進学・入社シーズンの4月。この春、環境を大きく変えて新生活をスタートさせたという人も多いのではないだろうか。
そんな中、特にひとり暮らしを始めたばかりの女性にとって気がかりなのが、在宅時や帰宅時の「防犯対策」だ。ひとり暮らしの女性を狙った悪質なストーカー行為などの事件は後を絶たず、中には命が奪われてしまったケースもある。
そのような事件に巻き込まれないために今回、日本初の警備保障会社として60年以上にわたり防犯対策やセキュリティ、警備に関するサービスを提供してきたセコム株式会社に取材を実施。コーポレート広報部の坂井有紀子さんと、菅原涼子さんに、外での歩き方・もし不審者に遭遇したらどうするべき? など、「家に帰るとき」にできる女性の防犯術について詳しく伺った。
防犯対策の大前提は「事前の確認と準備」 帰路につくときできること
──この4月から、新たな環境で生活を始める女性は多いと思います。まず、防犯対策の大前提となる考え方は何ですか?
菅原:最も大切にしていただきたいのは「事前の確認と準備を徹底すること」です。新しい家の帰宅ルートで危険な場所はないか? 避難できる場所はどこなのか? ということをあらかじめしっかり確認し、もし危ないポイントがあれば、対策を考えておく必要があります。
──なるほど。その前提を持ったうえで、改めて具体的なシーンごとにお聞きします。「帰宅時」に女性が確認しておくべき点はどのようなものがあるでしょうか?
菅原:まずは帰宅ルートの様子を、昼と夜で時間帯を変えて確認していただきたいです。特に夜は暗い場所や人通りの少なくなりそうな場所がないかをチェックしてください。もし危険なポイントがあった場合は、24時間営業のコンビニやドラッグストアなど、万が一の際に逃げ込める場所を正確に把握しておくとよいでしょう。
例えば暗がりで誰かに急に抱きつかれたなど、何かあった際は気が動転してしまい、110番通報ができないこともあります。ただ走って逃げることだけで精いっぱいなとき、必ず人がいて「助けて」と言える場所があるのは安心材料になります。
──帰宅時の歩き方で、工夫できるポイントはありますか?
菅原:ふたつあると思います。1つ目が、貴重品の入ったカバンの持ち方です。本当に単純な話なのですが、カバンを道路側ではなく歩道側に持つだけでバイクや自転車に乗った人から取られにくくなり、防犯面でのリスクを大きく下げることができます。
2つ目は、自分の防犯意識の高さを周囲がひと目見てわかるようにアピールすることです。例えば、防犯ブザー。女性はカバンの中に入れて持ち歩く方も多いのですが、カバンの外側の目につきやすい部分につけるだけで、防犯意識の高さを周囲に知らしめる効果があります。
坂井:あとはスマートフォンを見たり、音楽を聴いたりと、最近は「ながら歩き」をしている方も多いのですが、注意力が散漫になって周囲の異変に気づけない可能性があるため、やらないほうがよい行動のひとつです。
──歩き方ひとつとっても、できる対策がいろいろとあるのですね。
坂井:そうですね。さらにストーカー対策という意味では、帰路でどんな人に見られているかわからないため、できる限り毎回同じ道を通らないで帰る、帰宅時間をなるべく分散させるといった方法も有効だと思います。
──「どんな人に見られているかわからない」というお話で思い出したのですが、以前、「ひとり暮らしの女性がアイスを1個だけ買うのは、自宅が近いと教えてしまっているようなもので危険。やめたほうがいい」というアドバイスをSNSで見たことがあります。帰路で買い物をする際、気をつけたほうがいいことはあるのでしょうか。
菅原:“買い物”に限って注意するべき点でいうと、中身が見えないような素材のエコバッグを使うのもひとつの方法ではないでしょうか。買ったものが見えない袋で持ち歩けば、アイスをひとり分買って帰ったとしても中身が見えないため、帰路で危険な目に遭う確率は下げられるように思います。
もしも不審者に遭遇したら、どうすべき?
──駅や帰宅の道中で、こういう人がいたら不審者だと思って気をつけたほうがいいという特徴は何かありますか?
菅原:外見的な特徴というよりも、人の視線を感じたときは十分に気をつけていただきたいです。私自身が体験したことなのですが、以前ひとり暮らしをしていたとき、薬局で買い物をしていたところ、視線を感じたことがあって。
変だなと感じて、その人のいる場所から別の商品棚へと移動したのですが、どれだけ私が移動してもその人がついてきたんですね。これは危険だと思い、即座に買い物をやめて、たくさんの人が集まる駅ビルへと移動しました。その人の存在に気がついていることを示すため、人のいる場所であえて立ち止まったりもして。幸い何事もなく終わったのですが、少し怖い思いをした経験でした。
先ほど坂井からもあったように、こういった異変に気づくためにも、ひとりのときは「ながら歩き」を控えたほうがいいでしょう。不審者がいることすら気がつかないことは非常に危険です。
──それは怖い……! 起こらないことを願いたいのですが、いざ不審者に遭遇して被害に遭いそうになってしまったときはどうすべきでしょうか。
菅原:まず1つ目は、戦わずに逃げること。これが大前提です。正義感の強い人は不審者を見つけると戦おうとしてしまうかもしれないのですが、相手はどんな人かわかりません。相手が男性であれば力も強いし、凶器を持っている可能性だってありえます。無事でいるためにも戦わずに、できるだけ人が多くいる場所へと逃げていただきたいです。
2つ目は、周囲に助けを求めるために、防犯ブザーを鳴らしたり、アプリで音を鳴らしたりすることも大切です。もし防犯ブザーなどが手元にない場合には、「助けて」と大きな声を出して助けを求めてください。
できる対策をしたうえで、やむなく被害に遭いそうになってしまった際は、ぜひこの2点を思い出してほしいです。
坂井:走って逃げる必要がある場面を想像すると、帰宅時の靴は可能な限り歩きやすいものを選んでいただけるとよいのではないでしょうか。防犯につながるうえに、震災等で帰宅困難者になってしまった場合の対策にもなると思います。
◇ ◇ ◇
後編では、「家にいるときにできる防犯術」について聞いていく。
【後編→居留守はNG! 空き巣のほとんどは5分を越えると諦める。この春ひとり暮らし女性の“在宅時の防犯対策” 】
(取材・文/市岡光子、編集/FM中西)