「ベビースターラーメン」といえば、スーパーやコンビニのお菓子売り場で必ず見かけるお菓子のひとつ。近年だと2017年のキャラクターの世代交代を覚えている人も多いのでは? 2代目の「ベイちゃん」の引退が発表されるとネットは大騒ぎ。Yahoo!ニュースで大きく掲載されるほどでした。
最近はほかの企業とのコラボにも積極的で、お菓子売り場以外でも見る機会が増えています。60年以上の歴史を誇る老舗ブランドは、時代の変化に合わせてどう進化しているのでしょうか?
そこでベビースターラーメンの生みの親、株式会社おやつカンパニーの社員にインタビュー! 今回は、広報の諸岡亜由美さんにベビースターラーメンの誕生のきっかけや知られざるフレーバーの歴史などを聞きました。
“麺のかけら”から生まれたベビースターラーメン
──ベビースターラーメンは最初からあの形だったのですか?
「そうなんです。当社はかつて製粉・製麺業を営んでおり、即席麺の天日干しの工程で出る“麺のかけら”をもったいないと思った創業者が、従業員のおやつにアレンジしたのが始まり。ベビースターラーメンのプロトタイプのようなものが生まれて、その後、製品化したのが1959年です」
──当時から、あの味ですか?
「そうです。チキン味と呼ぶようになったのは、1988年のリニューアルで味のバリエーションが増えたタイミングですが、そのときはもう“ベビースターといえばあの味”と広く浸透していたと思います。
ただ、ベビースターラーメンのチキン味については、実はかなり細かく味の改良を続けています。誰もがわかるように大きく変えることはないのですが、気づかれない程度のバージョンアップを結構、頻繁にしています」
──そうなんですか!
「おそらく改良前のものと今のものを食べ比べても、それほど大きな味の変化は感じられないと思いますが、もし発売当初のものや数年前のものと食べ比べたとしたら、かなり違うはずですよ。例えば塩味を控えめにして、旨みやコクをしっかり感じられるようにするなどの改良をしています」
──どうやって味の方向性を決めているのですか?
「時代によって好まれる味の傾向も変わります。また、ベビースターラーメンの購買層は子どものころから食べ、慣れ親しんだ40代の方が多いのですが、年齢を重ねたことによる味覚の変化もあると思いますので、そこに合わせることも考えます。もちろん、変わらぬ味を守り続ける姿勢もあると思うのですが、私たちはその時々で、もっともおいしい味を追求しています」
思いつくようなフレーバーは「ひと通り開発済み」
──チキン味以外のフレーバー展開はいつから始めたのですか?
「発売から約30年間、チキン味ひと筋だったのですが、1988年に大規模なリニューアルを実施し、キャラクターやパッケージを刷新しました。そのタイミングで、カレー味とみそ味という新たな味のバリエーションを増やしました。おいしさに加えて、選ぶ楽しさもお届けしていこうということになったのです。
現在の定番の味は、『ベビースターラーメン(チキン味)』『ベビースター焼そば(ソース味)』『ベビースターラーメン(うましお味)』の3種類で、あとは期間限定のフレーバーですね。カレー味やみそ味は期間限定で再登場することもありました」
──これまでにどれくらいの味を開発してきたんですか?
「よく聞かれる質問なのですが、数えてこなかった、というのが正直なところです(笑)。ただ、新商品の開発には積極的な会社でして、会社全体としては週に1つは新商品を出しているようなペース。ベビースターラーメンシリーズとしては、2022年は春夏用と秋冬用で年2回、各2フレーバーずつ発表しています。秋冬の新作は、『ベビースターラーメン(とんこつしょうゆ味)』と『ベビースターうどん(かつおのだし味)』です」
──うどんって、もはやラーメンではないですね。
「それをいうと、定番3種のひとつも焼そばですから。もともと製麺業を営んでいたので、ほかの麺を開発するノウハウもありました。過去にはベビースターブランドで、冷やし中華味やパスタ味を作ったことも。パスタはミートソース味やカルボナーラ味、明太子味など、定番はひととおり作っていますね。
ほかにも、鍋やすき焼きのような麺以外の料理の味も販売しましたし、甘いチョコレート味の『ショコラ ベビースター』も好評でした。おそらく、みなさんが思い浮かべるような料理や味は、試作段階までであれば、ほとんどすべて作ってきたはずです」
──すごいですね。ネタ切れになりませんか?
