リモートワークが増えた現代において気になる、「在宅時の防犯対策」。世間では集団強盗事件が相次ぎ、この春ひとり暮らしを始める女性やその親御さんの心配は尽きない。空き巣や在宅中の訪問者対応のトラブルを防ぐためにできることは? “不審者を寄せつけない家づくり”とは? セコム株式会社の坂井有紀子さんと、菅原涼子さんに取材を行った。
【前編→入学・入社シーズン。この春、ひとり暮らしの女性が“帰宅時の防犯対策”で気をつけるべきことは? 】
ひとり暮らし、居留守や窓の開けっ放しはNG!空き巣や不審者はどこを見ているのか
──ひとり暮らしの在宅時の防犯術についてお聞きしたいと思います。まず、どのような家が狙われやすいのでしょうか。
菅原:今回はひとり暮らしというお話なので、前提として集合住宅を想定して回答しますね。ポイントはいくつかあるのですが、まずは植栽などで死角があり、外から見通しの悪い部屋は狙われやすい傾向があります。2階や3階の部屋でもバルコニーなどに足場になるものがあると侵入しやすくなってしまいます。
空き巣の心理としては、明るい道路に面していて、きれいに管理されている集合住宅は入りづらいようです。
──インテリアの配置など、「家づくり」の観点からできる対策はありますか?
菅原:ひとり暮らしの家の場合、外から見たときに「女性が住んでいる」とわからなくすることが大切です。
そのため、窓辺に女性らしいアイテムを置かないというのは対策になると思います。そのほかに、カーテンを緑や茶色など中性的な色にする、可愛らしい置物やぬいぐるみは部屋の中心部に飾るといったことに気をつけるだけで、女性が住んでいるのか判断できない部屋をつくることができます。
坂井:意外と盲点になりやすいのが玄関です。宅配業者などの来訪者が来た際に、女性のひとり暮らしだとわからないほうが安心です。そこで、玄関周りにも可愛らしいアイテムを置かないようにする、男性用の靴を置く、部屋の中が見えないようドアを閉めるといった対策をとるだけでも防犯リスクを下げることにつながります。
菅原:あとは空き巣などの泥棒は窓からの侵入も非常に多いため、窓ガラスに防犯フィルムを貼るのも有効な対策です。防犯フィルムは窓ガラスが完全に割れてしまう時間を遅らせるアイテム。空き巣は侵入に5分以上かかる家は諦める傾向にあるというデータもあるため、万が一自宅を狙われても盗難に遭うリスクは下げられます。
ただし、賃貸住宅の場合には防犯フィルムを貼り付ける前に、必ずオーナーや管理会社などに確認するようにしてください。
坂井:窓に補助鍵も設置すると安心です。賃貸の場合、補助錠を付ける際は防犯フィルム同様に事前にオーナーや管理会社などに相談が必要になりますが、窓の上部につけると空き巣も鍵を開けづらくなるため、効果が高まります。
家にいるときにできる防犯対策
──自宅にいるときの対策で意識すべきことはありますか?
菅原:自宅の防犯対策で大切なのは、「留守であること」「女性のひとり暮らしであること」を悟られないことです。
留守を悟られないためには、洗濯物を夜遅くまで外に干さない、タイマー式の照明などを使う、ドアスコープにカバーなどをつけて外から覗かれないようにするという方法が考えられます。
また、女性のひとり暮らしであることを悟られないためには、帰宅時に「ただいま」と声を出す、何着か男性用の洋服をストックしておいて洗濯をするときに一緒に干すといった対策があります。
また多くの方はご存じかもしれませんが、玄関で来訪者に対応する際、ドアチェーンはつけたままにしたほうがより安全です。最近は宅配業者を装った不審者も発生しています。何か予定外の訪問があった際は、基本的にドアは開けず、インターホンで対応を済ませるようにしておくと安心かと思います。
──宅配便であれば最近はコンビニや宅配ボックスでの受け取りを選べるので、より安心になりましたよね。でも、よくわからない来訪者の対応は、怖い思いをするくらいなら、居留守で済ませたいと感じてしまいます……。
菅原:いえ、居留守は実は危険な行為なんですよ。
──え! そうなんですか?
