2022年、世はまさに「キャッシュレス時代」である。「いまどき現金なんて持ち歩かないよ。スマホがあるからよくない?」という人も多いのではないだろうか。あらゆるお店で、なにかしらの「ポイント」が付与され、そのポイントを上手に活用しながら、お得に日常生活を送る「ポイ活」という言葉は、コロナ禍において特に盛り上がったワードだ。
そんなポイ活をフル活用し、「ポイ活の達人」としてSNSでポイント情報を発信しているのが、お得オタクこと、しんぽいさんだ。YouTubeをはじめとするメディアで発信したり、大学生に向けて講義をおこなったりと、キャッシュレス時代における「お金のプロ」といっても過言ではない。
今回は、そんなしんぽいさんにインタビュー。「なぜここまでポイ活にハマったのか」「初心者でも簡単にできるポイ活は?」など、気になるテーマについて伺った。
18歳にして1年で150万円ためるも、37歳で“暗黒期”に
──まず、すごく気になっているんですが、しんぽいさんって、これまでいくら分のポイントをためたんですか?
「そうですね……累計はちょっとわからないんですが、’21年だけで520万ポイントためました。いまはもう、お金を使わずに生活しています。日用品や食品はすべてポイントで支払ってるという状況ですね」
──いやいや、もう尋常じゃないっすね……。それと、毎日のようにYouTubeやTwitterで、膨大な量のポイント・キャンペーン情報を発信しているのもすごい。この情報はどうやってキャッチしてるんでしょうか。
「頻繁に見ているのはTwitterですね。ポイ活の情報を発信しているアカウントは常に追っています。
それと、企業が出すプレスリリース情報も毎日追っていますね。キャンペーンって“先着〇名様”みたいな早い者勝ちパターンがあるので、情報の鮮度が重要なんです。『PR TIMES』(国内最大級のプレスリリース配信サイト)などのリリース媒体は必ずチェックするようにしています」
──なるほど。PR TIMESまで使ってるんですね。ポイントへの“熱”が、もうハンパないんですが、ここまでお得な情報を追いかけるようになったきっかけは何だったんですか?
「20代のころから自営業をしているんですが、約5年前、37歳のときに事業が傾いてしまったんです。でも、不調だからって仕事は休めない。“スキマ時間でなにかお小遣い稼ぎができないかな”と思っていたときにポイ活を知ったのがきっかけでした」
──ちなみに、子どものときにお金で苦労したことなどは?
「まったくなかったですね。お金についてはじめて意識したのは高校を卒業したあとかな。子どものころから洋服が好きで、愛媛に住んでいたので、東京の服飾専門学校に行きたいと思ってました。それを親に伝えると“好きなことをするんだったら、自分でお金をためなさい”と。それで18歳で就職して、寮生活をしながら貯金し始めたんです」
──18歳でいくら貯金できたんですか?
「1年半で150万円くらいです。給料は月に20万円弱だったんですけど」
──ということは月10万弱の貯金……すごい。18歳で、なかなかいないですよ。もともとストイックなんですかね。
「そうですね。自分には厳しいほうだと思います。他人にも厳しいですけど(笑)。ただ、10代のころは浪費家な一面もあって、当時なぜか、限定2000台だったミニクーパーの『モンテカルロ』っていう車を、200万円で買ってしまったんですよね。
あれはほんと……当時の自分を叱りたいです。“限定”に弱かったんでしょうね。今は30万円の中古車に乗っていますが、何の不便もない。走れば一緒ですからね(笑)」
──なるほど。お金の大切さを知った今なら気づけるというか。
「本当にそうですね。でも、手放すときに150万円で売れたことで、価値があるものは売るときに得をするっていう“リセールバリュー”に気づけたのは大きかったと思います。そういう意味では、いい勉強でした」
──その後は150万円を元手に、服飾の専門学校に?
「いえ、実はその1年半で“役者になる”という別の目標ができて、20歳くらいのころに上京して『劇団民藝』に入ったんです。それで5年間ほど、バイトをしながら役者をしていました。
そのあと、25歳で結婚をしたときに、いよいよ“役者だけでは食っていけないな”と思って今の自営業を始めたんです」
──起業をしてからは順調だったんでしょうか。
「はい。同年代で就職している子よりは稼いでいたと思います。お金持ちというわけではないですが、毎年欠かさず家族と旅行をしたり、記念日には高級なレストランで食事をしたり……。順調でしたね。
でも’17年、37歳のときに事業が傾いてしまいました。家計が火の車になって……。せっかく子どもの誕生日なのに、ラーメンしか食べられなかった。それでも、当時は1杯のラーメンがぜいたくだったんですよ」
──かなり切羽詰まった状況だったんですね。
「はい。これから事業が先細りになっていくのもわかっていたので、“このままじゃヤバい”という焦りもありましたね。そのときにポイ活を知って、本当に”お小遣いになるかな”くらいの感覚で始めました」
ゲーム感覚で楽しむ“ポイ活”、初心者の方は「楽天」がおすすめ
──ちょっとした小遣いどころか、そこから4年後の’21年には年間520万ポイント以上になるわけですよね(笑)。まず、何からはじめたんですか?
