今年は初夏のころから異様なほどに暑く、関東地方は6月に梅雨が明けたり、6日連続の猛暑日を迎えたりするなど、観測史上初となる記録が続きました。いったんは暑さも収まりましたが、7月の海開きに合わせるかのように本格的な夏が訪れました。
夏と言えば紫外線の季節。言わずと知れた“お肌の天敵”です。強い日差しから肌を守るにはどうすればいいのか、紫外線の秘密を探るため、株式会社コーセーの研究所を訪れ、紫外線の基礎研究やUVケア商品の品質評価をしている研究員・後藤祐一郎さんにお話を伺いました。
フムフムな発見1:紫外線はラジオやテレビと同じ“電波”の仲間だったの?
「AMラジオやFMラジオを聴くには“周波数”を合わせますが、それと同じように、紫外線にも周波数があります。私たち研究員はラジオも携帯電話も紫外線も同じ“仲間”という認識ですが、AMラジオの周波数が105Hz、電子レンジや携帯電話の周波数が109Hzなのに比べると、紫外線は1015Hzと桁がぜんぜん違うので、一般の方は違うものと思っておられるのかもしれません」
──10桁も違っていたら同じ仲間とは思えませんね。
「そうですね(笑)。紫外線になると“電波”とは言わず、“光線”と言います。赤外線と遠赤外線、可視光線、紫外線の4つが太陽から出ている光線、すなわち太陽光になります」
──赤外線や遠赤外線は、調理器具やコタツなどを紹介するときによく耳にしますね。
「遠赤外線は人間の身体と相性がよく、温熱効果があるので血行や代謝を促進するなど、身体の奥のほうまで温めるんですね。だから岩盤浴などでも利用されています。
紫外線は赤外線より周波数が高く、さらに周波数が高い光線がエックス線やガンマ線などの“放射線”です。ガンマ線やエックス線もレントゲン写真など、医療の分野で利用されていますが、放射線は人体に悪影響を及ぼすので、周波数がエックス線に近い紫外線も、長時間浴び続けると人体にさまざまな影響が出てきます。皮膚がんなどは典型的な例でしょうか」
──なるほど。だから紫外線には注意しなければならないんですね?
「そういうことです」
フムフムな発見2:英語でUV(ウルトラバイオレット)を日本語だと“紫外線”と言うのはなぜ?
──そもそも、どうしてUV(ウルトラバイオレット)を“紫外線”と言うんですか?
「それにはまず“可視光線”についてご説明しなければならないのですが、可視光線というのは目に見える光のことで、わかりやすく言えば“7色の虹”です。プリズムを通すと、光は“波長”の違いによって7色に分類されます。この分類を“スペクトル”と言いますが、可視光線は波長が長いと赤色に見え、波長が短いと紫色に見えます」
──波長が長いというのは……?
「光は波のような性質を持っていて、波長が長いと波のかたちが緩やかで、光の持つエネルギーも弱くなります。逆に波長が短いと、バネみたいにギザギザした感じになってエネルギーも強くなります。
赤外線は波長が長く、エネルギーも弱いので人体に急激なダメージを与えることはないのですが、波長が短い紫外線はエネルギーも強くなるのでそれだけ人体に与えるダメージも大きくなり、注意が必要になるんです」
「可視光線は波長が短い順に、“紫→青→緑→黄色→オレンジ→赤”と並びます。紫色の可視光線よりもさらに波長が短く、可視光線に含まれない(=目に見えない)光が“紫外線”です」
──可視光線という枠でくくった“外”にあるから紫外線?
「そうです。“紫”色の“外”にある“光線”だから“紫外線”です。逆に波長が長く、可視光線の赤色の外側にある光が“赤外線”です」
──誰が考えたんだろう。やっぱり高名な科学者が命名したのでしょうか?
「すみません、そこまではちょっとわからないんですが……、日本語に翻訳するときにどなたかが考えた造語だと思いますが、すごいセンスですよね」
紫外線と赤外線の違いや、紫外線に気をつけなければならない理由がちょっとわかってきました。では、どんなふうに気をつければ紫外線を予防できるのか、次回も引き続きコーセーの研究員・後藤祐一郎さんにお話を伺います。
◎第2回:【紫外線#2】UVBは肌に急激なダメージを与え、UVAはジワジワとダメージを与える(8月13日13時公開予定)
(取材・文/志谷恭作)