2021年12月、『Have a nice day』でメジャーデビューした男性アーティストのimaseさん。2023年は、2月に『僕らだ』、3月に『ピリオド』、4月に『18』と3か月連続で新曲を発表。5月には、最新配信シングル『Nagisa』をリリースし、精力的な音楽活動を続けています。
2022年8月にリリースした『NIGHT DANCER』は、J-POPで初めて韓国配信サイト“Melon”のTOP20に入ったほか、31の国や地域のSpotiifyバイラルチャートにランクイン。
BTSのメンバー、ジョングクさんが同曲を歌唱した動画をSNSにアップし話題になるなど、国内外で注目を集めています。今回は、世界中の音楽ファンを魅了する楽曲制作術についてはもちろん、多忙な日々の中で心身のバランスを取るための“imase流・対処法”についても伺いました。
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レトロさを感じさせる、待望の新曲『Nagisa』
──新曲『Nagisa』は、夏っぽいサウンド感と女の子目線の歌詞が新鮮ですね。
「今回は80年代を感じる、レトロな雰囲気の曲を作りたいというところから制作をスタートしました。そのときに参考になるような80年代の曲を、例のAir Pods Pro(前編で紹介)でたくさん聴いたんですが(笑)、女性目線で書かれた歌詞が多いなとふと気づいたんです。
また、曲中の女性が少し小悪魔的というか、強気なところを感じられるのが面白いなと思ったので、そんな女性の目線で書いてみたいと思いました。
その時代の曲には渚というワードが頻繁に登場してくるので、80年代を象徴するような言葉、Nagisaをタイトルにしようと思いました」
──なぜ、ローマ字表記にしたのですか?
「渚について少し調べてみたたら、津波が世界標準語として“Tsunami”であるように、“Nagisa”も世界標準語とのことで、それって面白いなと思いましたし、世界中の人にも聴いてもらえたらいいなと思って、ローマ字表記にしました」
──サウンド面のこだわりをもう少し詳しく教えてください。
「メロディ自体は去年の秋ごろにできていたのですが、サウンド的にどうすればいいかを考えていく中で、80年代的でレトロなシティポップ風にしてみたらどうだろうというアイデアが浮かびました。
アレンジは、Jazzinʻparkの久保⽥真悟さんにお願いしたのですが、あまり洗練されすぎてない、いわゆる“いなたい音”にしてほしかったので、久保田さんに“このあたりはこんな感じの音で”とか、かなり細かくリファレンスの音源を共有させていただきました。
アレンジされた音源を聴いたら、自分が想像していた以上の素晴らしいサウンドになっていたのですごく感激しました。特にブラスの音がカッコいいんですよ! 自分の発想にないものが入って、いい化学変化が起きる瞬間に出合えると“音楽を作っていてよかったな”って思いますね」
──imaseさんの代名詞でもあるファルセットはもちろん、柔らかな歌唱も印象的だなと感じました。
「ありがとうございます。発音に関しては、こだわって歌っています。日本語の歌詞は1音に1字をのせて歌うことが多いのですが、英語のようになめらかで柔らかい発音で歌いたいと思っています。
例えば、世界的にヒットした藤井 風さんの『死ぬのがいいわ』も、流れるような発音だと思うんです。なので、歌唱に関してはボイストレーニングの先生と相談したり、自分なりにどういう歌い方が耳に心地よいかをトライ&エラーしていく感じですね。
心地よい音や歌唱を意識して作った楽曲ですし、これからの季節はドライブするときなどに聴いてもらえるといいんじゃないかなって思います。
また、曲の雰囲気が80年代っぽいので、親世代の方々はどこか懐かしかったり、僕ら世代には新鮮に感じたりして、親子でこの曲をきっかけにコミュニケーションが生まれたら嬉しいですね」
タイアップ曲『18』で書いた“04世代”への前向きなメッセージ
──デビュー以後、大きなタイアップソングの制作が続きますが、ご苦労ややりがいをどんなときに感じますか?
