雑談が苦手。そういう人が結構います。
何か目的があって会話しているときはよいけれど、これといった話題が決まっていない「雑談」になると、何を話してよいのかがわからなくなってしまう……。
特に、最近は日常のコミュニケーションがほとんどメールやLINEになっているので、相手と会って話をする機会がめっきりと減ったことで、面と向かっての雑談が余計に怖くなりつつある。
同じ社内の同僚であっても、仕事に関するやりとりはメールなどが多いのですから、そう思う気持ちもよくわかります。
今回は、そんな方のために、雑談に対する苦手意識があっという間になくなる考え方についてお話しします。
なぜ、雑談はプレッシャーなのか?
そもそも、なぜ、雑談は怖いのでしょう。
「話題が見つからず、沈黙が続いてしまったらどうしよう」と、そんな心配がよぎるからではないでしょうか。
例えば、取引先でビジネスの話がひと通り済んだあと、担当者とまだ何か話さなければならないとき。いったい何を話題にすればよいかがとっさに浮かばず、重苦しい沈黙になってしまう……とか。
同じ会社内の人だけれど、ほとんど知らない相手とエレベーターで2人きりになってしまったとき。「何かを話さなくては」と思うだけでプレッシャーになってしまって、苦しまぎれに「だいぶ寒くなりましたね」なんて、どうでもよい天気の話でお茶をにごしてしまう……とか。
エレベーターで2人きりになった相手が社長や役員だったりしたら、もう頭の中は真っ白になって、天気の話題も口にできないかもしれません。
表現を変えると、雑談が怖い理由は、雑談というものが、言わば「目的のはっきりしない自由演技」だからです。
雑談には、これといった目的もゴールもありませんし、「何を話してもよい」という自由度の高さが、雑談が苦手な人にとっては路頭に迷う原因になっているのです。
雑談を「自由演技」でなくしてしまう
書店に行くと、雑談に関する本がたくさん出ていて、いかに雑談に悩む人が多いかがわかります。
そういう本には、例えば「自分から話すのではなく、聞き役にまわりましょう」など、さまざまな「雑談克服法」が載っていますが、今回は、考え方ひとつで、雑談への苦手意識が一気に減少するという方法をご紹介したいと思います。
それは、ひと言で言えば、「雑談に明確な目的を設定するということ」です。
つまり、雑談を「目的のはっきりしない自由演技」ではなくしてしまう!
では、いったいどんな目標を設定するのがよいでしょうか?
緊張せずに、質問が自然に出てくる「雑談の目的」とは?
私がお世話になっている編集者であり、ビジネス本の著者としても人気の柿内尚文さんの著書に、すばらしい答えが出ていました。
編集者である柿内さんにとって、雑談は、相手との仕事を円滑に進めるために場を和ませるというアイスブレイクが目的でした。
しかし、どうしても雑談に苦手意識を持っていた柿内さんは、ある日、気がつきます。
「そうか、雑談が苦手なのは、“雑談でアイスブレイクをしないといけない”と思っていたからだ!」
本の著者などの仕事相手に対して、雑談をすることで緊張を和らげる。そのために無理やり雑談をしていたことが、苦手意識の原因だと思い至ったのです。
そこで柿内さんは、雑談の目的を次のように変えてみました。
「雑談は、相手と仲よくなるためにするもの」
そう考え方を変えた途端、あんなに苦手だった雑談が苦ではなくなったのだそうです。
柿内さんのこの方法を知って、私も思い当たりました。
実は、私も会社員時代は、仕事で初めて会う相手との雑談がすこぶる苦手だったのです。
営業時代の商談や、社内報を担当していたときのインタビューなどでの会話はよいのです。
でも、いざ雑談タイムになると、「何を話したらいいんだろう」って緊張してしまうタイプでした。
それが今、フリーランスになって、初めて会う相手と話をするときには、まったく緊張しないで雑談ができています。
思うに、今の雑談は「相手と親しくなりたい」という思いで話しているから質問が自然に出てくるのです。
図らずも、柿内さんが意識して変えた「雑談の目的」を実践していたというわけです。
雑談は何を話してよいかがわからないから苦手という方。
ぜひ、雑談に「相手と親しくなる」という目的を設定して、相手に質問を投げかけることを意識してみてください。たぶん、雑談の時間が短く感じられるようになります。
(文/西沢泰生)
【参考:『バナナの魅力を100文字で伝えてください』柿内尚文著/かんき出版】