大きな耳とくりくりの目、オレンジ色のボディに水色のアンテナ。キュートで元気な雰囲気が特徴のこのキャラクターは、警視庁のシンボルマスコット「ピーポくん」です。交通安全のポスターや警視庁のイベント、テレビのニュースなどで、何気なくピーポくんを目にすることもあるのでは? 警視庁が発信するYouTubeやTwitterなどでもその姿を見ることができ、今やピーポくんは都民だけでなく全国的にも知られる存在になりました。
そんなピーポくんは、昨年なんと35周年を迎えています。長く愛されてきたピーポくんに注目し、警視庁がシンボルマスコットを制作した背景や都民に存在を広めるための取り組みなどを警視庁広報課に伺いました。
職員の声から生まれた独自のシンボルマスコット
ピーポくんが誕生したのは昭和62年(1987年)4月17日。多くの職員から「都民に親しまれる警視庁独自のシンボルマスコットを作ったらどうか」という意見が出たことがきっかけだったといいます。
「都民のみなさんが警視庁をより身近に感じ、『親しまれ信頼される警視庁』という認識を一層深めていくことが目的でした。そこで警視庁と都民の接点で活用する『警視庁のシンボルマスコット』を作成しイメージアップを図ろうと、昭和62年1月ごろ、プロジェクトチームが立ち上がりました」
そしてその春、ピーポくんが披露されました。その後、全国の都道府県警察でもシンボルマスコットが誕生していきます。ピーポくんはその先駆けとなる存在だったのではないでしょうか。
「当時、“警察”を象徴するマークというと『旭日章』でした。ピーポくんが誕生するまでは、警視庁を表すマスコット的なものはありませんでした。みなさんに“ピーポくんが警察のマスコットキャラクターの先駆け”と言っていただき、当庁としても大変光栄に思います」
ピーポくんのシンボルマスコットとしての役割は「都民と警視庁の絆を一層深める」こと。「円滑な警察活動を推進していくための架け橋になるべく活動している」と教えていただきました。
チャームポイントの大きな耳の秘密は……
ピーポくんのデザインにはさまざまな意味が隠されています。
「ピーポくんの大きな耳は都民の声を幅広く聞くため。アンテナは社会全体の動きを素早くキャッチするため。目は社会のすみずみまで見渡すためです。ピーポくんは、いろいろな動物のかわいらしい部分をイメージ化してデザインしています」
ピーポくんのオレンジ色のボディも目をひきます。オレンジを採用した意味とは何だったのでしょうか。
「作者の上原先生(※)がおっしゃっていたのは、赤はパトカーの赤色灯を連想するため、マスコットには赤以外の色を考えたそうです。パッと見て目立ち、親しみやすい色として、現在のオレンジ色になりました」
※ピーポくんをデザインした上原幸子さん(現・武蔵野美術大学教授)
名前の由来は、「“人々”の『ピープル』と、“警察”の『ポリス』の頭文字を取って『ピーポ』と名づけました」とのこと。パトカーのサイレンの音かと思いきや、実は違うのです。
「ピー子」に「ピー太」も。ピーポくんファミリーを探る
ピーポくんには、実は家族もいます。
「ピーポくんが警視庁のシンボルマスコットとして定着してきたことから、庁内外からピーポくんのファミリー誕生の機運が高まりました。専門家を含めた関係者で検討・協議し、昭和63年(1988年)1月7日にファミリーが制定されました」
ピーポくんと両親、妹弟の5人からスタートし、祖父母が加わって、現在の7人家族に。それぞれの名前はなく、父を「おとうさん」、母を「おかあさん」、「いもうと」「おとうと」「おじいさん」「おばあさん」の呼び名が使われていたといいます。
「ピーポくんファミリーの活動が始まり、警視庁内の各部署から、ピーポくんの妹と弟に愛称を付けてほしいという要望が多く出てきました。さらに効果的な活用を図るために、平成元年(1989年)7月6日、妹を『ピー子』、弟を『ピー太』と定めました」
ピーポくんに、ピー子ちゃんとピー太くん。名前がつくとより一層親しみがわいてきます。
警視庁広報課が尽力したピーポくんの普及活動
現在、ピーポくんやピーポくんファミリーは、交通安全運動や防犯活動などの各種行事、広報啓発ポスターや広報動画などで幅広く活躍しています。
YouTubeの警視庁公式チャンネルを見ると、ピーポくんファミリーが登場する「ピーポくんアニメーション」が。子ども向けの「警視庁PRビデオ」では、ピーポくんとピー子ちゃんが警察のさまざまな仕事を教えています。
また、警視庁広報課のTwitterアカウント(@MPD_koho)では、施策やイベント情報も発信中。ピーポくんの活躍ぶりや着ぐるみ姿を見ることができます。
【サイバー攻撃対策センター】3月28日(火)、秋葉原駅前で「家庭用ルーターの不正利用防止」を呼びかけるキャンペーンを実施しました。下記URLから配布したリーフレットをダウンロードできます。サイバーセキュリティ啓発にご活用ください。#警視庁 #ルーター #注意喚起 https://t.co/nHStMWfi3c pic.twitter.com/ynIDNDFXi1
— 警視庁広報課 (@MPD_koho) April 5, 2023
このように、今はさまざまな形でピーポくんの活動を知ることができますが、ピーポくんが誕生した昭和の終わりのころはどのようにしていたのでしょうか。新しいシンボルマスコットを知ってもらうために、広報課が行っていた取り組みを聞いてみたところ“普及作戦”という言葉が出てきました。
「“ピーポくん普及作戦”として、ピーポくんのぬいぐるみを交番の見張り所に置いて一般の人の目に触れるようにしたり、女子高校生に交通安全のチラシと一緒にピーポくんのマスコット人形を配布したり。シールやバッジを作成して子ども向け雑誌の懸賞品としてプレゼントもしていました」
地道な普及作戦によって、少しずつ嬉しい反応も聞こえてきたといいます。
「『かわいい、欲しい、とてもいいですね』『警察の“堅い”というイメージをピーポくんが和らげていますね』などの高評価をいただきました」
ピーポくんの存在が、警視庁に親しみを持つきっかけになる人もいるのです。
ピーポくんが誕生し、長い年月が過ぎました。時代は昭和から平成、令和へと移り変わりましたが、ピーポくんの役割は今も昔も変わりません。
「これからも“都民と警視庁の架け橋”として、交通安全や各種防犯イベントで活動していきます」
ちなみに、警視庁管内の江東・鮫洲・府中の3か所の運転免許試験場と京橋にあるポリスミュージアム(警察博物館)では、ピーポくんグッズを購入することができます。
「ポリスミュージアム(警察博物館)」は、警視庁の歴史や活動の紹介のほか、ミニシアター、交番疑似体験などの各種体験を通じて、警察の仕事や身の回りの安全について楽しく学べる施設です。
これまで何気なく目にしてきたピーポくん。ピーポくんの誕生の背景や活動内容、かわいらしさを入り口に、交通安全や防犯への意識を高めてみてはいかがでしょう。
(取材・文/鈴木ゆう子)