マスクの着用が個人の判断に委ねられるようになり、実質的なマスク解禁から、早くも2か月がたちました。
実態としては、マスクをつけている人の割合がまだまだ多いようですが、IT企業の調査(リーディングテック社によるマスク着用の調査)によると、“顔を見られるのが恥ずかしい”という理由が、女性を中心に約3割を占めています。
しかし、実はマスクをつけることで、「人との出会いや、ビジネスチャンスを逃している」と話すのは、テレビ番組などでご活躍している、印象評論家・美有姫さん。
今回、美有姫さんに「マスク依存」から抜け出す方法や、その利点について伺いました。
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コンプレックスと準備不足をごまかしてくれる「マスク」
──感染予防の理由がメインではありますが、マスク着用が個人判断に委ねられるようになっても、まだまだマスクをつけている人が多いと、先日ニュースで取り上げられていました。マスクを外さない人々の深層心理について、ふたつの理由があると言います。
「ひとつめは、“準備不足の習慣化”です。例えば、顔のひげを剃るとか、メイクをするとか、いままでなら人と会うときには準備していたことが、マスクをすればやらずに済む。簡単に気が抜けるようになりました。
ふたつめは、“コンプレックスの隠蔽化”です。ニキビやしみ、歯並びなど、自分がコンプレックスに感じていたことを、マスクがあれば覆い隠せることに気づいてしまったことです」
特に、オンラインでの打ち合わせや授業で、自分の顔を目にする機会が増え、「よりコンプレックスな点を意識をするようになった」と言います。
いちばん見られる顔のパーツは「目」と「口」
──「顔を見られるのが恥ずかしい」とのことですが、人は、主に顔のどの部分(パーツ)を意識して見ているのでしょうか。
「人がすぐに目にしてしまうのは、“動くもの”です。例えば、最近街中にある看板がデジタルサイネージになって動くようになり、通常の看板広告よりも、明らかに目に留まることが多くなったはずです。
人の顔もいちばん動くパーツに目が行きます。いちばん見られることが多いのは、まず“目”です。目は普段から瞬きをしますし、感情が現れたときに大きく開いたり、細めたりするはずです。眉毛も目とともに動くので、目に留まります。
以前、製薬会社と一緒に研究したときにわかったのは、9割以上の人が、他者をまず最初に確認する部位が、やはり“目”でした。
次に見るのは、しゃべるときに動かすことが多い“口元”です。口をしっかり開いてしゃべる人は、口と同時に頬も動かすので、そこも見られます」
この結果を見ると、他人からよく見られる“口”などのパーツをマスクで隠したがるのも、無理のないことかもしれません。
「でも、他の顔のパーツを意識して見せることで、過度に口元に注目されず、好印象を与えたり、ポジティブな雰囲気を感じさせることもできる」と、美有姫さんは言います。
コンプレックスに注目されず、好印象を与えるには?
──そのパーツは、いったいどこなのでしょうか。
「それは“おでこ”です。“童顔に見せたいからおでこを隠す”とか“しわが気になるから隠す”という人がいるんですけど、目や口ほどは見られていません。それに、おでこを隠すことで、“隠し事をしている”とか“自信がなさそう”というイメージがついてしまいます。
そこで“眉間”と言われる、おでこの真ん中の部分を見せると、自信や社交性のある雰囲気、そして“相手に心を開いている”という印象を与えることができます。そのため、就職活動はもちろん、接客業でも、好印象を与えたい場面や職業に就く人は、おでこを見せることが一般的になっています」
──もうひとつ、「他者との円滑なコミュニケーションに欠かせない“口元”をマスクで隠すことで“損”をしている」と、美有姫さんは言います。
「マスクを外すと、白い歯による爽やかさや声のとおりと、 隠れていた頬の肉の盛り上がりなどが確認できます。特に頬の持つ力はすごく、ニューヨーク大学の研究ではたった1/300秒(シャッタースピードほどの速さ)で、頬が盛り上がっている人を信頼してしまう研究結果もあります。
頬を隠すことで、信頼してもらえる機会を逃すリスクに、早く気がつくべきだと思います」
印象評論家が教える、一瞬で印象を変える方法
しかし、そうは言っても、顔を見せる自信が持てない中で、すぐに勇気を振りしぼって行動に起こすのは難しいものです。
そこで、美有姫さんが提案するのが、『パワーポーズ』といわれるエクササイズ。サッカーでゴールを決めた後に誰もがやる、拳を振り上げる「ヤッター」のポーズです。
「このポーズは、ラッキーなことが起きたときや楽しいときに、自然とできます。ですから、絶好調の自分をイメージして、鏡に向かって“調子いいぞ!”“カッコいいぞ!”“イカしてるぞ!”“かわいいぞ”と声をかけながら、やってみる。
“今日は楽しいんだ”と、一瞬でいいので自分を思い込ませる行動が大事です。そうすれば、自信のある顔つきになり、印象も変わってきます。
感染予防というデリケートな部分はあるにしても、人とのコミュニケーションにおいては、「マスクを外したほうが、心を開いて向き合っている姿勢が相手に伝わり、安心感を与えることができる」と話す美有姫さん。
安心感を与えることができる人には、人が集まってきます。よい印象を与えられ、ビジネスや出会いのチャンスも増えていきます。
話し下手や自分の顔に対するコンプレックスを感じてマスクが外せないという人は、マスクを外す機会を、運気を変えるチャンスにするのも、ありかもしれません。
(取材・文/西谷忠和、編集/本間美帆)
【PROFILE】
美有姫/重田みゆき(みゆき/しげた・みゆき)インプレッションマスター(Rマーク)。東京都出身。国際線客室乗務員、都内老舗ホテルVIPラウンジマネージャー社長室室長を経て、人の印象を変えるインプレッショントレーニング(Rマーク)を開発、国内外で大人気に。アメリカ合衆国 ニューヨーク州ベスト・オブ・マンハッタンを7年連続受賞し、2017年「マンハッタン・ビジネス殿堂入り」を果たす。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科教授。『ホンマでっか!?TV』印象評論家。著書『顔グセの法則』(ダイヤモンド社)『人は0.5秒で選ばれる!』(ダイヤモンド社)はアジア各国で翻訳出版中。TikTokerとしても国内外で話題沸騰中。
・MYK(重田みゆき教授ゼミ亜細亜大学)公式ホームページ:https://www.myk.today/