雑食性のゴキブリは、なんでも食べると言われています。「人間の髪の毛を食べる」とも言われていますが、本当なのでしょうか? ゴキブリはどんなものを好んで食べるのか、今回もアース製薬で研究用の虫を飼育している有吉立さんに伺います。
フムフムな発見5:ゴキブリには鼻がない!でも触角でニオイを感知する
「家に入ってくるゴキブリは雑食性なので、なんでも食べます。特に、今まで食べたことのないものを食べたがる傾向があるのがこれまでの研究でわかっています。肉ばかり食べていたゴキブリは野菜や魚を食べたがり、野菜ばかり食べていたゴキブリは肉や魚を食べたくなるようです。
『ごきぶりホイホイ』の誘引剤(ゴキブリをおびき寄せる疑似餌)には、ビーフ、エビ、野菜などの成分を入れて、どの種類のゴキブリも好んで食べるようにブレンドしています」
──食わず嫌いをしないで、新しい食べ物にチャレンジするんですね。
「そういった意味では好奇心旺盛とも言えますね」
──『ごきぶりホイホイ』の誘引剤は、カツオのふりかけのような匂いがします。
「でも、ゴキブリにはニオイを嗅ぐ鼻という器官がないんです。その代わり触角に生えている微細な毛で、ニオイを感知します。ゴキブリにとっては重要な器官なので、『ごきぶりホイホイ』の粘着シートに触角が触れるのを嫌がります。
また、ゴキブリは後ずさりができません。『ごきぶりホイホイ』は入口部分がスロープ状になっているので、いったん入ろうとするともう逃げられないんです」
──ゴキブリは後ずさりできないんですね。貴重な情報を教えていただきました。
フムフムな発見6:ゴキブリもヘビやセミみたいに脱皮をする?
──ほかにもゴキブリについて意外な情報はありますか?
「実は、ゴキブリも脱皮をします。脱皮した直後のゴキブリは真っ白で、体も非常に柔らかいんです。ゴキブリは飢えていると共食いもするので、脱皮したばかりのゴキブリは仲間に食べられることがあります。わたしも見たことがあるのですが、脱皮するときは無防備なので、餌がないと襲われやすいんです」
──ゴキブリが脱皮をするなんて、まったく知りませんでした。脱皮も命がけですね。
「だから人目に触れるような場所で脱皮することはありません。飼育していると、脱皮するところを見ることができますけど、一般家庭ではまず見られないでしょう。脱皮してすぐの状態で見つかると、簡単に駆除される可能性が高くなりますから」
──脱皮した殻も見たことがありません。
「脱皮殻も自分で食べるから、人目につかないんです。ゴキブリは脱皮した抜け殻を食べて、自分の栄養にします」
──ゴキブリが脱皮するのは1回だけですか?
「いえ、何度か繰り返します。チャバネゴキブリで5~6回、クロゴキブリで10回前後です。脱皮を繰り返して、最後に羽が生えると成虫になるので、それ以上は脱皮することはありません。脱皮した直後は真っ白ですが、1日たつと黒くなります」
フムフムな発見7:『ブラックキャップ』は共食いをする習性を利用!
──ゴキブリは『ブラックキャップ』を食べた仲間が吐き戻した吐瀉(としゃ)物や糞(ふん)、死骸を食べて倒れてしまいますね。
「『ブラックキャップ』に含まれるフィプロニルという有効成分を摂取すると、ゴキブリは興奮が止まらなくなります。有効成分が神経の伝達や筋収縮、感覚などに作用して興奮した状態が続き、最終的にはひっくり返って死んでしまいます。
フィプロニルは摂取後も成分が分解されずに、そのまま死骸や排せつ物に残ります。だから、ゴキブリが共食いをして仲間の死骸を食べると、それはそのままフィプロニルを摂取することになるんですね。『ブラックキャップ』はゴキブリが共食いをする習性を利用した商品なんです」
──ゴキブリは仲間だけでなく、人間のフケや髪の毛も食べると聞いたことがありますが?
「ネットなどには“人間の髪の毛も食べる”と書いてあったりしますが、わたしたちの実験では、人間の髪の毛は食べませんでしたね。でも、フケなら食べると思います。フケのついた髪の毛に群がっているから、髪の毛を食べているように見えたのかもしれません」
──飢えたゴキブリが直接、頭にフケを食べにくることはありませんか?
「もしフケを食べに来たとしても、その前に人間が触ろうとするから、空気の動きを尾毛で感じて逃げるでしょう。だから直接、食べにくることはないと思います。
ただ、小さなチャバネゴキブリが耳の中に入り込んだ事例はあります。ゴキブリは背中が天井に擦れるくらい狭い空間や、側面がぴったりくっつくような隙間を好む生き物です。古新聞を積み重ねたまま放置しておくと、わずかな隙間に入り込もうとするなど、とにかく狭いところを好むんですね。チャバネゴキブリは体が小さいので、温かい耳の穴に入り込もうとする可能性はありますが、すみつくことはないでしょう」
──本当になんでも食べるんですね。
「飼育室で紙をかじっているのを見たことがあります。紙だけを置いて、しばらくするとボロボロになるんですよ」
アース製薬さんの『ブラックキャップ』は、食欲が旺盛で共食いまでしてしまうゴキブリの習性を利用して開発された商品だったのですね。次回はゴキブリの繁殖力のすごさや効果的な駆除の方法を紹介していきます。
◎第3回:【Gの生態#3】ゴキブリ退治の基本は待ち伏せ!後ずさりできない習性を利用する(8月27日18時公開予定)
(取材・文/久保弘毅)