若手漫才師らがその面白さを競う2大コンクール『ytvお笑い漫才新人賞』(読売テレビ系。以下「ytv」)と『ABCお笑いグランプリ』(朝日放送テレビ系。以下「ABC」)で史上初の、同年W優勝を成し遂げた『カベポスター』。ボケとネタ作り担当の永見大吾さんと、ツッコミ担当の浜田順平さんによる漫才コンビです。先日、情報番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)に出演して松本人志さんに初めてお会いしたというふたりに、ネタ作りの秘訣や、2年連続で準決勝まで進出しているM-1グランプリへの思いを聞きました。
《結成秘話や関西の若手スターになるまでを追ったインタビュー第1弾→関西2大賞レースを制覇した『カベポスター』、互いに「うまくいかなそうやな」と思うも漫才コンビを組んだワケ》
松本人志さんからの思いがけないコメントにびっくり
──ABCは松本人志さんもご覧になっておふたりの漫才を絶賛、『ワイドナショー』で共演されたときも、楽しそうな雰囲気でした。
浜田さん(以下、浜田):ABCに優勝した直後、松本さんがTwitterで《カベポスターは二本共に安定の面白さ》と、うれしい感想をつぶやかれていて、びっくりしました。『ワイドナショー』は緊張しましたね……松本さんとも初対面でしたし。
──逆に、永見さんって緊張とかしないタイプですか? 最初から最後まで、緊張が見えなかったのですが……。
永見さん(以下、永見):えっ! 緊張してましたよ。緊張が顔に出ないタイプかも。偉大なお方を前に、ずっとドッキドキでしたね。
──緊張が顔に出ないと言えば、昨年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系。以下、M-1)に初出場して爪痕を残し、今年『キングオブコント』(TBS系)の決勝進出も決まっている『ロングコートダディ』の堂前透さんも、そんな感じがします。
永見:ロングコートダディさんは同じマンゲキ(よしもと漫才劇場の略称。毎年、若手スターを輩出している)所属で、堂前さんと仲よくさせてもらってます。たまに一緒にネタを書いたり、ネタの相談に乗ってもらったりしていますね。
──先輩と後輩でありつつも、お互いに刺激を与えあう関係なのですね。浜田さんの仲がいい芸人さんは誰ですか?
浜田:たくさんいますけど、可愛がっている後輩は『フースーヤ』の谷口理ですね。まだ6年目なのに独特の漫才をして、ネタも平場もめっちゃおもろいし、自分のほうが先輩やけど尊敬してます。
始まりは、谷口のお父さんと僕の顔が似てるって言って勝手に懐いてくれて。可愛らしいですね。僕に対する失礼具合も尊敬具合もちょうどいい(笑)。
──カベポスターさんもフースーヤさんも、M-1で決勝にいきそうって言われていますね。
浜田:それ最高です!! そうなってほしい。
「しゃべくり漫才」ではなく「好きな漫才」をしているだけ
──M-1でもそれ以外でも、ライバルだと思っている芸人さんはいますか? しゃべくり漫才、正統派漫才と言われて、『オズワルド』さんや『キュウ』さん(タイタン所属)とよく並べられている印象ですが。
永見:好きな漫才をしてたら「しゃべくり漫才」って言われるようになっただけで、自分たちでしゃべくり漫才をしようとしてるわけではないんですよ。
浜田:僕ら正統派ですかね?(笑)。自分たちでは思ったことない。
永見:M-1準決勝で「キュウさん、オズワルドさん、カベポスターはジャンル的に同じ枠だから、そのうちのどのグループかが決勝に行ったら、ほかは行けない」ってとらえられる感じもわかるんですけど、僕はただただキュウさんとかオズワルドさんが好きなので、同じ枠なら、その枠がもっと広がればいいなと思ってますね。キュウさんの漫才とか、見ていてワクワクしますし。
浜田:2組ともめっちゃ面白いんで、同じ枠って言われるのは恐れ多いです。
永見:ライバルは、ytvの決勝で競い合う前から同期として存在を認め合っていた『ダブルヒガシ』です。面白いコンビやし、彼らは同期の中でも結果を残し続けていたので、意識していましたね。M-1でもライバルです。
浜田:僕の場合、お互いに切磋琢磨する関係って意味で、しいてあげるなら、ライバルはダブルヒガシです。でも、「しいて言うなら」ですよ。僕は、ライバルが誰かとか思ったことがない。同期が賞レースでいいところまで進んだら、「悔しい」じゃなくて「うれしい」と思うんです。
──それがM-1でも?
浜田:はい。ytvでダブルヒガシが「カベポスターが優勝してうれしい」と言ってくれたんですけど、僕もダブルヒガシが優勝したら同じことを思ったはず。同期みんなが支えになってる感じです。
──憧れの芸人さんはいますか?
永見:ずっと『さまぁ~ず』さん(ホリプロ所属)に憧れてます。作ってない人柄も、ネタも、ふたりのノリもすべて面白いです。
浜田:めっちゃいっぱいおるんですけど、なりたいのは『サンドウィッチマン』さん(グレープカンパニー所属)。力が抜けてる感じも面白いし、テレビでも劇場でもずっと活躍されていますし、海外でもネタを披露してて、すてきやなと思いますね。
永見さんが台本を作ったあと、ふたりで合わせながらネタを改良
──ネタ作りについてお聞きしたいのですが、今は全部、永見さんが作っていますか?