「単純に、僕に“作ってほしい”と言っていただけることがありがたいですし、光栄なことだと思います。それに、僕の思うがままに作る曲ではきっと得られない、新しい視点やチャレンジができることもタイアップならではだなと感じます。
例えば、サントリーさんのタイアップソング『18』は、今年18歳、新たに成人になる“04世代(※)”の方々に向けて、曲を書かせていただきました。この世代の方たちは、コロナ禍の中で学生生活を送ってきたと思うんです。
いろいろな制限がある中で、友人たちと出かけたり会話を思いきり楽しむことは難しかったかもしれませんが、“できなかったことがたくさんあったということは、そうした楽しみがまだ残されている”ということでもあるのかなと。
“これからまだまだ楽しいこと、面白いことは続いていくんだ”と伝えられたらいいなと思いましたし、タイアップをきっかけにそうした気づきも生まれたのかなと思います」
※ 2004年度(2004年4月〜2005年3月)生まれの世代を指す。
本当につらかったときを乗り越えての“いま”
──以前お話を伺った際、海外も意識しながら曲作りしているとおっしゃっていました。『NIGHT DANCER』が世界各国に広まったことを、どう受け止めていますか。
「すごく嬉しいですね。僕は歌詞も大事にしていますが、メロディやサウンドに重きを置いて制作する傾向が強いです。
『NIGHT DANCER』の歌詞は日本語ですが、サウンドやメロディは海外のダンスミュージックをイメージしながら作ったものだったので、言葉の壁を越えて海外の方にダンスミュージックとして聴いてもらえたんだなと思うと、自信にもつながりました。
もっと自由に表現していけそうなワクワクした気持ちにもなりますし、僕の曲を聴いてくれるみんなに会うために、いずれはアジアツアーなどもできたらいいな……とか、どんどん夢がふくらみますね」
──人気者として多忙な毎日を送っていると思います。心身のバランスを保つためのimaseさんなりのコツは?
「この春からひとり暮らしを始めたばかりなので、慣れないことも多いですが、新生活をスタートしたみなさんと同じことですよね。
まあ……確かに、『Nagisa』のMusic Videoの撮影をするために朝4時とか5時に起きて、その後、ものすごく長い1日を過ごしたりすると、“ああ~、大変だな”って思うことはありますよ(笑)。
でも本当にしんどいなと思っていたのは、2021年12月にメジャーデビューしてすぐ後のころ、大きなタイアップソングを担当させていただくようになったときだったと思います。
岐阜から東京への移動時間がすごく長かったので身体的にも大変でしたし、音楽制作の経験もまだ浅かったので“いい曲を作るにはどうすればいいんだろう”って、毎日すごく考えました。
でも、チャンスだと思ったので、できるだけ考え込みすぎず、悩みすぎないよう心がけて、目の前のことに集中していました」
──自分の立ち位置を冷静に判断したり、メンタルを立て直す強さは学生時代のサッカーの影響でしょうか?
「サッカーはチームプレーなので戦術は大切ですし、自分の立ち位置を冷静に判断する能力も求められます。けど、僕はここぞというとき、戦術よりもひとりでドリブル突破しちゃうようなタイプ(笑)。
“落ち着いているね”と言われることもありますが、けっこう“緊張しい”です。それに、音楽活動では“締め切りまでに曲を作らなきゃ”とか、“いい曲を作れるだろうか”というプレッシャーもありますが、制作のためにいろいろな音楽を聴くと新しい発見があって、自分の世界が広がる面白さを感じたりできます。
それに、自分なりに頑張って作った曲がいろいろな人に届いて、“よかったよ”とか“元気になりました”と感想をいただけると、心から作ってよかったなって思います。
そうした実感を大事にしたいですし、実感できるからこそ、またいい曲を作ろうとか、ライブパフォーマンスのレベルを上げたいという前向きな力が生まれてくるのかなと思います」
(取材・文/キツカワユウコ、編集/本間美帆)
【PROFILE】
imase ◎岐阜出身で22歳の ”新世代男性アーティスト“。音楽活動開始わずか1年で、TikTokで楽曲をバイラルさせ2021年12月にメジャーデビュー。2022年にはCM主題歌やドラマタイアップにも大抜擢されるなど、いまティーンから絶大なる人気を得ている。『NIGHT DANCER』は韓国配信サイト「Melon」でJ-POP初のTOP20入りを果たし、SpotiifyバイラルチャートTOP50に31カ国ランクインするなど、世界各国でもバイラル中。2023年3月30日には初の有観客ライブ『POP OVER』の追加公演共にチケットが即完売。今秋に自身初のツアー『imase 1st Live Tour』の開催も決定している。Twitter→@imase_1109、Instagram→@imase11_9