「よろしくお願いします」と言って、取材の場に颯爽(さっそう)と現れた福士蒼汰さん。テーブルの上で、後ほど行われる撮影のためスタンバっているフムッフィーを見つけるや「わ! なんかいる!!」と目を細める様子に、スタッフの緊張がほぐれました!
そんな福士さんのインタビュー前編では、初の海外出演作となるドラマ『THE HEAD』Season2への思いを語っていただきました。後編では、海外の現場で感じた日本との違いや、コミュニケーションの取り方、さらに福士さんが身体づくりで大切なことや最近ハマっているゲームなど、気になるプライベートのお話もたくさんしていただきました!
日本語の「乾杯」をみんなが気に入ってくれた嬉しかった
──福士さんは学生のころから語学の勉強をされ、これまでも流暢な英語のスピーチを何度か拝見していますが、『THE HEAD』Season2の現場でのコミュニケーションはどうされていましたか?
最初のころは大変でした。英語の能力以前に、海外の方とのコミュニケーションというところで、知らないうちに肩に力が入って緊張していたのを感じていました。
一番大変だったのは、大人数でのプライベートの会話でした。現場ではセリフがあるので、そういう意味では困らないのですが、プライベートでの何気ない会話のほうが意外と難しくて、最初は聞く側に徹してしまいました。
──撮影中に役名で呼ばれるところを「Hey, Sota!」と言われ、NGが出てしまったというエピソードも小耳にはさんだのですが、キャストのみなさんとは徐々にコミュニケーションが取れていったのですか。
2か月目あたりからは徐々に撮影シーンも増えてきて、一緒にいる時間が長くなったんです。そうすると必然的にお互い余裕も生まれて「ごはん行こうよ」という話が多くなったので、僕もだんだん慣れていきました。
1話の中に、それぞれの国の言葉で「乾杯」と言うシーンがあるのですが、そこで日本語の「乾杯!」をみんなが気に入ってくれて、実際に使われたのは嬉しかったです。
福士さんが体感した海外と日本の現場の違い
──海外での撮影を経て、福士さんが俳優として触発されたことや、吸収されたものを教えてください。
やはり英語でお芝居をしたことが一番大きいです。同じお芝居でも、日本語と英語だとまったく違うなと思ったのと同時に、実は自分に合っていると思えることもあったんです。
日本だとボディーランゲージはかなり少ないので、作品の中でも動きが少ないというか。でも、僕は自然とボディーランゲージが出てしまうタイプなので、大きな動きをしてもなじむという部分は、海外に合っていると感じられた点かなと思います。
それに、海外ではお芝居によりリアリティを求められるんです。日本だと、リアルよりも少し誇張されたお芝居を要求されることもあるのですが、今回は「本当に自分が感じるままを表現してほしい」と言われました。そこは難しい部分でもありましたが、慣れるとすごく心地よいと思いました。
「キツイな」と思ったときは、誰かのための「もう一回」
──さて、福士さんといえば鍛え抜かれた肉体美をお持ちですが、トレーニングのモチベーションを保つために心がけていることはありますか?
やっぱり、身体の変化があると違います。それに、僕はジムに行く前よりも行き始めてからのほうが、明らかに気分がよくなってポジティブになっているような気がするんです。
男性の場合、科学的にはテストステロンが分泌されて向上心などがアップすることにつながるとも言われていますし、僕もそう感じている気がします。そういう実感があると、続けられるモチベーションになるんじゃないかな。
──身体作りで一番のポイントになるのはどんなことでしょう。
いろいろありますが、男性の場合で言えば、いかにキツイと思えるかどうかじゃないでしょうか。筋トレはキツくないと意味がなくなってしまうんです。
──うぅっ……、そうなんですね。
ただ筋トレするだけでも現状維持にはなりますが、そこが戦いなんですよね。トレーニングの量や内容が「ちょっとキツイ」だったらそのぶん身体も少しずつ変わっていくし、「かなりキツイ」だと、2、3か月で全然変わってきます。長いスパンで見るなら「ちょっとキツイ」を毎日必ず続けていくのでもいいと思いますよ。
──自分の思う「キツイ」の限界をさらに乗り越えていかないと、その先にはたどり着けないんですね。
キツイなと思ったあとの一回は大事です。僕はそういうとき「人のための一回」と思ってやるようにしています。例えば、「今日は母親の誕生日だから“おめでとう”の一回!」とか(笑)。家族や友人が頑張っているのを考えてもう一回やる、ということをしています。
──確かに、自分のためだけだとちょっと甘えが出ちゃいそうです。
そうなんです。自分のことだけでエネルギーを使いきったら、もうそれ以上のものは出ないけど、他の人からパワーをもらうと自分の中にまだあったものが出て、もっと頑張れるんです。
中級者になっても、初心者から学ぶことはたくさんある
──武道や英会話もそうですが「これを究めよう」と思う道を一生懸命追求して習得されるイメージがあって、私はいつも福士さんを見ると「道」という字が思い浮かぶんです。俳優のお仕事も含め「その道」を習得するためには、どんなことが必要だと思いますか。
心構えとしては、素直でいることです。初心者のときは学ぶことだらけだからいいのですが、中級者になってくると知っていることも増えてきて、学びがちょっと緩やかになってしまうんですよ。
例えば、役者の仕事でも英語でも、中級者になってくると「先輩の俳優さんや上級者の方から学びたい」と思ってしまうこともありますが、若い人や初心者から学べることも多いんです。「初心者の人に教えるためには、僕はどこまで理解していたらいいんだろうな」と考えることが自分の成長にもつながるし、学びを止めないためにも、自分が素直でいることがすごく大事だと思っています。
──いつも素直に、学びを止めないことが、今の福士さんを作っていらっしゃるのですね。「学び」において、福士さんが心がけていることはありますか?