「もともと現金至上主義だったんですが、まずはクレジットカードを作りましたね。クレカで買い物をすると数ポイント戻ってくるじゃないですか。そのときに快感があったんですよ。それと同時に“今までずっと損していたのか”っていう悔しい気持ちがあって……。当時は生活が苦しかったこともあり、たった数ポイントが本当にうれしかったんです。
それからはもう、ゲーム感覚です。例えば、1万ポイントたまったら、月の電気代をポイントで払えるじゃないですか。そうしたら“よっしゃ、ポイントで電気代を倒したぞ!”みたいな(笑)。すると、ポイ活が楽しくなっていくんですよね」
──確かにゲーム感覚だと、めんどくさいとか思わずに気軽に楽しめそう。
「そうなんですよ。“ためるぞ”と思ってしまうとめんどくさいんですけど、ゲーム感覚だと気楽にできます」
──それでも、やっぱりポイ活で挫折しちゃう方もいると思うんですが、初心者の方でも上手にポイ活するコツはありますか?
「まずは自分の属する”経済圏”を意識することが大事ですね。例えば、携帯キャリアがソフトバンクだったら『PayPayポイント』がベースになり、PayPayが自分の経済圏になりますよね。その場合は『PayPay決済』『ソフトバンクカード』『PayPayモール』など、連携したサービスを使ったほうがいいです。ただ生活しているだけで、自然とポイントがたまる仕組みができあがります。
たくさんあるなかでも、初心者の方だったら“楽天経済圏”がおすすめですね」
──どうしてですか?
「『楽天ポイント』ってたまりやすいし、使いやすいんですよ。楽天のECサイトでは、ほぼ毎月“楽天お買い物マラソン”というキャンペーンがあって、10店舗回ると、たまるポイントが全店舗で10倍になります。これが、めちゃめちゃ大きい。
例えば、毎月の日用品を楽天お買い物マラソンでまとめて買ってしまえばいいんです。10店舗以上でお買い物をすれば、それだけで10倍のポイントが返ってきます。するとポイントが目に見えてたまるので、やりがいを感じやすくなるんですよね」
──すごい。めっちゃお得だ……。
「また、楽天ポイントはガソリン、車検、配送、脱毛などなど、対応店舗がすさまじく多いんです。これも、“ポイントでガソリン代が浮いちゃったよ”みたいに“お得感”を抱きやすい。だから、初心者の方がハマるきっかけになるんです」
──それこそ“ゲーム感覚”で楽しめるんですね。
「はい。ちなみに裏技として、私は楽天お買い物マラソンでふるさと納税をしています。10店舗で、それぞれ1000円のふるさと納税をする。こうすれば全店舗から10倍のポイントが返ってくるし、住民税や所得税が控除され、返礼品ももらえる。一石三鳥です」
──さすが、お得がうますぎます。ちなみに、いま注目のキャンペーンはありますか?
「“三井住友カードでのクレカ積み立て”と“ソラシドエアのマイル”を組み合わせたキャンペーンが熱いです。『三井住友カードゴールド(NL)』を使い、『SBI証券』の投信積み立てサービスを利用すると、100円あたり1ポイントたまります。毎月5万円を積み立てた場合には500ポイントたまり、年間で6000ポイントになります。
それをソラシドスマイルクラブでマイルにすると、1ポイントあたり2マイルになるんです。結果、6000ポイントが倍の12000マイルになる。SBI証券で毎月5万円を積み立て投資するだけで毎年、マイルで沖縄旅行に行けちゃうんです(笑)。意外と知られていないですけど、これはおすすめですね」
「生活を切り詰める」ではなく「ポイントで打ち勝つ」という発想
──ポイ活って「めんどくさいかも」って思っていましたが、お話しを伺うとめちゃめちゃ手軽に始められることに気づきますね。
「そうなんですよ。例えば、1%消費税が上がると“ヤバい!”って気持ちになるのに、買い物するだけで2%返ってくるキャンペーンは、めんどくさがっちゃう方が多いと思います。まずは気軽にやってみてほしいですね。
多くの方はお金がなくなると“生活を切り詰めること”を考えると思うんです。それを“ポイントで苦境に打ち勝つ”という発想に変えてみると、面白さに気づけるのかな、と」
──生活が破綻しかけた経験のあるしんぽいさんが言うと、さらに説得力があります。
「実際、お金がなくなって先行きが見えなくなると“何をどう変えればいいかわからない”という焦りが生まれるんですよ。今の仕事では復活できないのはわかっている。でも、働くのをやめるわけにはいかない。そういった状況でも、ポイ活だったらスマホだけでできます。
私自身がポイ活に助けられましたし、初めてやってみたときは、“なんで今まで知らなかったんだろう……”と損した気持ちになりました。だからこそいま、お得な情報をTwitterやYouTubeで発信しているんです。
なので“少しでもお金を切り詰めたい”とか“もう少し貯金できるようになりたい”と思っている方にこそ、ぜひ見にきてほしいですね。それで“ポイ活沼”にハマってもらえたら本望です」
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人生を救われたからこそ気づく、「1円のありがたみ」
ポイ活がめんどくさいと思ってしまうのは、“たった数%の還元率のためにそこまでやらなくても……。”というのが、ひとつの理由だろう。例えば、バーコード決済などで100円の買い物をすると通常1円くらい戻ってくるが、この1円のありがたみを実感できないと、ポイ活は続かない。
しんぽいさんは一度、生活が崩れてしまったが、「クレカ支払いの数ポイントがうれしかった」と当時を振り返る。ポイ活の楽しさに気づいたのはもちろんのこと、お金のありがたみをリアルに体感できたことも重要だったのだ。
そんなしんぽいさんは前述のように、「私はポイントを知らないだけで損をした。だからいま苦しい人にこそ、お得な情報を把握してもらいたいんです」と語る。この利他の気持ちの裏には苦労があり、だからこそ、その言葉には説得力がある。今の生活を少しでも改善したい方は、ぜひ彼のSNSをのぞいてみてはいかがだろうか。
(取材・文/ジュウ・ショ)
しんぽいさんTwitterアカウント→@shinpoi_otoku