「元気モリモリ、高森浩二がお送りしました!」
すき家に足を運んだことのある人なら、一度は耳にしたことがあるフレーズ。2014年のスタートから早9年、店内放送としてロングランの「すき家RADIO」は、どのような経緯で始まったのでしょうか? 放送の目的は? どんな人たちが聴いているのでしょうか?
そんな気になる疑問を解消するべく、担当者を直撃。「私がいちばんのすき家RADIOファンです」と語る、すき家RADIOの運営に携わるすき家Web販促担当の溝口祐樹さんにお話を伺いました。前後編のインタビューでお送りします。
最初はひとりのリスナーとして聴いていた、すき家RADIO
──溝口さんはいつからすき家RADIOの担当になったのでしょうか?
「2022年の4月からです。まだ日は浅いですが、私がすき家の店舗で働いていたときからひとりのリスナーとして聴いていたので、抜擢(ばってき)されたときは“まさか自分が!?”と身が引き締まる思いでしたね」
──最初はリスナーとして耳にしていたんですね。初めてすき家RADIOを聴いたときのことは覚えていますか?
「最初は店内で普通のラジオが流れているのかなと思ったら、よくよく聴くとすき家にフォーカスしている内容だったので、“あれ、なんか違うな?”と(笑)。それまではずっとUSEN(USEN-NEXT GROUP)さんの放送を流していたのに、DJの方がしゃべっているので驚きましたね。高森さんの軽快なトークで、トレンドの曲とか懐かしソングが聴けるので、おかげさまで楽しく店内の時間を過ごせました。すき家RADIOとともに私もキャリアを積んでいった感じですね」
──店舗から本社勤務となったのはいつですか?
「2015年に本社勤務となりました。ただ、今でも仕事で各地の店舗に足を運ぶことはありますし、プライベートでもすき家は利用するので、店舗へ行ったときはすき家RADIOを必ず聴くようにしていますよ」
──すき家RADIO以外の担当業務があれば教えてください。
「Web関連の販促物を中心に、CMのディスプレイやお子様向けのメニューである『すきすきセット』のおもちゃの開発にも携わっています」
アドリブから生まれた、あの印象的なフレーズ
──けっこう手広くやられているんですね。そもそも、すき家RADIOはどのような経緯でスタートしたのでしょうか?
「すき家でしか聴けない内容で、お客さまの気持ちが自然と高まるような、そんなラジオを目指して2014年の7月にスタートしました。最初は高森さんによる商品紹介などがメインでしたが、2015年の2月から毎回のテーマを決めて、リスナーのみなさまからリクエスト曲を募る形にリニューアルして、よりラジオらしい内容になりました」
──すき家RADIOといえば、パーソナリティを務める高森浩二さんの声が印象的ですが、どのような経緯で高森さんに決まったのでしょうか?
「すき家の店内放送を手がけているUSENさんからのご提案です。すき家RADIOを始めるにあたって複数人のパーソナリティの方をご提案いただきまして、お食事の邪魔をしない、落ち着いた声をということで高森さんにお願いすることになりました」
──高森さんといえば「元気モリモリ、高森浩二がお送りしました!」というキャッチフレーズが印象的ですが、これはどなたが考案したのでしょうか?
「高森さん自身のアイデアですね。番組の締めのあいさつとして、高森さんがアドリブで出していただいたものです。われわれとしてもキャッチーで、とても気に入っています」
──すき家RADIOの基本的な流れは、リスナーからのお便りをもとに高森さんがトークを広げて、最後にリクエスト曲で締めるという構成ですが、番組の制作において意識していることを教えてください。
「大前提として、食事の邪魔にならない内容の番組を心がけています。過度なにぎやかさは抑え、耳当たりのいいトーンでお送りすることですね。そして、日本には二十四節気があり、クリスマス、年末、お正月、受験、春休みといった季節ごとのイベントがあります。そうした季節性を踏まえたテーマを決めてお便りを募集し、お客さまに季節を感じていただける内容を意識しています」
──番組の台本はどの程度、決まっているのでしょうか?
