今をときめくママタレントとして活躍している女性の中には、辻希美さんや藤本美貴さんなど、アイドル経験者も多い。
しかし、現役でアイドル活動をしながら、現在進行形で育児中なのが、でんぱ組.incのセンター、古川未鈴(ふるかわ・みりん)さん。彼女は2019年に漫画家・麻生周一さんとの結婚を発表。’21年には、第一子を出産した。
ライブの最後に、ファンの前で結婚を報告し、出産や育児の様子も自身のブログで包み隠さず発信する。これまでのアイドルとは一線を画す未鈴さん。彼女の理想とするアイドル像とは? 描く未来とは──?
【でんぱ組.incの黎明期やメンバーとの関係性について語っていただいた第1弾→『でんぱ組.inc』古川未鈴、引きこもりからアイドルへの道のりと「観客数人」時代やグループへの思い語る/ライブでの結婚を決めてから出産までを振り返ってもらった第2弾→古川未鈴、『でんぱ組.inc』ライブでの結婚発表を決めた理由と、出産後のアイドル活動で見えてきたこと】
アイドル活動をしながら子育て。夫の応援も支えに
──アイドル活動をされながら、妊娠を希望されていたのですか?
「実は、私には子宮の病気があって、“子どもを産むなら早めがいいですよ”って言われていたんです。それが、妊娠を考えたきっかけでしたね。子どもを産みたいと決意するにあたって、事務所には“一度、活動を辞めます”と話していたんです。でも、みんな“妊娠は自然に起こることだから、活動を休止するような時期は決めないほうがいいんじゃないか”って言ってくれて。“いざ、そうなってから考えればいいのかな”って思えました」
──ご自身のインスタグラムで第一子妊娠を発表されてから、その後の活動へのプレッシャーはありしましたか?
「プレッシャーはなかったのですが、えいたそ(成瀬瑛美・でんぱ組.inc元メンバー)の卒業ライブに発表時期が被ってしまったのが申し訳ないなと感じましたね。でも同時に、育児をしながら活動をしていくと、きっとこの先もメンバーには迷惑をかけまくるだろうから、そういう覚悟も必要なんだなって思いました」
──旦那さんは、未鈴さんのアイドル活動についてはどのように言っていますか?
「彼もでんぱ組.incのことが大好きなので、“もちろん続けてほしいし、逆に、未鈴ちゃんがつらくなったら、いつでも辞めていいよ”って言ってくれました」
──活動に理解があるのですね。
「“未鈴ちゃんが前に出ているから嫌だっていう気持ちもないし、なんなら、活躍してくれているのがうれしい”って言ってくれたんです。妊娠したときも、もちろん喜んでくれました」
──周りの支えがあってこそのアイドル活動なのですね。
「はい。でも、つわりの時期が大変でしたね。体調が悪くてもやるしかないので、泣きながら現場に行っていました。ライブも座って歌ったり、事務所には融通をきかせてもらいました」
炎上するも、「愛情を持った育児なら楽なほうがいい」
──ブログでは、出産から産後にかけて髪の毛が抜けた話など、赤裸々に書かれていますね。女性としてはかなり勇気がいることと思うのですが……。
「自分の身に起きたことって、全部言いたくなるんですよ、私。友達いないんで……、あ、ちょっとはいるんですけれど(笑)。“髪の毛抜けちゃってさ~”なんて話を気軽にできる相手がいなくて。それがファンの方々になっているんですよ。ファンの方に話を聞いてもらいたくて、ブログを書いたりしています」
──ファンからの反応はどうですか?
「もちろん、出産とかの話は嫌だって意見も聞くんですよ。“こんなの読みたくないです”っていう声も届くし。でも、それよりも“未鈴ちゃんのリアルな声が聞けてうれしい”っていう反響のほうが圧倒的に多い。最初は、出産のことも、どれくらい書けばいいのか迷ったんです。でも今の私って、アイドル活動を除いたら、本当に育児のことしかない。だから、それ抜きでは発信できないし、私のこのスタイルでいいのかなって思っています」
──ブログで「炊飯器を持っていない」と書かれた際に、炎上していましたよね。
「すごい反響でしたよ。ヤバイ! って思いました。炊飯器を持っていないのには理由があって、うちは2人とも、ほぼ料理をしないんですよ。旦那さんが野菜とか食べられないものが多くて、手料理もあまり好きじゃないんです。話し合った結果、ひとまず外食でいこう、ということになった。わが家にとっては当たり前だと思っていたけれど、世間にとっては当たり前ではなかったようで……。でも最近、炊飯器を買おうかっていう話は出ています(笑)」
──ブログには、離乳食作りの様子をアップされていますよね。
「これまで誰かのために料理することがあまりなかったけれど、赤ちゃんが自分の作ったものを食べてくれるのは、めっちゃうれしい。子どものためになるって思うと、私も楽しんでやれる。“なるほど、これが人にものを作ってあげる喜びか”って実感しましたね」
──未鈴さんが初めての育児に対する戸惑いを隠さずに書かれているのも、成長を見せるという意味で、アイドル的だと思います。
「もふくちゃん(福嶋麻衣子・でんぱ組.incのプロデューサー)からは、“未鈴がママタレみたいな発言をしたら、絶対に炎上するよ”って言われていたんです。確かに、例えば育児の中でベビーフードを使っているとか、言いづらいんですよ。“すべて手作りじゃないと愛情がこもっていない”って言われるけれど、ちゃんと愛情も持っているんです。私がありのままを発信することで、そういう育児に関する価値観の壁も壊していきたいなって思ってます」
──育児にまつわる話題は、時間や手間がかかっているほど、愛情があるというふうに捉えられがちな部分がありますからね。
「確かに悩むことも多いです。こんなに愛情があるのに、文章にして出すと、“わっ、未鈴ちゃん、ぜんぜん手間をかけていないじゃん”って思われる。でも、子どもを愛している気持ちは変わらないのだから、だったら手間暇かからないほうがいいのではないか、とも思うんですけどね……」
悩みの連続だけれど、“やるんだよ!”精神で乗り越えたい
──漫画家とアイドルという珍しい夫婦なので、生活スタイルも一般的な家庭とは違うのではないですか?
