2018年に、演劇ユニット『浅草軽演劇集団・ウズイチ』のメンバーとしてデビューし、翌年に出演したAbemaTV『白雪とオオカミくんには騙されない』で一躍話題になった、今注目の若手俳優・鈴木康介さん。そんな鈴木さんが、本田響矢さんとW主演を務めるドラマ『ジャックフロスト』が現在放送中です(毎週木曜深夜1:29~MBSほか ※全6話)。
数々のBLドラマを放送してきたMBS『ドラマシャワー』枠で、初の完全オリジナル作品となる本作は、本田さん演じる律が、事故で恋人・郁哉に関する記憶だけを失ってしまったことをきっかけに、複雑な想いが交錯する「両片想い」のストーリーが展開されます。
インタビュー前編では、本作で恋人に記憶をなくされた営業マン・池上郁哉を演じた鈴木さんに、演じる中で感じたことや役への思い、ドラマの見どころなどを伺いました。
自分にないものを持っている人は魅力的
──ドラマの公式サイトのコメントで「郁哉は自分と共通点が多く、演じると自分の素をさらけ出している感じがして少し恥ずかしい」とおっしゃっていましたが、特にどういうところが似ているなと思いますか?
郁哉はものすごく「面倒みたがり」なタイプで、自然と誰かのお世話をしたくなっちゃう人なんです。僕自身もそういう部分があって、5歳年の離れた弟がいるのですが、ついつい何かしてあげたくなっちゃうんですよ。なので、弟からは「いや、そんなこと頼んでないじゃん」って嫌がられることもたまにあるんですけど(苦笑)。そういったところは郁哉とすごく似ているなと思います。
──男性に恋愛感情を持つ役を演じるうえで、何か心がけたことがあれば教えてください。
特に「こうしよう」と考えていたことはなかったですね。キスシーンやベッドシーンでは律役の本田くんとリハーサルで実際の動きを確認して、監督とも「この流れで2回くらいキスできたらいいね」と事前に準備もしましたが、僕がキュンとしたらそのときの感情を演技として表すというか、そういう現場で感じた一つひとつの感情をそのまま表現できたらいいなという思いでやっていました。作品をご覧になったみなさんにそれがどう映るのか楽しみですね。
──演じている中で、ご自身がキュンとしたときの表情や仕草が、そのまま郁哉の芝居になっていた、という感じなんですね。
そうですね。台本に「キュンとした」って書いてあるからキュンとしているわけじゃなくて、その場で自分が律にすごくときめいた感情を、郁哉として表していました。
──演じていて、律のどんなところが「好きだな」と思いましたか?
天才に惹(ひ)かれるというわけじゃないですが、律は何でも感覚でやっているじゃないですか。絵が上手なところは自分にはないものだし、イラストレーターという人に出会ったのも律が初めてだったから、そういったアーティスティックな一面を尊敬している部分もあるし、自分にないものを持っている人は魅力的ですよね。あとは、律の顔もタイプだったと思います。「かわいい顔だな」って。
――事故によって、恋人である自分の記憶だけなくなってしまったことによる切ない展開ですが、「両片想い」のどんなところが一番切なかったですか?