「番組の導入部分については私たちで決めていますが、リスナーからのお便りはそのままの内容を読んでいただき、その後の展開は高森さんにお任せしています。“今回はこんな雰囲気で行きましょう”といった大まかな要望を出すこともありますが、基本的に高森さんの持つ雰囲気を大事にしたいので、お任せしています」
──毎時間の5分から始まる回と35分から始まる回の2本がありますが、内容はどのくらいのペースで更新されているのでしょうか?
「月の前半と後半で2本ずつ、月間で計4本の内容を流しています。4本分の収録を月に1回まとめて行っています。毎回、みなさまから募る曲のリクエストテーマが季節にかかわるため、基本的に録りだめはしない方針です」
──だいたい1回の放送時間は10分くらいでしょうか?
「厳密に何分と決めているわけではないですが、間延びしないよう5~10分の間で収まるようにしています」
リクエストの自演はしてません(笑)
──すき家RADIOのリスナーの傾向を教えてください。
「基本的には老若男女、幅広い世代の方に聴いていただいています。 すき家の客層も幅広いのでリスナーも偏りがなく、おかげさまで全世代に受け入れられているようです。すき家を頻繁にご利用いただいている方はもちろん、たまたまお立ち寄りいただき、放送を耳にしてリクエストを送ってみた、という方もいらっしゃいます」
──ほかの牛丼チェーン店と比べてすき家は早くからテーブル席を導入したり、ロードサイドに出店していたので、幅広い世代のリスナーがいるというのは納得です。
「すき家を展開するにあたって、郊外型の店舗ではファミリーで楽しめることを大事にしてきました。親世代のリスナーさんから、実家を離れて遠方で暮らすお子さまへのメッセージを添えたリクエストをいただくこともあります」
──気になるリスナーからのリクエストですが、数はどのくらい来ていますか?
「こちらは本当につまらない返答で申し訳ないのですが、公表してないんですよ……」
──なんと!
「これだけの数のリクエストをいただいているので、私個人としてお伝えしたいのはやまやまですが、いろいろな事情がありまして……」
──了解しました。では、ちょっと意地悪な質問ですが、番組が始まったばかりのころはリクエストの自演などもやったりしましたか?
「ありがたいことに、最初から多くのリクエストをいただいていたようで、幸いにしてスタッフの自演もなかったと聞いております。この件については私も少し気になっていたので、聞いてみたことがあるんですよ(笑)」
「すき家RADIOを家でも聴きたい!」という熱心なファンも
──ちなみに、人気のあるリクエストテーマなどはありますか?
「やはり、季節感のある卒業ソングやクリスマスソングは多くの方からリクエストをいただきます。アニメの主題歌や、年代ごとの懐かしソングも人気がありますね」
──すき家RADIOにリクエストを送るには、まず「すき家モバイル会員」に登録する必要があるのでしょうか?
「そうですね。若干のお手間にはなりますが、採用された方には特別なクーポンを配信しています。また、会員登録をすると毎週金曜日にお得なクーポンが配信されますので、採用されなかった方にも少しでもメリットを還元できると考えています。『すき家モバイル会員』については、すき家RADIOにご興味のない方も、ぜひチェックしていただければと思います」
──リクエストを受け付けるメールアドレスや、店内に専用のハガキなどが用意されているわけではなく、会員登録をすませたうえでリクエストを送ってくれるということは、“すき家愛”の高いリスナーが多いということですね。
「そうなんです。ひとつハードルを越えたうえでリクエストをくださるわけですから、大変ありがたいかぎりです。リクエストが番組内で採用された方には、牛丼お食事券5枚(※時期によって変更あり)をプレゼントしています」
──現状、すき家RADIOはすき家の店舗でしか聴けないんですよね。ネット上には「すき家RADIOを家でも聴きたい!」といった熱心なファンの声もありました。
「私もWebでの販促活動をメインに手がけている部署に所属しているので、可能であればすき家RADIOのアーカイブなどもやりたいと考えていますが、実現できていません……。リクエストが採用された方がいつでもWeb上で聴ければ喜んでいただけると思うので、挑戦してみたいと思っています(笑)」
インタビュー後編では、みなさんお待ちかね、番組パーソナリティの高森浩二さんにもお話を伺ってきました!
【後編:「すき家RADIO」が長く愛される理由とは? “元気モリモリ”でおなじみのパーソナリティー・高森浩二さんを直撃!】
(取材・文/松山タカシ)