しておどけてみせる。
そのノリのよさは、YouTube生配信でも伝わると思いますが、蓮華さんは放送前にスタッフと打ち合わせや談笑をしているときも、生き生きとしたリアクションが目立っていました。
「次の日が楽しみ」「とにかく1週間ずっと“楽しい、楽しい、楽しい、楽しい”という気持ちになれるのがスゴいなと」
お話を聞いた際に、蓮華さんからよく出てきたフレーズが「楽しい」。帯番組のメインパーソナリティという大役を任されたプレッシャーも生半可なものではないと思いますが、それよりもまず、彼女自身が本当に「楽しんで」ラジオに参加していることが、手に取るように伝わってきました。
「どちらかというと口下手で緊張しい」と語っていたものの、以前に電線愛好家としてインタビューしたときから思っていたのが、蓮華さんは実に頭の回転が早く、話し上手だということ。1つの質問にも、必ず2つ、3つの返答をしてくれるので、聞き手も質問のバリエーションが増えて、キャッチボールのような会話になる。
ノリがよくて、頭の回転も早いからトークも広がる。そして何よりもラジオ愛にあふれている──蓮華さんが『こねくと』のメインパーソナリティに起用されたのも、運命かつ必然だったのかもしれません。
(取材・文/松平光冬)
《PROFILE》
石山蓮華(いしやま・れんげ) 1992年生まれ、埼玉県出身。電線愛好家・俳優・文筆家。電線愛好家として『タモリ倶楽部』などのメディアに出演するほか、2022年より日本電線工業会公認「電線アンバサダー」としても活動。俳優として舞台や映画、CMなどに出演中。文筆家として「電気新聞」「ウェブ平凡」などに連載・寄稿。晶文社より読書エッセイ『犬もどき読書日記』を刊行。最新刊エッセイ『電線の恋人』(平凡社)が好評発売中。