「アイドルの仕事は定時ではないので、赤ちゃんがいる環境って難しいなって感じています。深夜までの仕事があった場合、どうしたらいいのだろうっていうのが、今は心配ごとのひとつですね」
──5、10年後の未鈴さんの未来像、どうなっていると思いますか?
「たぶん5、10年後も悩んでいると思うんです。でんぱ組.incを続けてまだ舞台に立っているかもしれないし、もしかしたら育児一筋になって、お母さんとして息子を連れてライブを見に行っているかもしれない。まだその答えが出ないですね。ただ、どれを選んでもプラスになるとは思っています」
──結婚や出産など、新しいアイドルの道筋を未鈴さんが作っている部分があると思いますが。
「アイドルが結婚・出産しても、アイドルを続けるのが普通みたいな。本人が辞めたくないのなら続けられるという環境がスタンダードになったらうれしい。そういう道を少しでも作れたら、アイドルをやってきた甲斐(かい)はあるのかなと思います」
──「一生アイドルでいたい」と公言されていますが、その気持ちに変わりはないですか?
「これまでは一生アイドルでいたいと思っていたんですけれど、子どもが生まれてガラっと変わったんです。もちろん、アイドル以外の職業に就く気はないですが、私がアイドルを続けていたら、この子はやりたいこととかできるのかなって、そういうことを考え出しちゃうんですよ」
──具体的になにか、不安なこともあったりされますか?
「仕事を続けていたら、習いごとのお迎えとか、できるかなとか(笑)。自分の親が自分にしてくれたのと同じようなことができるのかとか、考えちゃいます。自分のことばかりで、子どものことがおろそかになってしまわないかなって心配になるんです。一生アイドルでやっていきますって、思っている反面、そう言い続けるのがいいのか、わからなくなったんですよ。本当、悩みが多くなりましたね」
──大変ですよね。ただ、周りから見たら、出産もされて順風満帆に見える部分もありますよ。
「今までは、アイドルで売れるってことだけを考えてきた。だから突っ走ってこれたんです。でも、自分にとって大切なものが増えるほど、悩みって増えるんだなって。私は何か生きる糧がないと生きていけないタイプで、その中のひとつが、“でんぱ組.incとして絶対に売れる”ってことだった。目標があったからこそ、生きてこられたんだなって思います。
でも、出産をしてフェーズが変わってきたので、目標がぶれてきた。何を軸にしてやっていけばよいのだろうって、また悩んでいる時期ですね。ただ、悩みながらも少しずつ決断して、やっていくしかない。何が正解かわからないけれど、“でも、やるんだよ!”の精神でなんとか乗り越えられそうかな、と思う自分もいます」
──子育てが落ちつかれたら、またアイドルを頑張りたいフェーズに戻るかもしれませんよ。
「本当ですか? そう考えたりもするんですけれど、“はたして数年後、数十年後に、私はまだアイドルとしてやっていけるのだろうか”みたいに思ったりもするんですよ。今まで、年齢なんて関係ないって言っていたけれど、その壁に、初めてぶち当たった瞬間ですね(笑)」
──未鈴さんがいちばん納得できる道を選べますように。最後に、古川未鈴のイメージカラーである赤について、思い入れはありますか?
「昔から何を選ぶにも、赤を選んでいたんですよ。新体操をやっていたんですけれど、道具のボールやフープを選ぶときも、赤色のものを選んでいました。でんぱ組.incを結成したときに、好きな色をとっていいって言われて、ほかに誰も赤がいなかったので、“じゃあ、赤で”と挙手しました」
──もしも未鈴さんが卒業されたら、イメージカラーの赤は継承するか、欠番するのか……。
「いや~。どうしますかね。ねむさん(夢眠ねむ・でんぱ組.inc元メンバー)がね、イメージカラーのミントグリーンを、ねもちゃん(根本凪・現メンバー)に継承したんですよね。でも、赤は自分だけのものにしておきたい気もしつつ(笑)」
未鈴さんを撮影中、周りのスタッフから“可愛い!”という声が漏れた。いるだけで周りを明るくし、元気づける存在。結婚や出産も魅力のひとつと思える、新しいアイドル像を見た気がした。
(取材・文/池守りぜね)
【PROFILE】
古川未鈴(ふるかわ・みりん) ◎香川県出身、165センチ、A型。『でんぱ組.inc』のセンターを務める。キャッチフレーズは「歌って踊れるゲーマーアイドル」。コンシューマーからアーケード、ネットゲームまで幅広く網羅し、ゲーム番組のMCもこなす。新体操やクラッシックバレエの経験を生かしたダンスも得意。イメージカラーは「赤」。
Twitter→@FurukawaMirin、Instagram→furukawamirin、ブログ→「みりんのメモ帳.txt」
でんぱ組.inc Zeppツアー2022 『お前らDEMPARKまで行くんだろ?乗りな!』
一般チケット、各種プレイガイドにて発売中!
▼イベント日程
2022年4月22日(金):福岡・Zepp Fukuoka
2022年5月7日(土):札幌・Zepp Sapporo
2022年6月11日(土):東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
2022年6月14日(火):名古屋・Zepp Nagoya
2022年7月8日(金):大阪・Zepp Namba
▼詳細はこちら
https://dempagumi.tokyo/news/2022/01/10/2022_zepptour/