明治時代の大ベストセラー『学問のすゝめ』の著者であり、慶応義塾大学の創始者。そして、現在の1万円札の「顔」、福沢諭吉。
その福沢諭吉が残したという、人が生きていくうえでの7つの教訓、「福沢心訓七則(ふくざわしんくんななそく)」というものがあります。
ただ、実はこれ、実際には福沢諭吉自身の作成ではなく、誰かが昭和30年代に、福沢諭吉が遺した言葉などから創作したものだというのが定説。
にもかかわらず、現在まで残っているのは、言っていることがとても教訓深いからなのでしょう。
今回は、この「福沢心訓七則」を利用して、「自分にとって大切なこと」を知る方法についてお話します。
「福沢心訓七則」の中身はズバリ?
では、さっそく「福沢心訓七則」を見てみましょう。
中身はこんな内容です。
世の中で一番楽しく立派な事は 一生涯を貫く仕事を持つという事です
世の中で一番みじめな事は 人間として教養のない事です
世の中で一番さびしい事は する仕事のない事です
世の中で一番みにくい事は 他人の生活をうらやむ事です
世の中で一番尊い事は 人の為に奉仕して決して恩にきせない事です
世の中で一番美しい事は すべてのものに愛情をもつ事です
世の中で一番悲しい事は うそをつく事です
いかがですか?
まあ、たしかに立派なことを言っているとは思います。
でも、少し「現代に合わない」というか、説教臭さを感じてしまいませんか。
「一生涯を貫く仕事を持つ」って、「同じ仕事をずっと続けていれば立派なの?」とか。
「教養なんてなくても、しっかりと生きていれば、別にみじめではないのでは?」とか。
ツッコミを入れようと思えば入れられる内容だと思うのですが、いかがでしょう?
そこで……というわけではありませんが、イチャモンをつけるのではなく、「自分なら、いったいどんな「心訓七則」がしっくりくるかを考えてみました。
自分用の「心訓七則」が、教えてくれること
私が考える、自分なりの「心訓七則」は以下です。
世の中で一番みじめな事は 誰からも相手にされないない事です
世の中で一番さびしい事は 笑い合える相手がいない事です
世の中で一番みにくい事は 他人の成功に嫉妬する事です
世の中で一番尊い事は 争わずに協力し合う事です
世の中で一番美しい事は 自分らしく、凛(りん)として生きる事です
世の中で一番悲しい事は 自分にウソをついて生きる事です
こうやって作ってみると、われながら「自分らしく生きること」や「人とのつながり」を重視していることが丸わかりです。
もし私が、「仕事」や「出世」を重視するタイプなら、まったく違った7つになったことと思います。
さて。ここからが言いたかったことです。
あなたもぜひ、自分なりの「心訓七則」を作ってみてほしいのです。
やり方は簡単です。以下の( )内に、自分なりの答えを入れるだけ。
世の中で一番みじめな事は ( )事です
世の中で一番さびしい事は ( )事です
世の中で一番みにくい事は ( )事です
世の中で一番尊い事は ( )事です
世の中で一番美しい事は ( )事です
世の中で一番悲しい事は ( )事です
ぜひ、やっつけではなく、どれも真剣に考えてみてください。
そして、( )内に入れる事柄は、なるべくひとつに絞ってみてください。
いかがですか? 完成しましたでしょうか?
できあがったら、7つを改めて眺めてみてください。
これが、あなたにとって、「自分が生きていくうえで、本当に大切にしていること」です。
いわば、自分専用の「人生の指針」が明らかになります。
これ、もしかすると、しばらく間をおいてやると、別の言葉が入るかもしれません。
それはそれで、そのときの自分の気持ちが反映されて、今の自分が大切にしたいと思っていることがわかります。
何かに悩み、「自分がどうしたらよいのか?」「自分はどうしたいのか?」が見えなくなってしまったとき。
そんなときは、自分で作った「心訓七則」を基準にすれば、自分がいちばん大切にしていることを再認識できて、どうすればよいかの指針が見えてくると思います。
(文/西沢泰生)