会話をしていたら、まったく悪気はないのに、なぜか相手が気を悪くしてしまい、話が続かなくなってしまった……。そんな経験はありませんか。
そんなとき、あなたは「相手が話したいと思っている気持ち」を、知らず知らずのうちに壊してしまっているのかもしれません。
今回は、コーチングのプロフェッショナルである林健太郎氏の著書、『否定しない習慣』(フォレスト出版)から、“相手との会話を円滑にして、良好な関係性を築くための情報も得られるようになる、会話術の鍛え方”についてお伝えします。
「いつも雑談が弾まない……」思い当たる人は要注意
例えば、会社で仕事仲間とのこんな会話。あなただったら何と返しますか?
「昨日ラーメンが食べたくて、いつもの店に行ったら休みだったんだよ」
「バカだな。ネットで調べてから行けばよかったのに」
ありがちな返しです。会話は成立しています。でも、行動を否定された相手は、気を悪くしてしまうかもしれません。あるいは、こんな返し方をする人もいるでしょう。
「昨日ラーメンが食べたくて、いつもの店に行ったら休みだったんだよ」
「それは時間の無駄だったね。でも、人生にはそんなこともあるよ。終わったことは忘れたほうがいいよ」
これもありがちな返しですね。本人は相手に有益な返しをしたと、ご満悦かもしれません。しかし言われた相手は「何をわかったようなことを……」と思うかも。
話の先を読んだ気になって、こんな返しをする人もいるかもしれません。
「昨日ラーメンが食べたくて、いつもの店に行ったら休みだったんだよ」
「そうなんだ。じゃあ、今日はその店に、一緒にラーメンでも食べに行く?」
こんなことをわざわざ言ったのは、“昨日食べそこなったのだから、今日こそは食べたいと言うに違いない”と考えて、先回りしたのですね。一見、気が利いているように見えますが、実はこれも的を射ていません。
では、相手と良好な会話を進めるためには、何と返すのが「正解」なのでしょうか?
先の会話を予想して、「6行会話」をつくってみる
林さんによると、コーチングの世界では、「過去」ではなく「未来」に目を向ける「未来志向」に重きを置いて発想するそうです。
ですから、会話では相手の言葉を聞いたとき、「この先、どんな会話が展開されるだろうか?」と想像することが大切。
その練習として最適なのが、まるで自分が脚本家になったつもりになり、会話の続きをシナリオにしてみることなのだとか。シナリオ化が難しいのであれば、6行くらいの会話にしてみるだけでも「未来志向」が鍛えられるとのこと。
では、ちょっとやってみましょう。
会話の1行目は「昨日ラーメンが食べたくて、いつもの店に行ったら休みだったんだよ」に対する「受け答え」です。
さあ、何と言うか?
答えは簡単で、まずは相手の言葉を復唱するのがベストなのです。
「へえ、そうなんだ。いつも行く店に行ったら休みだったんだ」
この1行目ができれば、あとは想像力に任せて、2行目は何でもオーケー。
「それでさ、仕方ないから、初めて行くラーメン屋に行ってみたんだよ」
それを受けて、3行目も復唱です。
「そうなんだ。初めてのラーメン屋に行ったんだ」
そして、4行目。
実際に6行会話をつくるとわかりますが、ここで初めて、相手は「本当に言いたかったことを言ってくれます。例えばこんな感じ。
「そしたら、すごくおいしくてさ、いつも行く店が閉まっててよかったよ」
やっと相手が「言いたいこと」を言ってくれましたから、次はあなたの思うことを伝えます。
「そんな店があったんだ。もっとくわしく教えてよ」
最後の6行目に、“あなたの言葉に対して相手が返してくると思う”言葉を書きます。
「お店のホームページのURLを送るよ。そのうち、一緒に行こう」
出来上がった会話は次のとおりです。
「昨日ラーメンが食べたくて、いつもの店に行ったら休みだったんだよ」
「へえ、そうなんだ。いつも行くラーメン屋に行ったら休みだったんだ」(復唱)
「それでさ、仕方ないから、初めて行くラーメン屋に行ってみたんだよ」
「そうなんだ。初めてのラーメン屋に行ったんだ」(復唱)
「そしたら、すごくおいしくてさ、いつも行く店が閉まっててよかったよ」(相手が伝えたかった本題)
「そんな店があったんだ。もっとくわしく教えてよ」(あなたの考えや意向)
「お店のホームページのURLを送るよ。そのうち、一緒に行こう」
相手の言葉に対して、こんな「6行会話」をつくる想像をして練習することで、コミュニケーションがスムーズに運び、人間関係が良好になる会話術が鍛えられるのです。
たしかに、少し想像力を働かせて「6行会話」をつくってみると、最初に例にあげた、相手の「本当に言いたいこと」をつぶしてしまう「返し」が、いかに“不毛な返し”であったかがよくわかります。
相手との会話がうまく進まないと悩んでいる方。ぜひ、「相手の最初の言葉に対する6行会話」を、つくってみてください。
※参考:『否定しない習慣』(林健太郎著 フォレスト出版)
(文/西沢泰生)