「たしかに出つくしてきた感はありますが、世の中のブームなど市場調査も参考に企画立案をしています。ぜひ新しい味を楽しみにしてください」
歴代キャラクターにはそれぞれの役割がある
──パッケージも変わってきましたね。
「初めての大きなリニューアルは、発売から約30年たった1988年です。ちょうど昭和から平成になり、売り場も駄菓子屋さんからスーパーマーケットやコンビニに移ってきたころ。それで駄菓子屋さんで映えるオレンジ色から、スーパーマーケットなどの蛍光灯の店内照明の下でも目立つ白を基調としたデザインにしました」
──合わせて新キャラクターも登場しました。
「初代の女の子のキャラクターには名前がなかったのですが、2代目は『ベイちゃん』と名づけました。実はベイちゃんはフレーバーによって衣装を変えていたんですよ。カレー味だとターバンを巻いていたり、みそ味だと着物を着ていたり。字が読めない小さなお子さまにも味をイメージしてもらうためのアイコンでもあったんです」
──そうなんですね! 現在のキャラクター「ホシオくん」のデビューは2017年でしたね。
「ちょうど前回のリニューアルから30年がたつころです。やはり30年たつと客層や時代も変わります。キャラクターやパッケージはその時代のお客様の感性に合ったものにしていく必要があるとの考えから、再びリニューアルを行いました。
2017年は、モノ消費よりコト消費に重きが置かれるようになったころ。ベイちゃんには味やおいしさを伝えてもらっていましたが、そこはしっかり伝わっただろうと考えて、ホシオくんにはベビースターラーメンを食べたときのワクワク感や楽しさ、喜びなどを表す役割を担ってもらっています」
──キャラクターの世代交代への反響はいかがでしたか?
「2016年にベイちゃんが引退宣言をすると、Yahoo!ニュースにも大きく取り上げられ、多くの人に愛されていたことを実感しました。ホシオくんの名前は、SNSで募集し、4万7000件以上の応募の中から選びました。ベビースターラーメンの商品名には、“子どもたちのおやつの中で一番になるように”という願いが込められているのですが、その思いを表現してくれている名前です」
苦労して開発した3つの兄弟ブランド
──ベビースターラーメンには『ドデカイラーメン』『ラーメン丸』『ラーメンおつまみ』という兄弟ブランドがありますね。
「3ブランドとも、1999年に誕生しました。ベビースターラーメンは食べるときにどうしてもポロポロとこぼれてしまいます。それも文化だと思っているのですが、お客さまからは“食べづらい”という声もあり、それに応えて開発したのが幅広の『ドデカイラーメン』やひとくちサイズに固めた『ラーメン丸』です。
もうひとつの『ラーメンおつまみ』は、店頭で缶ビールとベビースターラーメンを一緒にお買い求めになる方を見て、かつて子どもだったお客さまも年齢を重ねていることを実感。おつまみとして食べるという新たな食シーンに合ったブランドを展開しようということになりました」
──開発にはどれくらいかかったんですか?
「正確にはわからないのですが、かなり時間をかけたようです。たとえば『ドデカイラーメン』は、一見すると麺が横につながっているように見えるのですが、実は溝をつけてそう見せています。開発当初は、きしめんやうどんのような太い麺を作ろうとしていたのですが、きしめんタイプは薄いので生地が膨張して割れてしまい、うどんタイプは厚みがあるぶん、中まで味がしみこまなかった。あれこれ試行錯誤する中で、たどりついたのが溝をつけるという方法でした。これだと表面積が多いので味もしっかり出せて、かつベビースターラーメンらしい麺のイメージも保つことができます。
ひと口サイズの『ラーメン丸』も、雷おこしのように甘い味つけで固める製法はあったものの、しょっぱい味つけで固める方法がなかなか見つからず、ほどよい硬さに仕上げるのに苦労したと聞いています」
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60年以上の歴史を誇るベビースターラーメン。そこには老舗ブランドの冠に甘んじず、常に進化し続けるチャレンジングな企業姿勢がありました。第2弾記事(11/6 17:00公開)では、最近のコラボ事情やSNSで話題の“麺文字”など、ユニークな取り組みについて聞いていきます。
【第2弾:『ベビースターラーメン』が“カップ麺”に続き、“スニーカー”を発売! 異業種とのコラボに積極的になった理由とは】
(取材・文/古屋江美子)