「君に、新しいプロジェクトのリーダーになってもらいたいんだ」
「業績不振の〇〇支店に転勤して、営業チームを立て直してほしい」
「新人たちの教育係を引き受けてくれないか?」
突然、そんなことを上司に言われたら、ちょっと尻込みしませんか?
人間の脳は、現状維持が大好き。急に新たなチャレンジが目の前に現れると、尻込みしてしまって、「やるか? やらないか?」で悩んでしまうものです。
そんなとき、「これを基準に考えれば、高い確率でいいほうに進む」という考え方をお伝えします。
尻込みしたときは、「警戒音」に注目する
例えば「君に、新しいプロジェクトのリーダーになってもらいたいんだ」と言われたとき。
「待ってました!」と思う人は別にして、「うわっ! 自分にできるだろうか?」って尻込みする人の頭のなかでは、「ウインウインウイン」と、「警戒音」が鳴っているはずです。
やるか? やらないか? で迷ったときは、この警戒音に注目してください。
実は、この警戒音には、大きく次の2種類があるのです。
警戒音2 → やるのは怖いけれど、なんとなくワクワクする。
相手からの言葉を聞いた瞬間、自分の頭の中で鳴り響いた警戒音は、はたして、警戒音1なのか、2なのか? それを見極めてください。
どちらかがわかったら、あとは簡単です。
警戒音1なら、やるのはやめておきましょう。あなたのこれまでの経験が、「この話に乗るな」って、知らせてくれているのです。
警戒音2なら、勇気を出してやってみましょう。あなたの中の「チャレンジしたい」「現状を変えたい」という思いが、「ワクワク」となって警戒音に勝とうとしています。ここが、勇気の出しどころです。
どうして、こんなことが言えるかというと、この「なんとなく」という感覚が、実は高い確率で「正解」だからなのです。
よく、ヤマ勘とか、第六感なんていいますが、これは「根拠のない予想」ではなく、脳がこれまでの人生で培ってきた経験を踏まえて、瞬間的に正しいと思われる最良の答えを導き出してくれているのです。
ですから、オイシイ話をもらったとき、「この話、儲(もう)かりそうだな」って考える反面、「なんとなく怪しい」って感じたら、それが正解。
自分には難しそうな仕事の依頼をもらったとき、「キツそうだな、難しそうだな」って考える反面、「なんとなく、挑戦したいな」っ感じたら、それが正解というわけです。
就職1年目に、丸1か月の有休を選択
かつて私は、学生時代からずっと憧れていたクイズ番組『アメリカ横断ウルトラクイズ』の後楽園(のちに東京ドーム)予選を、就職1年目の夏に突破しました。
ご存知ない方のために説明すると、「ウルトラクイズ」は、かつて日本テレビ系で年に1回放送されていたもので、国内予選を突破した一般参加者をアメリカ大陸へ連れて行き、現地でクイズをやるという大型スペシャル番組。
アメリカ大陸を移動しながらの撮影ですから、参加者は、番組に出ている期間、会社や大学を休まなければなりません。そしてそれは、もし決勝まで勝ち抜くと、丸々1か月かかってしまうという長丁場。
学生時代に突破できればよかったのに、よりによって私は、社会人として勤め始めてから数か月というタイミングで、国内の第一予選を突破してしまったのでした。
はたして、会社に1か月のお休みを申請して、成田空港での第二次予選に参加するべきか? 辞退するべきか?
そもそも、入社1年目の新卒社員が、いきなり会社を1か月もお休みするなんて、狂気の沙汰ではないのか?
正直、悩みました。
なにしろ、残酷なことに、第二次予選(通常は空港での1対1のジャンケン。私が参加した第10回のときは腕相撲でした)に負けて敗退すると、1か月のお休みを申請したにもかかわらず、次の日(つまり月曜日)から会社に出社できてしまうのです……。
そのときに、私は、この警戒音の理論にたどり着きました。
社会人1年生としては、常識的には、参加すべきではないとはわかっています。でも、「チャレンジしたい」という、ワクワクを抑えることができなかった。
つまり、当時の私の頭の中で、けたたましく鳴り響いていた警戒音は、「警戒音2」だったというわけです。
悩んだ末、私は新卒社員に与えられていた有給休暇をすべて申請し、休日出勤の代休もつぎ込んで、会社に1か月のお休みを申請して番組に参加しました。
そして、会社の同じ係の人には、「途中で負けて帰国したら、翌日から出勤します」と言って有給休暇に突入。
結果は、決勝のニューヨークまで進んで、有給休暇と代休をすべて使い切り、欠勤3日のおまけつき。
しかし、いまだに、そのときの決断は間違っていなかったという確信があります。
心のワクワクに従えば、後悔しない
あのとき、もし、「警戒音2」……つまり、「社会人として参加してはいけない」と思う反面、どうしても消えない「ワクワク感」を無視して、ウルトラクイズに参加していなかったら、どうなっていたか?
たぶん、今も後悔し続けていたでしょう。
そして、おそらく本を出すこともできなかったと思います。
なぜなら、私のデビュー本、『壁を越えられないときに教えてくれる一流の人のすごい考え方』(アスコム刊)はクイズ形式の本で、もし、私に「ウルトラクイズ準優勝者」という肩書がなければ、出版社の企画会議を通らなかったと思うからです。
1冊目の企画が通らなければ、今、本の執筆を生業にすることもなかったはず。
「警戒音2」……つまり、「やるのは怖いけれど、なんとなくワクワクする……だからやる!」を選んだことは、私の人生を変えてくれたというわけです。
尻込みしたときは、自分の頭の中に響いている警戒音が、警戒音1なのか、警戒音2なのかを見極めてください。
そうすれば、「あのときに、やっておけば……」と、一生、後悔しなくてすみます。
(文/西沢泰生)