いっぱいありましたけど、郁哉が過去を思い出して回想に入る前のシーンを、その回想シーンの前に撮ることもあったんです。自分の中で「昔はこうだった」と思っていたこととは逆の順番で撮影したので、「昔はこんなにラブラブだったんだ」って後から知ったときはちょっと切なくなりましたし、想像していた過去よりももっとしんどいことだったときは胸が痛くなりました。
普通のごはんだから、見ている人も想像しやすい
──作中で何度か登場する、郁哉が料理を作ってふたりで食べるシーンが大好きです。「食事をともにする」という時間がふたりにとってどんな意味があったと思いますか。
今作において食事のシーンはすごく大事で、ふたりにとってもとても大切な時間だったと思います。2話に出てきた回想シーンで「おそばができたから食べよう」と声をかけたけど、律がイラストに集中していて「今はまだ食べない」ということもあったり、記憶をなくした今、向かい合ってまた一緒に食べてくれたり。そのどれもが、郁哉にとってはかけがえのない時間だと感じました。
この作品も見てくださる人が二人を身近に感じる理由のひとつに、郁哉が作るメニューがどれも普通のごはんであることだと思うんですよ。味はおいしいけど、豪華じゃない。だから見ている人も、味の想像がしやすいんじゃないかなって思います。
──確かに、これまで郁哉が作っていたのは、チャーハンやおそば、カレーなど、どれも一般家庭で作るものばかりでしたね。
よくドラマに出てくるお料理って、見たことのないような豪華なメニューなことが多いじゃないですか。「なんだこれ、おいしそう!」とは思うんですけど、今作ではあえてリアルな部分を追究しているからこそ内容も入ってきやすいですし、見ている方も共感できるところが多いのかなと思います。
──1話で、律が自分に関することだけを覚えていないとわかったときの郁哉の表情や目線の動かし方、息遣いだけで、郁哉の複雑な心境を表現されているなと感じ、とても心に残っています。
表現の仕方ってたくさんあるじゃないですか。一番わかりやすいのは、セリフを言えばその答え合わせができるけど、何もセリフを言わずに数秒間「無の時間」がお茶の間に流れる。そのときに僕がしくじった演技をしたら、作品を台無しにしてしまうっていう怖さはありました(笑)。
でも、普通だったらモノローグを入れたくなりそうなシーンですが、そこを郁哉の顔のアップだけで長く時間を使っていただけたので、僕のことを信じてくださった安川監督と高橋監督に感謝しています。
再生時間を速めず、「間」も楽しんでほしい
──モノローグにはあまり頼らず、表情や目線だけで表現するのは、繊細なお芝居が要求されますよね。
もちろんモノローグも素敵なんですけど、無音の時間が圧倒的に多かったり、モノローグが少なかったりすると、見ている人も役者の表情や仕草に集中するじゃないですか。今って、映像作品を1.5倍速で見たりラジオ感覚で聞いたりする人が多いですが、そうしてしまうと伝わらない瞬間も多いと思うんです。なので、できればドラマなどの映像作品はその時その瞬間を逃さずにゆっくり見てほしいなと思います。
──きっと1秒ぐらいの間でも、それには意味があって役者さんたちが演じられていると思うので、それを速めて見てしまったら感情の機微みたいなものが伝わりにくいんじゃないかと思うんですよね。
僕、長く話をしている人の動画を見るの好きなんですけど、YouTuberの方の中には話を切ってつなげた編集動画を上げている人がいるじゃないですか。それだと、なんだか人間味がなくなるというか、やっぱり「間」って大事だと思うんです。次の言葉を探す瞬間に、人間らしさを感じます。俳優が演じているときって脳も動かして芝居しているので、そういう些細(ささい)なところも画面上で表現できたらいいなと思います。
後編では、鈴木さんの内面や、気になるプライベートに迫ります!
(取材・文/根津香菜子、編集/福アニー、撮影/松嶋愛、ヘアメイク/カスヤユウスケ(ADDICT_CASE)、スタイリスト/emi ito(ADDICT_CASE))
【Profile】
●鈴木康介(すずき・こうすけ)
1997年12月19日生まれ、愛知県出身。2019年のAbemaTV配信番組『白雪とオオカミくんには騙されない』への出演で一躍話題に。その後、ドラマ『赤ひげ』(NHK)シリーズなど話題作に出演。主な出演作は『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』『彼女、お借りします』『高良くんと天城くん』など。5月に舞台『ウィングレス(wingless)ー翼を持たぬ天使ー』の出演を控えている。
【Information】
●ドラマ『ジャックフロスト』
監督:安川有果、高橋名月
脚本:安川有果、高橋名月、船曳真珠
原案:窓霜
出演:本田響矢、鈴木康介、森愁斗、祷キララ、松本怜生
毎週木曜深夜1:29(※5話は1:34)よりMBS他にて放送(全6話)
TVer、MBS動画イズム、GYAO!で見逃し配信1週間あり