川べりのテーブルで顔がそっくりな姉と妹が待ち合わせ。1人2役で姉妹を演じる女優・石原さとみが向き合ってテイクアウトしたランチを食べる。
「妹は私に似てるけど好きなものが少し違う。私は牛丼、妹は……」
と姉の心の声が流れると、妹がテイクアウトの豚丼をひとくち口に運ぶ。
姉「なにそれ、おいしそう」
妹「とんどん」
姉「とんどん?」
妹「とんどんっ!」
大手牛丼チェーンの「すき家」が9月にテレビCMで流したこのやりとりに、なんとなく惹きつけられた人は少なくないはず。
どうして「とんどん」をそんなに強調するのか。なぜ「ぶたどん」ではないのか。
素朴な疑問をぶつけた。
豚丼じたいは3回目の登場
すき家の広報担当者は「ご質問ありがとうございます」と返してこう説明する。
「牛丼(ぎゅうどん)って音読みですよね。それに従って、同じ音読みで豚丼(とんどん)としています。牛丼を『うしどん』とは呼んでいませんし、白いご飯にタレで煮込んだ豚肉をのせた商品を初めて販売した2004年から『とんどん』というネーミングは変わっていません」
と明快な回答。
言うまでもなく、牛丼チェーン店にとって主力メニューは牛丼にほかならない。しかし2003年、BSE(牛海綿状脳症)によって米国産牛肉の輸入が止まると、食材を確保できなくなった牛丼チェーン各社はさまざまな新メニューの開発に乗り出した。その代表格といえるのが牛肉ではなく豚肉を使ったどんぶり。すき家の『豚丼』も、最初はこれを契機に誕生したメニューだった。
前出のすき家広報担当者は言う。
「今回は“新定番”という位置づけで販売をスタートしましたが、豚丼じたいは3回目の登場になります。最初は2004〜2009年までで、2回目は15〜20年まで。ただ、まったく同じ商品ではなく味はそのつど変えています。ほかのメニュー編成を踏まえて煮込む特製ダレの味つけのバランスを考えたり、そのときどきのお客さまの嗜好(しこう)に合わせます。今回の豚丼は針しょうがを入れているので、さっぱりした味わいを楽しんでいただけると思っております」
つまり、再登場ながらもリニューアルした新商品というわけ。