僕の場合は、論理的と感覚的両方のベースでノイズを使って学ぶことが多いです。感覚的に学びすぎると再現性がなくて「あのときはこの感覚だったけど、今はできない」ということがあるんです。そういうときは、一度論理に落とし込むと頭に計算が入っているから再現できる。逆に論理だけでやると、頭ではわかっているけど身体が動かないということが起きてしまうので、その両方で学んでいく感覚があるといいかなと思っています。
──論理的と感覚的に物事を考えてやったことがなかったので、なんだか自分が恥ずかしくなってきました。
いえいえ(笑)。例えば歌はわかりやすいんです。説明されたことを頭で理解して口を大きく開けてみても、実際はその音が出なかったり、逆に感覚だけ教えられても「その感覚は僕とは違う」ということになって再現できなかったりするんです。
なので、まずは喉が大きく広がっているイメージで口腔内を広くさせて、響きは咽頭共鳴で震えている感覚を持つと、実際にちょっと広がるんです。そうやって感覚やイメージを持ちながら論理的に教わったことをやっていくと、再現性もありながらパフォーマンスすることができるんです。
木村了さんに教えてもらってハマった「スプラトゥーン」
──では、恒例の「イケメンたちの意外なイチメン」のコーナーに移りたいと思います。ドラマ『弁護士ソドム』で共演された光石研さんには、14歳のころにスケボーを始めて、最近は電動自転車を買ったというエピソードをお話しいただきました。福士さんの「実はこれが好き」といったものがあれば、ぜひ教えてください。
僕は勉強もたくさんしますが、 ゲームもするんです。今「スプラトゥーン」(4対4のチームバトルを基本とし、水鉄砲で地面を塗る「ナワバリバトル」を楽しむゲーム)にハマっていて、強くなるために日々試行錯誤しています。
──ゲームでも負けず嫌いが出るんですね!
負けず嫌いなのかもしれません。なので、それも再現性と自分の感覚を照らし合わせて「論理的には~」と考えます(笑)。いろいろな武器がありますが、僕は相手をどんどん倒したいから特攻したいんです。専門用語で「キル速」(敵プレイヤーをキル=倒すまでにかかる時間のこと) と言うのですが、そのためには射程距離は短いけど、懐に潜り込んだらすぐ倒せる武器を探して。「強くなるためには」ということを毎日考えています(笑)。
──ハマったきっかけや出会いはどんなことだったのですか?
昨年舞台『神州無頼街』で共演した木村了さんが「最近『スプラトゥーン』を始めてハマっているんだ」と言っていて、大阪公演のときに初めてやらせてもらったんです。そのときは難しくて全然できなくて……。東京に帰って、すぐに買いました(笑)。
──できないことや難しいことに挑戦したい、制覇したいという気持ちがあるんですね。
そうなんです。なんか「悔しい」と思うと自分の中で火がついちゃうというか。
──でも、その気持ちって大切なことですよね。それまでは他に何かゲームはされていたのですか?
いえ、ほとんどやっていないです。小学生のころは多少やっていましたが、中学生になって以降全然やっていなかったので、久々にハマったゲームなんです。
あとはポケモンのゲームも好きですよ。それも勉強のために英語でポケモンをプレイしようと思ってほぼ全シリーズやり直しました。キャラクターの中でも「ガーディ」が好きで、この子(と言って、テーブルの上にいるフムッフィーを見て)と同じくらいかわいいんです。
(取材・文/根津香菜子、編集/福アニー、撮影/junko、ヘアメイク/佐鳥麻子(VITAMINS)、スタイリスト/オクトシヒロ)
●Profile
福士蒼汰(ふくし・そうた)
1993年5月30日生まれ、東京都出身。2011年から放送された特撮ドラマ『仮面ライダーフォーゼ』で主演を務め、注目を集める。そのほかの主な出演作に、映画『旅猫リポート』『曇天に笑う』『BLEACH』、ドラマ『アバランチ』『大奥」『弁護士ソドム』、劇団☆新感線の舞台『神州無頼街』など数多くの作品に出演。待機作に、W主演映画『湖の女たち』がある。
●作品情報
Huluオリジナル『THE HEAD』Season2(全6話)
監督:ホルヘ・ドラド
制作総指揮:ラン・テレム
脚本:マリアーノ・バセルガ、ホルディ・ガルセラン、アイザック・サストレ
出演:ジョン・リンチ、モー・ダンフォード、福士蒼汰、キャサリン・オドネリー、ジョゼフィン・ネルデン、ティリエ・ゴダール、ホヴィク・ケウチケリアン、オリヴィア・モリス、エンリケ・アルセ
配信開始日:2023年6月17日(土)より独占配信開始