人と話をしているとき、相手が的確なところで「ちょっとムズカシイ言葉」を使いこなしているのを見ると、「オヌシ、やるな」って思います。
特に、若い人が会話の中にサラリと故事成語に由来する言葉を入れていたりすると、それだけで、相手から一目を置かれることも……。
今回はそんな、使うだけで相手の「あなたを見る目」が変わるかもしれない言葉。中でも、年配の方のウケがよさそうな言葉を2つ紹介します。
クイズ形式にしたので、ぜひ挑戦がてら覚えて使ってみてください。
尊敬している目上の人と会えたときに使うとよい言葉
さっそく、1つ目です。
「今日は、思いがけず謦咳(けいがい)に接することができて光栄でした」
【問題】この「謦咳」とは、なんのことでしょうか?
これは例えば、あなたがとても尊敬している、あるいは雲の上の人だと思っているような人と直接会うことができたときに使う言葉です。
そこまでの相手でなくても、普段はなかなか会う機会がない自分の会社の社長や、取引先の偉い方と商談などで話をするときに使ってもよいでしょう。
商談が終わって、帰り際に「本日はありがとうございました。●●専務の謦咳に接することができ感動いたしました」なんて言うと、「おっ」って思っていただけると思います。
では、そろそろ答えです。
【答え】謦咳とは、「せき払い」のことです。つまり、「謦咳に接する」とは、「相手のせき払いが聞こえるくらいの距離で直接に会う」ということ。転じて、「尊敬する人の話を身近で聞く」「お目にかかる」という意味で使います。「謦咳に触れる」とも言います。
相手にお世話になったときに使うとよい言葉
続いてもう1つ。
「今回は、契約を結んでいただき、営業所一同、随喜(ずいき)の涙を流しております」
【問題】この「随喜の涙」とは、どんな感情をあらわす涙のことでしょうか?
「随喜」とは、もともとは仏教語です。
本来の意味は「他人の善行(よい行い)を見て、歓喜の心を生じる」「寺院に参拝する」「僧が仏事に参加する」など。
そこから転じて、この「随喜の涙」という慣用句が使われるようになったといいます。
では、そろそろ答えです。
【答え】随喜の涙とは、「心からありがたく思って流す涙」「喜びのあまり流す涙」のことです。簡単に言えば「うれし涙」ですね。
ですから、ビジネスの場で契約担当者が英断で大口の契約を結んでくれたときや、ライバル会社のオイシイ提案ではなく、自社の提案を選んでくれたときなどに使うのがビンゴです。
企業の契約担当者ともなれば、たぶん、この言葉をご存じのはず。
ただし、ちょっと大げさな表現なので、食事をおごってもらったくらいで、「先輩ありがとうございます。もう、随喜の涙です」なんて言うと、ちょっと皮肉っぽく聞こえてしまうので注意が必要です。
まあ、先輩がこの言葉を知らなければポカンとするだけとは思いますが……。
あと、間違っても「悔し涙」という意味で誤用しないでくださいね。
最近は、ビジネスの場で「ナンタラカンタラ」とか、すぐに横文字を使う人ばかりになりました。ちなみに、そういう人に、「そのナンタラカンタラって、日本語で言うとどういう意味?」って聞くと、うまく説明できないこともしばしば。
この横文字言葉、安易に年配の方に対して使うと、相手はそれだけで気分を害することがありますからご注意を。
横文字を多用する若者たちの中で1人だけ、「謦咳に接して」とか「随喜の涙です」などという言葉を使えば、それだけで目立つことができます。
(文/西沢泰生)