永見:僕が最後の流れまである程度、台本を書くんですけど、ところどころ空欄があります。浜田のツッコミの部分とか。“こういうふうにツッコんでほしい”とか希望を書いてるんですけど、それを浜田に渡して、ふたりで合わせてみながら変えていきます。
例えば、浜田のツッコミを聞いて「そっちのほうがいいかも。じゃあ、浜田のツッコミのままにしよう」とか、「僕の言い方や台本でわかりにくいところがあるから、ボケをもうひとつ入れとこう」とか。浜田が「こう変えたほうがいいんちゃう?」と提案することもありますね。
──なるほど。永見さんがネタ作り担当ではあるけれど、二人三脚で完成させるイメージですね。ネタでいちばん最初に考えるのは?
永見:設定ですね。見て変やなあって思った出来事とか、大変やったなあって経験、覚えとくようにしてます。
浜田:僕から永見への情報提供は、まったくしないですね。信頼して任せてます。
──M-1の1回戦がもう始まっていますが(カベポスターさんは前年に準決勝まで進んだため、シード権で2回戦から参戦)、勝負ネタはもう決まっていますか?
永見:これからです。ネタを練って、劇場でお客さんの反応を見ながらいろいろ試して、「これは準々決勝、これは準決勝」って感じで決めていくつもりです。
浜田:ホームであるマンゲキで、お客さんの反応から学びます。僕らの漫才を厳しい目で見てくれるし、あったかさもあるし。マンゲキはお客さんと先輩、後輩、スタッフのみなさんが、好きなことやらせてくださるんです。
──そこから面白いネタが誕生するんですね。
「M-1決勝いくぞ!」ふたりが目指す先にあるものは
浜田:今、ふたりに共通する目標は、「M-1で決勝にいきたい、優勝したい、決勝で話題になりたい、必要とされたら東京進出したい」ってことかな。ただ「東京行ったるぞ!」とは思ってないです。決勝まで行って、求められたら進出したいですね。
それと、いつか卒業してほかの舞台に立つときも、マンゲキで培ったことは生きると思います。
永見:東京進出はしたいけど、卒業してやっと、マンゲキのありがたみに気づくんやろなあ。今は当たり前の場所みたいな感じなんで。
──おふたりの個別の目標は?
浜田:生の漫才もテレビ出演も、笑いに関することはぜんぶやってみたい。その中で自分たちが得意なものなら楽しくやれるし、ずっと続けられると思ってます。得意なことをやり続けるために、劇場で漫才をするとか、営業で地方に行くことも必要。生の漫才をずっとするのと、テレビ出演、どっちも大事にしたいです。
永見:最終的には家から笑いを提供できたらなと思います。今はまだ動画配信にタイムラグがあるけど、それがなくなったら、家にスクリーンを置いて、その前で座っているかのようにお笑いをやりたい。より家にいられるように頑張りたいですね。
──より家にいられるように……。なるべく外に出たくない感じですか?
永見:というか、移動がしんどいんですよ(笑)。東京に進出しても、家から出ずにお笑いの仕事ができたら幸せ。
──浜田さんも移動の件に関してはツッコまないんですね。
浜田:移動はマジでしんどいですから。
全国を毎日って言ってもいいくらい移動してる『見取り図』さんとかすごいですよ。おれは今のスケジュールでもしんどいって思うんで。
まあ移動の話はともかく、同じ環境でも、面白い人は自然と残っていくはずなので、そうなりたいですね。
──お笑いの劇場に行ったことのない人のほうが多いと思うんですが、そういった方にどうやって自分たちの漫才をすすめたいですか?
浜田:きっとカベポスターはみなさんの想像より、ふたりとも身体が大きいです。その大きさを見に来てください。あと、僕は静かそうに見えるらしいけど、生で見たら思ったより後ろまで声、聞こえますよ。
永見:(ボソッと)たまに聞こえてないらしいで。
浜田:えっ、ほんまに? じゃあ、前のほうで見に来てください。で、永見は?
永見:最近笑ってないんちゃうん? 来てや~!
浜田:なんでそんなコテコテなん。絶対そんなネタせえへんで。
──それでは最後に、今年のM-1への意気込みを!
浜田:決勝行くぞ!
永見:商店街のみんな、俺、頑張るから!
──(商店街のみんなって誰だろう……)おふたりとも、ありがとうございました!
(取材・文/若林理央)
【PROFILE】
カベポスター ◎NSC大阪36期生である、ボケ・ネタ作り担当の永見大吾と、ツッコミ担当の浜田順平によるお笑いコンビ。主にロジカルな構成を特徴としたしゃべくり漫才を行い、よしもと漫才劇場など大阪を中心に活動中。’22年には第11回「utv漫才新人賞」と第43回「ABCお笑いグランプリ」でともに優勝し、活躍の場をどんどん広げている。
永見大吾さんTwitter→@kp_nagami、浜田順平さんTwitter→@jumpei182