菅原:インターホンに反応しないことで、侵入者がこの家は留守だと判断して、侵入しようとするかもしれません。在宅時に侵入者と鉢合わせてしまう危険性があります。
坂井:大半の侵入者は事前に下見と確認をしますが、そのひとつがインターホンでの不在確認です。私が以前担当したお客様にも、自宅で寝ていたときにインターホンに対応できずにいたら、窓ガラス越しに侵入者と鉢合わせてしまったという方がいらっしゃいました。ついついやってしまいがちな「居留守」は使わずに、インターホンできっちりと対応することが実は大切な防犯術なのです。
──居留守が実は危険につながる行動だったとは、知りませんでした! 侵入者は下見をするというお話がありましたが、もしかしてゴミの出し方も気をつけたほうがよいのでしょうか?
菅原:そうですね。ゴミは個人情報の宝庫で調べられるといろいろなことがわかってしまいますから、なるべくゴミ収集の時間に合わせて朝に出したほうがいいです。
あとは意外とやってしまいがちなのが、ゴミ出しなどの“ほんの数分”の外出時に施錠をしないこと。これは危険です。空き巣の侵入は、無施錠が理由であることも多いんですね。「1分以内の外出なら大丈夫」「オートロックだから大丈夫」と過信せずに、家を出るときは鍵をかけることを徹底していただけたらと思います。
坂井:高層階で足場がないから外からの侵入はないと思われても、集合住宅の場合、屋上から紐を吊るしてクモのように下層階に侵入するケースや、ほかの部屋からベランダを伝って侵入するケースも多いので注意が必要です。
また、小さい窓であれば開けていても大丈夫かというと、そうではありません。侵入者によっては関節を抜いて身体を滑り込ませることで、30センチ以上の幅があれば侵入できてしまいます。どんな窓も開けっ放しにせず、施錠しておく。基本中の基本ですが、重要な防犯対策です。
「オートロックで、網ガラスだから大丈夫」は危険!
──ほかに気をつけておいたほうがよいポイントはありますか?
坂井:窓に関連して、網の入った窓ガラスは防犯になると思われるかもしれませんが、これは「防火ガラス」といって火災があったときにガラスが飛散するのを防ぐもので、防犯を目的につくられたガラスではありません。鈍器で叩けば簡単に割れてしまうので、防犯フィルムを貼るなどの対策をすると安心です。
菅原:エレベーターの乗り方についてもお話させてください。集合住宅でエレベーターがついていることも多いと思うのですが、女性の場合、エレベーターに乗る際は周囲に誰もいないことを確認してから「ひとりで乗る」が鉄則です。もし誰かと一緒に乗ることになってしまった場合、非常電話のついているエレベーターボタンのすぐ近くで、壁を背にして立っていると安心かと思います。異変を感じたり、怖いと感じたときは、ためらわずに近くのフロアで降りてしまいましょう。
オートロックの家でも、鍵を開けた住民と一緒にメイン玄関を通り抜ける形で不審者が侵入できてしまうんです。集合住宅の内部にいるから安心というわけではなく、どんな場所でも常に警戒心を持っておき、対策をとることは大切です。
──これから新生活を始める読者に向けてメッセージをお願いいたします。
坂井:まずは、新生活のスタート、おめでとうございます。勉強に仕事に、これからの生活をとても楽しみにされている方も多いでしょう。
防犯については、「自分は大丈夫」と考える方もいらっしゃるのですが、空き巣や暴漢などの被害は、誰しも遭うリスクがあります。自分を過信せず、できることをひとつずつ行っていただけたらと思います。今回の取材内容が、みなさまの安全と実り多き新生活につながればうれしいです。
菅原:狙われるときは誰でも狙われてしまいます。防犯について他人事ではなく、自分事ととらえて行動するのが大切です。セコムでは女性向けの防犯対策について専用サイトで情報発信していますので、もしよろしければこちらもチェックしていただけたら幸いです。安全に気をつけながら、新しい生活をぜひ楽しんでくださいね!
(取材・文/市岡光子、編集/FM中西)